駅の前などで独特な存在感をかもし出している 「白いポスト」
「白いポスト」 とは、1960年代から1970年代にかけ、一部の宗教団体、及びそれらの影響を受けた一部自治体、商店街や地域の集まり、ボランティア団体や市民団体などが設置していた、18禁 の雑誌やスポーツ新聞などを回収するためのポスト状のボックスのことです。
多くの場合、郵便ポストの赤に対し白い色に塗られたポストとなっていて、「白いポスト」「白ポスト」 と呼ばれています。 他には 「悪書追放ポスト」「モラルポスト」「環境浄化箱」「子供を守るポスト」「家庭を守るポスト」 などとも呼ばれています。
注意書きが大きく書かれている場合もあります。 その場合は、「青少年に見せたくない雑誌などは、必ずこのポストに入れて下さい」「少年に見せたくない雑誌などは、家庭や職場に持ち込まずここに入れてください」 などといった文章がボディに大きく表示されています。
1960年代〜1970年代にかけ、全国に広まった 「白いポスト」
悪書から子供を守るため…として 各地に立てられた白いポスト |
ここでいう 「悪書」 とは、ヌードグラビア、写真やセックス関連の記事のある駅売りの雑誌やスポーツ新聞、官能小説、エロい マンガ などの書籍類 (青少年健全育成条例 における 有害図書) ですが、1980年代以降はアダルトビデオなども回収品目としてポストに掲げられている場合もあります。 「家に置いて子供がうっかり見てしまったら大変です、家庭に持ち帰らず、ここで捨てていってください」 という訳ですね。
最初にこうしたポスト類を設置したのがどこの団体だったのかははっきりしていないようですが、「社会奉仕活動」 の一貫として、あるいは 「あるべき健全な家庭の姿、青少年育成の 環境 の姿」 を実現するための運動のひとつとして、1960年代後半から70年代にかけて日本全国の駅前やバスターミナル、タクシー乗り場、フェリー乗り場、空港など交通の要所の動線上に設置され、よく見かけるものとなっていました。
特定団体が全国展開したのではなく、マスコミなどがこうした運動を好意的に報じるなどしたため、「私たちも」 という草の根の運動として全国に飛び火、自主設置や寄贈の形で同時発生したものとなっていました。
回収されたエロ雑誌などは古紙回収のリサイクルに回されることが多く (ポストにそう書かれている場合もあります)、一般の ゴミ 箱のように簡単に外から雑誌を拾い上げられない工夫がされている場合が大半です (投入口が小さく、回収のための扉には鍵がついている)。
形や色など、様々なバリエーションも
こちらは角型のホワイトポスト |
一部地域では、こうしたポストを青少年が深夜に漁ってエロ本を盗み取る事件が発生したり、設置したのはいいものの、その後の管理が不十分でエロ本が周囲に溢れる状況となったり、あるいはゴミ箱として関係のない雑誌やただのゴミ、廃棄物を捨てる人が絶えないなど様々な問題が生じ、多くの地域では1980年代頃からは 新規 設置がほとんどされなかったり、過去に設置したものの撤去などがあったようです。
しかし 2000年代以降になっても依然として機能しているものや、老朽化したポストを新たに作ったものと交換するなど、活発な活動と保守・運用を行っている地域もあります。
原則として地域地域のボランティアによる設置と維持管理なので、主体となる団体なり個人なりの継続意欲や活動能力 (人員、資金力) に大きく依存しているからなのでしょう。 1990年代以降は撤去されるなどして全く存在しない地域も増え、一部地域の若い人の中には 「一度も見たことがない」 という年代も増えています。
子供向けポルノ追放運動と白いポスト
1990年に和歌山県の一主婦の訴えにより全国的な展開となった運動、子供向けポルノ追放運動。 これはもっぱらアダルトコミック、エロマンガ雑誌をターゲットとした運動でしたが、主に書店やコンビニエンスストアでの ゾーニング (子供がその手の本を手にしないよう、売り場をきちんと分ける) を主眼にした運動となっていて、「買った本を家庭に持ち帰らない」 という 「白いポスト」 とは、一線を画すもの、時期的にも白いポスト運動が下火となって以降のものでした。
こうした 「青少年 (もっぱら少年) を悪書から守る」 という運動は 戦前 から続いていますが、「子供のいる家庭にその手の書籍類を不用意に置かない」「子供がそうした本を手にしないように環境を 整え る」 という趣旨には賛同する人が多いものの、多くの運動で使われる 「悪書追放」 という独善的な言葉から受けるある種の違和感から、「同じ活動団体が、やり方や装い、ターゲットを変えて同じ趣旨 (ポルノ根絶) の運動を繰り返しているだけではないのか」 との不信感を持つ人たち、意見もあります。