手を変え品を変え、あらゆる手段で規制推進、その目的はひとつ?
「ポリシー・ロンダリング」 とは、Policy (主義、思想) を Laundering (洗浄) する、主張の出所を隠蔽したり、権威付けしてもっともらしい意見かのように粉飾したり、目的が近い耳障りの良い別の主張で包みこんで錯誤を狙い真意を隠して運動する…といったような意味の言葉です。
この種の言葉には、「マネー・ロンダリング」(資金洗浄) や 「学歴ロンダリング」(学歴詐称)、「うなぎロンダリング」(外国産うなぎの産地偽装) などがありますが、いずれも 「マネー・ロンダリング」(Money Laundering) が転じた俗語のひとつとなります。 欧米などでは、法律や国際条約、政治的・科学的な主張などの起源や出所を隠蔽し、権威付けるといった意味で使われています。
マンガ や オタク、同人 などの世界では、「アダルト作品」「ポルノ作品」 などを生理的・宗教的に受け付けない人、あるいは憎む人たちが、「エロ作品は不快だからこの世から消し去るべき」 との、民主主義では許されない道徳の一方的な押し付け、内心の自由 や 表現の自由 に触れる独善的な主張を、誰も反論できないもっともらしい理由を隠れ蓑に行うことを、「ポリシーロンダリング」 と呼ぶケースがあります。
よく使われる理由としては、「子供の健全育成のため」 とか 「女性の人権を守るため」「子供の安全を守るため」 などですが、本気でそうした理由で 環境 改善に努力している人たちを利用し、その時点でもっとも効果がある様々な主張をその都度使い分けて行う姿を、厳しく批判する意味の言葉となります。
汚いお金をきれいに洗浄… 「マネーロンダリング」 が転じて
「出所、身元の隠蔽」 に 「ロンダリング」 がこれほど広く使われるようになったのは、犯罪組織などが汚いお金 (犯罪行為などで手に入れた、おおっぴらにできない巨額で不正な資金) を、架空名義の銀行口座の預貯金として金融機関を通したり、ペーパーカンパニー (実体のない会社) との偽の商取引でやり取りしたり、株や手形にして善意の第三者に譲渡するなどして、「出所の分からない普通のお金」 にしてしまうことを、アメリカなどで 「マネー・ロンダリング」 と呼ぶようになってからです。
言葉としては1988年に麻薬の国際的な撲滅運動の盛り上がりの中で注目され、半ば伝説と化しているユダヤ系ロシア人の大マフィア、マイヤー・ランスキー (Meyer Lansky/ 1902年7月4日〜1983年1月15日) による、麻薬取引などによる巨額の蓄財とその運用方法から生まれた 概念 や言葉となっていて、彼は 「マネーロンダリング」 の創設者とも呼ばれています。
これが1990年代から日本でも話題となり広く紹介されると、そのまま定着。 同じように 「出所を隠蔽する」「経歴を隠して粉飾する」 といった意味で 「ロンダリング」 が広く使われるようになり、前述した学歴やら うなぎ やらの経歴洗浄、偽装の際にも使われるようになりました。
マスコミなどが恣意的な報道に権威付けをする…ソースロンダリング
その後、マスコミの マッチポンプ 的な報道 (日本の新聞社が記事を書いて、その記事を引用する形でアメリカなどの新聞が記事を書き、さらにそれを同じ新聞社が再び引用し、「ほらみろ、アメリカの新聞社も同じように言っている」 などと煽ること) を、2004年頃から ソースロンダリング (情報源洗浄) と呼ぶようになり (情報ソースを洗浄して、さも世界がそう思っているかのように装ったり、信憑性のないインチキ記事に権威をつける)、そうした報道に批判的な立場の人が、こぞって使うようになりました。
さらにその後、耳障りの良いスローガンを掲げて行うある種の政治運動や宗教的な主張などに対しても、それを否定的に見る人たちが ネット を中心に 「ロンダリング」 を使って批判するようになり、「本当の目的を隠し、耳障りの良い、誰も反論できないような正論を持ち出していかがわしい政治的な主張、運動をすること」 を、「ポリシーロンダリングだ」 などと揶揄して呼ぶようになりました。
人権擁護法案やアダルト規制問題などで、「ポリシーロンダリング」 が使われるように
「ポリシーロンダリング」 という言葉が日本で使われるようになった発端は、2002年に提出、2003年10月に廃案となり、その後2005年に再び問題として大きく盛り上がった 人権擁護法案 でした。
この法律案の趣旨は 「差別をなくし、人権を守るためのもの」 となってはいましたが、差別や人権侵害の定義が非常にあいまいで、また新たに設置される人権擁護委員会とその下部組織が、裁判所の令状もなしに企業や個人に調査や取調べを行えるものとなっており、強烈な権限を持ちながら個々の手続きの内容などがあまりにずさんでした。
「差別している」 と名指しされた被疑者が公的に抗弁し事実関係を争う仕組みも、この法律によって差別者として処分された企業や個人が自らの身の潔白を晴らす手段も、社会的に名誉 回復 する方法も制度として持ってはいませんでした。
これでは 「私は差別されている」 と叫ぶ特定の人たちのみの権利やある種の特権、既得権、主張を守るだけ、むしろ逆差別を生み出しかねない危険な法案となっていて、「これでは何も言えなくなる」「人権を守るという理想論を唱えてはいるが、実際は別の意図があるのではないか?」 との批判が続出。 そのさなかに法案反対派、慎重派らがネット上で使いだしたのが 「ポリシーロンダリング」 なのでした。
「子供を守るため」 といいつつ、やってることは 「ポルノ狩」 だけ
その後この 「ポリシーロンダリング」 は、執拗なポルノ狩りを推進する特定宗教の影響を色濃く持つ女性・児童人権団体 (セックスヘイター (Sex Hater/ 性憎悪者) らの 「青少年への悪影響をなくすため」「女性の人権を守るため」「子供の人権を守るため」 などの 「誰も反論できない理由」 を掛け声、スローガンにした、アダルト作品、ポルノ作品などへの一方的な規制強化推進の動きを指す言葉としても使われるようになり、徐々に広まっています。
昔ながらの言葉では、「本音と建前」 といった感じですが、誰も反論できない 「平和」「安全」「子供」「女性」「人権」「平等」 などを、ことさらに守りましょうと叫ぶ人たちには、十分に用心する必要があるでしょう。
こうした主張をする人や団体が、どういう背後関係を持ち、過去にどのような主張をしてきた団体なのか、メンバーにどのような人が加わり、その人は過去にどのような発言をしてきたのか。 規制を積極的に推進している 「子どもの人権を守る○○の会」 などといった名称の団体がたくさんありますが、こうした分かりやすく耳障りの良い 「団体名」 だけではなく、その中身、本質 (子供を守るために具体的で地道な活動をちゃんと行っているのか、被害者救済といいながら、実際は表現規制ばかりを唱えている団体ではないのか、使途が不明朗な募金活動ばかりやっていないか、など) を、総合的にきちんと見ることが大切だと思います。
団体名などは、けっして 「名は体を表す」 ではないのです。 安易な署名や募金などへの協力は 「偽善」 ですらなく、明白に 「害悪」 だと強く認識する必要があります。 その一筆、そのお金が、彼らの理不尽で暴力的な独善改革の根拠、裏付けとなってしまうのです。