同人用語の基礎知識

拡散力

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ネタの力か、場の力か、それとも個人の力か… 「拡散力」

 「拡散力」 とは、拡散 する力のことですが、もっぱら ネット の世界で情報を大勢の人間に配布・散布・共有 することを拡散と呼ぶことから、その能力や実際の拡散の勢いを示す言葉としてよく使われます。 拡散するからには人々の耳目を集め、拡散に力を貸したい、あるいはその話題に乗りたいと思わせるようなものとなりますが、急激な拡散 (バズ) にまで至るには、様々な要因が関係しています。

 その要因は情報そのものが持つ力とそれを広めるための場、そして広める人の力の大きく3つに分けられます。 これらはネットなど存在しない伝統的なメディアや個人間の情報リレーである口コミ、あるいは個人間でやり取りするチェーンメールなどでも原理的には全く同じ構造であり、ネットの登場によって拡散の規模や速度は大きくなったものの、それほどネット特有のものというわけではありません。

情報やネタそのものに力があると、勝手に拡散する

 もっとも大きな力を持つのは、拡散対象の情報・ネタ そのものに、人に伝えたくなるような力があるかどうかでしょう。 この力は 「面白い」「魅力的だ」「新しさや意外性がある」 といった ポジティブ な要素もありますが、怒りや義憤、恐怖を誘うような ネガティブ な情報・ネタの方に、より強い力がありそうです。 またその情報やネタが事実かそうでないかは、あまり関係がありません。 人はよほど明白な虚偽でもない限り、自分が見たいものを見て、信じたいものを信じるからです。

 情報やネタに付随する周辺情報込みで伝播力が強まることもあります。 例えば明白な嘘だとわかっている情報でも、出所がはっきりしていて、かつその出所に反感を覚える人なら、「この嘘を広めたら言い出しっぺが恥をかく」「責任を取らされるだろう」 と予想でき、騙されたふりをして嘘情報やネタの流布に手を貸すこともあるでしょう。 人の怒りや恐怖を 煽る ような情報なら、それを広めることで社会に混乱を招くことができるかも知れないとの、悪意に基づく暗い理由を (もしかしたら本人も無意識のうちに) 持っている場合すらあります。

拡声器・情報散布地としての役割を果たす場の存在

 どこで拡散するのか、拡声器・情報散布地としての 「場の力」 もあります。 ひところは 掲示板、なかでも日本でもっとも利用者が多い 2ちゃんねる の影響力は絶大で、炎上 にしろ 祭り にしろネット上のもっとも大きな情報散布地として機能していました。

 その後 ツイッター やフェイスブックが登場し、インスタグラムや ティックトックといった SNS が広がると、2010年代頃から拡散の主戦場もそちらに移り2ちゃんの相対的な拡散力は低下した印象もありますが、実際は SNS での拡散の発火点や 元ネタ が2ちゃん (5ちゃん) 発というケースも多く、その力は決して小さいとは云えないでしょう。 2010年代中頃からは、2ちゃんや SNS、さらには 動画サイト の Youtube など複数のプラットフォームが場として密接に繋がり、相互作用で拡散力を増幅させている部分もあります。

 これらとは一線を画すのが オンラインブックマークサービス である はてなブックマーク (はてブ) でしょうか。 はてブには様々な情報が集まりますし、利用者の多くがその他のコミュニティサービスを同時に利用していたり ブログ を持っていることも少なくなく、影響力はけっして小さくありません (というか、サービスをアクティブに利用しているユーザー数で考えると、その拡散力は驚異的な部分もあります)。

 拡散力というよりは、拡散した情報を整理する役割が強いキュレーションサービス (NAVERまとめ (2020年9月30日にサービスが終了) や トゥギャッター) なども、流れに乗り遅れた人が概要を理解して再拡散のスタート地点になったり、その情報が 「拡散している」 というのを改めて確認させる意味で、大きな力を持っているでしょう。

強い拡散力を持つ著名人やインフルエンサーの存在

 数多くの フォロワー を持つ著名人や インフルエンサー、ネット論客といったネット上の有名人や存在感のある アカウント も、当然ながら大きな拡散力を持っています。

 本人が 投下 した情報やネタを拡散させる力もありますが、前述したような元々拡散力の強い情報やネタを拾ってきて、その情報やネタに拡散ブーストを掛けるという点が、著名人の持つ拡散力の本質でしょう。 情報やネタと場、そしてインフルエンサーが組み合わさると、拡散した情報をトレンドの形で取り上げる人やメディアも増え、さらにブーストが強まることになります。

ネットメディア経由で Yahoo!ニュースに掲載され、拡散も最終段階へ

 炎上でも祭りでも、ある場や利用者らの間で大きな話題となると、それらを記事にするネットメディアが現れます。 大手ネットメディアなどは日本最大のニュース配信プラットフォームである Yahoo! ニュースに記事配信を行っており、Yahoo! ニュースに掲載されるといよいよ拡散も最終段階と云えます。

 またメディアの記事になるというのは、それまで個人やそれに近い人たちの間で個々に拡散されていた情報に、ある程度の公共性や 「無関係な自分がこの話題に触れても良い空気感や 雰囲気」 あるいは 「免罪符」 を与えます。 議論や論争も活発化し、流行りの話題に乗ろうという動機も生じます。 単に見ている人が多いという数以上のインパクトや質的な変化があるのですね。 またこの段階になると、話題の真偽など無関係に流行りの話題で注目を集めようとする人たちがこぞって参加し、逆張り炎上マーケ炎上コバンザメ、さらには 承認欲求モンスター まで群がって、拡散が拡散を呼ぶ状況になります。

 情報の拡散自体に強い力がありますし、社会正義に叶う有益な拡散もたくさんあります。 しかしいったんネット中に広がった情報は容易には消す事が出来ませんし、確実に消えたという確証を得ることは困難を極めます。 広がったら取り返しのつかない情報もたくさんあります。 これから自分が拡散しようとしている情報は事実なのか、事実だとしてそれによってどんな影響が生じるのかを、拡散する前にちょっと考えるのは大切でしょう。 それは情報に記された誰かや自分だけでなく、自分とつながる誰かを守るためにもです。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2008年4月21日)
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