レンタルビデオ店や書店によくあるアダルトコーナーなんかです
「ゾーニング」(Zoning) とは、文字通りゾーン (Zone/ 間取り) を設けることを表す言葉で、建築業界のほか、流通小売業などではマーケティング用語としても使われる言葉のひとつです。 ゾーイングと呼ぶこともあります (後述します)。 具体的には商品の カテゴリ ごとにお店の売り場をゾーンで別け、特定顧客のそのゾーンへの進入を制限したり、そのカテゴリの商品の購入をできなくする措置を指します。
書店におけるゾーニングの例 |
同人 の世界では、一般的に 18禁 本、ポルノ雑誌やアダルトコミック、性風俗情報誌などを未成年者が見ることも買うこともできないよう、年齢で売り場を区切ってしまうことをゾーニングと呼びます。
本や映像作品を調べゾーニングの基準とする 「販売種別」 を施すことは レイティング、その結果、販売規制の対象となる書籍、雑誌、ソフト類は 「ゾーニング本」「ゾーニング雑誌」、あるいは 「レイティング作品」 などと呼んだりもします。
昨今ではエロやポルノなどの性的アダルト商品だけでなく、未成年者の使用が法律で禁じられている酒やタバコなどの年齢確認による販売制限や、商品パッケージなどにそれと分かる表示 (成年コミックマーク や R指定 を付けたり、帯を付けたり、ビニールで覆ったり) をするなどの 「年齢による流通制限」「誰でもその場で未成年 コンテンツ を閲覧できないようする工夫」 全体をゾーニングとまとめて呼ぶ場合もあるようです。
2000年代になって盛んに行われるようになった インターネット のアダルトサイトなどにある年齢確認による入場制限や、年齢認証による ブロッキング (青少年インターネット規制法) なども、これの一種といって良いでしょう。
あくまで 「区分」 であって、本来は 「目隠し」「隠蔽」 ではない
通販サイトにおけるゾーニングの例 |
ではなぜ同じ年齢制限のある商品でも酒やタバコと異なり外から見ることができないようになっているのかと云えば、アダルト雑誌などは売り場に陳列され、表紙を見たり立ち読みによって紙面が目に入るだけで、年齢制限の趣旨に反する結果となるからです。
しかし雑誌・書籍を並べたゾーニングエリアの多くがパーティション等で区切られ、外からそれとわからないような形となっていることで、逆に 「表立って売れないような非道徳的・反社会的なものを売っている」 というイメージがより一層強調され、時代を経るにつれエスカレートしつつあります。 その結果、「そもそも隠して売らなきゃならないようなものを売るな」 といった、経緯や趣旨を無視し議論が転倒した極端で誤った意見も増えてきています。
売り場の区切りができないケースでは、商品個別に目隠しのようなカバーをつけて販売する場合もあり、これらも誤解を招く理由の一つとなっていますが、「配慮」 した結果さらにイメージが悪化したり、それを逆手にとって批判する人が増えるのは、とても残念な話です。
同人イベントでの 「ゾーニング」 の取り組み
一般書店などと異なり、数百から数千、規模によっては1日十数万人がひとつの会場に集う 同人誌即売会 でのゾーニング、年齢制限は、人的、物理的な限界もあり、また事なかれ主義に走りがちな会場施設側の対応の問題もあり、頭の痛い課題です。
同人サークル には エロ ばかり描いているエロ専もある一方、日ごろは全年齢対象のいわゆる 健全本 を描いて 頒布 していながら稀に 「エロ」 を出す (反対もある) なんてこともあり、厳密なサークルの区分がしづらく、これらはその場の個別的対応をそのつど行っていました (売り場をカテゴリごとに分けるのは当然として、それ以外には、イベントの 主催者 の側がイベント 告知 で未成年者のアダルト同人誌の閲覧購入をしないよう呼びかけたり、当日の入場受付で目視確認したり、同人サークルが自分の スペース (売り場) で本の購入をはかる一般参加者の年齢を目で確認するなど)。
また コミケ のような複数日開催の大きなイベントの場合、ある程度以上厳格にカテゴリ (ジャンルコード) を別けて会場 (施設内の建物部屋) そのものを変えたり、日にちで別けたりもしています。
ただし昨今のアダルトな マンガ、コミックへの風当たりは相当強く、単に未成年者にそれらの本を見せたり買わせたりを制限するゾーニング対応だけで済むのか (コミックの内容そのものはどうなんだ)、との声は、外野の圧力団体だけでなく、イベント参加者の間からも 「コミック文化を守るため」 に、上がってきているのが現状です。
エロマンガ、アダルトコミックの歴史は、規制と 自主規制 の歴史でもあります。 事情を良く知らず、また責任を他人に擦り付けるだけの魔女狩りのようなアダルトコミック排斥には反対の声を上げるべきでしょうが、各々が 「どこに着地点を設けるべきか」「コミック ファン として何を守るべきか」 を考えるのは、大切ではないでしょうか。 自分たちだけでなく、自分の後輩や子供たちから素晴らしい 同人誌 の世界を奪わないためにも、関わる人たち全てが知恵を出し合うのが大切だと思います。
「ゾーニング」 と 「ゾーイング」
ゾーニングではなく、ゾーイングといった云い方もあります。 意味するところは同じで、区分や配置をあらわす言葉となります。 こちらはもっぱら建築関係や造園、空間設計分野で使われる言葉で、土地の敷地や施設の屋内スペースにおいてアプローチ (道路から玄関までの通り道) とか庭、駐車スペース、展示・販売スペースなどを、人の動線や見栄え・利便性を加味しながら目的に向けてどのように配置するかを計画することを指します。
業界用語として使われることが多いと思いますが、一般の人でもガーデニング関係で使うことがあるかも知れません。 ただし小さな売り場内や一つの 島 や棚にどのように商品を並べるかといった使い方では、ゾーニングの方が一般的でしょう。