同人用語の基礎知識

フィルタリング

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ネット健全化に貢献? 批判の多い 「フィルタリング」

 「フィルタリング」 とは、特定成分・情報などを一定の条件に基づいて抽出・選別し、不必要な成分や情報を濾過するための膜、網、もしくはその仕組みのことです。

 同人 や 「表現」「創作」 の世界では、もっぱら インターネット などの特定のウェブサイト (ホームページ) やそこで触れられている情報 (文字や 画像、動画類) を区分けし、ふるいにかけて排除するような意味で 「フィルタリング」 が使われます。 実際に排除することは ブロッキング などと呼びます。 細かい意味や 概念 には違いがあり、利用者の 同意 に基づくものを 「フィルタリング」、同意がなく強制的に遮断するものを 「ブロッキング」 と呼びますが、同じような意味で使う場合もあります。

 方法や仕組みは様々なものがあり、個人が自分のパソコンにフィルタリングするためのソフトを導入、排除すべきサイトの情報などをまとめたリストを使い、1台1台個別に 設定 して行うものもあれば、検索エンジン企業やISP (インターネットサービスプロバイダ/ 接続業者) などが全ての利用者に対して機械的・網羅的に行うもの、その中間のようなものまで色々です。 中には一部の独裁国家や原理主義的な宗教国家のように、情報統制の一環として国家ぐるみで特定情報を丸ごと排除している場合もあります。

 日本においては、杜撰で恣意的な運用により特定の言論のみが排除される危険性が指摘されたり、仕組みとして情報の制限に実効性が乏しいとの意見があります。 またどのような形であれ国や法律で制限することは、「検閲の禁止」 や 表現の自由、「通信の秘密」 をも侵す可能性が極めて高く、憲法違反ではないかとの反対意見が多い施策の一つとなります。

「児童の人権」 だけが声高に叫ばれ推進される 「規制」

 個人が広く情報を発信するメディアを持てなかった時代、それらを担っていた新聞社や出版社、放送局は、独自に 自主規制 のための団体を立ち上げ、レイティングゾーニング で情報などを規制していました。 実際は自主的とはいえ国や自治体の有形無形の圧力による 「指導」 や 青少年健全育成条例 などで実施が強く求められていたものですし、行政の側が違反したと判断したら販売の制限や関係者の摘発などが処分として下されるケースもありましたが、建前の上では 「自主的な努力」 で、それを行っていたのですね。

 しかし ネット の時代となると、情報を発信するのは企業だけではなくなり、また自主規制団体もなく、個々人が自由に情報を発信するようになります。 さらに未成年者がネットを利用するようになると、一部の人から 「有害だ」 と思われている情報を、子供が見てしまう可能性が高まります。

 そのため、アメリカなどで子供が使う可能性のあるパソコンにインストールするタイプのフィルタリングソフトが登場し、親が導入するケースが増えることとなりました。 それと同時に、ネットの検索エンジンなどでも、主にアダルトの要素があるキーワードや、それによって表示されるアダルトサイトなどをシャットアウトするオプションを設けるなど、部分的、限定的 なフィルタリングが実施されるようになりました。

 こうした動きは日本も同じで、Yahoo! や Google、goo などの大手検索サイトでは、ログイン により年齢確認をしないと一部のアダルトサイトへの検索結果や リンク が表示されなくなったり、表示されてクリックしてもサイトが表示されない仕組みが登場するようになりました (18歳、もしくは21歳以上だとログインで認証できれば見ることができます)。

 2008年頃からは、「児童にアダルトサイトを見せない」 という目的に加え、児童ポルノ を扱うサイトに接続させない」 という、新しい目的が声高に叫ばれるようになりました。 これは、主に欧米の一部で行われているフィルタリングやブロッキングと同じような規制を 「日本でもやろう」 という趣旨の意見で、またそれまでの民間の取り組みを 「民間の健全化への取り組みは遅すぎる」(自民党 高市早苗衆議院議員 (奈良2区) と批判したうえで、「ここで動かねば政治の不作為と言われかねない」 と、国で網羅的に全体を規制すべきだとの強硬な意見が多く聞かれるようになってきました。

「有害情報遮断」 と、「児童ポルノ遮断」 の違い

 「有害情報を子供から遮断する」 と 「児童ポルノをネットから遮断する」 は、どちらも 「子供を守るため」 という理由を第一に掲げており、似ているように見えますが、実は全く違うものとなります。 「有害情報の子供への遮断」 では、大人であれば見ることができますし、出版における 「区分陳列」 と同じで、「情報そのものが消されるわけではない」、あくまで限定的な規制となります。 一方、「児童ポルノをネットから遮断する」 では、閲覧の規制対象は子供から大人まで日本国民全員となり、出版に例えると、「発禁処分」 と同等のものとなります。

 個別のパソコンや検索エンジンによる規制ではなく、ISP (プロバイダ) の規制となると、検索エンジンに出てこないだけではなく、URLを直接打ちこんでも見ることができなくなり、文字通り 「この世から完全に情報として消し去られる」 という状態にもなります。

 それが本当に 「現実の児童が性的被害者となって作られた児童ポルノだけ」 なのであれば、なるほど素晴らしい規制だとも云えますが、有害図書 の定義や 児童ポルノ法 における 「児童ポルノ」 の定義はあやふやなものですし、本物の児童ポルノ業者による偽装された児童ポルノの排除は難しいなど、「無関係の情報ばかり消す結果になりかねない」 と、強い反対の声が上がる状況となっています。

 また消されてしまった情報は、第三者が入手してフィルタリングが妥当なものであるかどうか検証することもできませんから、権力の側が恣意的に自分たちに都合の悪い情報を消すことができてしまうという危険性も併せ持っています。 単純所持禁止 となったら、ますます検証は不可能となり (持っていたら逮捕ですから)、規制する側が自由に規制することも可能となってしまいます。

子供の人権以前に、日本国民の権利を踏みにじる結果に

 どんな情報を発信するか、受信するかは、個々人が自分で判断すべきです。 まだ判断ができない未成年者への限定的なフィルタリングならば、あるいは社会常識の範囲で認められるケースもあるでしょうが、成人の自己選択の権利を侵してまで、一方的に誰が決めたかわからないモラルや常識を押しつける必要はありません。

 良識ある国民の一人として、表現の規制を注意深く監視する必要があるでしょう。

政府の発表と異なる情報はデマ・流言飛語? 2011年、異例の削除要請の通達

東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する要請
東日本大震災に係るイン
ターネット上の流言飛語
への適切な対応に関する
要請 (2011年4月6日)

 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震 (東日本大震災) による地震・津浪被害と、それに伴う福島第一原子力発電所の大規模な放射線・放射性物質漏れ事故等のネット上の情報発信について、4月6日、総務省は異例の通達を行いました。

 被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチームでまとめられ、総務省総合通信基盤局長によって出された 「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する要請」 では、「地震等に関する不確かな情報等、国民の不安をいたずらにあおる流言飛語が、電子掲示板への 書き込み 等により流布しており、被災地等における混乱を助長することが懸念されます」 とした上で、「法令や公序良俗に反すると判断するものを自主的に削除すること」 を含め、適切な対応を行うよう事業者に求めるものとなっています。

 もちろん悪意に基づいた捏造やデタラメが流布し、被災地を混乱させるのは厳に慎まなければなりませんが、政府が 直ちに健康に影響がない とあやふやな基準で述べているのを、国民が信憑性を疑い自衛のためにやり取りする情報まで、流言飛語とされては困ってしまいます。

 そもそも政府がしっかりした情報開示を行い、広報活動に力をいれれば、真偽不明なデマなどが信憑性を持って流れ続けるようなことにはならないでしょう。 情報を隠蔽するからデマが入り込む余地が生じるのであって、結果と原因が逆転しています。 この通達には悪意はなく、きちんとした根拠があるものだとは思いますが、こうした通達や規制が前例となり、その他の情報にも悪用される可能性もあります。

 国民が覚える不安や疑惑にしっかり答えることこそが、順番として先なのだと思います。

2012年1月、au Webフィルタリングサービスに批判集中

au Webフィルタリングサービスに批判集中
au Webフィルタリングサービスに批判集中

 2012年1月より、携帯電話で採用されていた 「安心アクセスサービス」(Webフィルタリングサービス) をスマートフォンにも拡大適用すると au が発表。

 その後実際にフィルタリングが実施されると、各種アプリが動かなくなると同時に、ツイッター や Yahoo!知恵袋、あろうことか au の公式サイトもブロックされる事態に。

 au の公式サイトには、このサービスの解除方法が書かれていたため、「いつも使っていたサービスがいきなり使えなくなった」「解除の仕方がわからない」「自社の公式サイトがブロック対象になるとは、どんなリストを元にしたフィルタリングなのだ」 との困惑と批判の声がネットに広がることに。

 サービス解除には au ショップ・PiPit へ訪れ店頭申込でのみ受け付ける仕組みとなっていたため、「面倒だ」「何でツイッターが出会い系扱いでフィルタリングされるんだ」」 と批判が集中することになりました。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2008年1月4日)
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