美少女アニメやゲームを楽しむものは人間ではないとの主張を基にした規制の請願です
衆議院サイトより |
「美少女アニメ・ゲーム規制請願問題」 とは、2008年5月14日に民主党 円より子参議院議員(比例区)、15日に同党 下田敦子参議院議員(比例区) が委員会に請願として提出した、アダルトアニメやゲーム、雑誌などを罰則つきで規制すべきだとの請願のことです。
正式名称 (件名) は 「美少女アダルトアニメ雑誌及び美少女アダルトアニメシミュレーションゲームの製造・販売を規制する法律の制定に関する請願」 です。
美少女アニメ・ゲーム規制請願 請願の要旨
街中に氾濫(はんらん)している美少女アダルトアニメ雑誌やゲームは、小学生の少女をイメージしているものが多く、このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている。これらにより、幼い少女たちを危険に晒(さら)す社会をつくり出していることは明らかで、表現の自由以前の問題である。社会倫理を持ち合わせていない企業利潤追求のみのために、幼い少女を危険に晒している商品を規制するため、罰則を伴った法律の制定を急ぐ必要がある。
ついては、美少女アダルトアニメ雑誌及び、美少女アダルトアニメシミュレーションゲーム製造及び販売規制の罰則を伴った法律を制定されたい。
ネットコミュニティを中心に、激しい反発が起こりました
この種の請願は国会の場では頻繁に提出されるものですし、過去にアダルトゲームの規制に関しては、あるアダルトゲームメーカーの元経営者が音頭を取った請願騒ぎがあったこともあり、こうした問題に詳しい人の間では、さほど問題視される話でもありませんでした (内容によってはひとつのキッカケにはなるかも知れませんが、直接これによって規制法が作られるケースはほぼなく、ほとんどが未審議で廃案となります)。
しかしこの規制の要旨に、何ら関係性があるとも思われない性犯罪や殺人と、美少女アニメ・ゲーム・雑誌との関連性がことさらに強調されていたり (ゲームなどの影響で犯罪に走るとの強力効果については何ら実証されていないばかりか、むしろ近年は関係がないとの科学的データが各国研究機関から出されており、あの日本ユニセフ協会ですら、表向きは主張しなくなっています)、さらにその際に、アニメやゲーム ファン を差別的に表現するくだりがあり、数日後に様々な blog や、オタク系の 大手サイト などに取り上げられるや一気に大騒ぎとなり、強い批判に 晒される こととなりました。
ゲームやアニメに親しむと心が壊れ人間以外の何かになり、基本的人権など不必要
強烈なのは、上記要旨にある、次の一節です。
このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている。
「心を破壊され、人間性を失っており」 がすごいですね。 美少女ゲームや アニメ や マンガ を楽しんでいる人の多くは狂人である、もはや人間ではないという訳です。 国会という公中の公の場で出される表現としては、もうこれ以上ないくらいの蔑視表現と云えるでしょう。 これを、日ごろ女性や子供の人権問題を叫んでいる 「良識派議員」 が出しているのですから、読むものが反発を覚えるのも当然でしょう。
しかもアダルトゲームやアニメは 18歳未満の販売や利用は禁じられていて、売り場などでも ゾーニング により厳しく制限がかけられていて、「青少年」 という文言に意味があると思えません。
また次の一節、
表現の自由以前の問題である。
についても、国民固有の権利、基本的人権のひとつとして 「表現の自由」 を明記している憲法とどう整合するのか、批判の声が上がっているようです。
根拠もなく相手を人間ではないと言ってのける、国会議員の人間性
請願の背景には、韓国で起こった小学生による集団レイプ事件 (韓国のメディアでは、日本のゲーム 「どきどき魔女神判!」 などが一因と繰り返し報道された) や、2004年11月に奈良県で発生した小学生誘拐殺人事件などがあったと思われます。
しかしそのどちらにも影響に対する科学的な検証などは一切されておらず (奈良県の事件では、フィギュア萌え族(仮) との名称まで作られ、影響を繰り返し報道しましたが、犯人はアニメもフィギュアもパソコンすらも所持していなかった)、また日本における児童殺害被害の 98%以上が母親などによる育児放棄や虐待によるもので、「いったい何を根拠に心が壊れ人間性を失って殺人を犯すといっているのか」「ほとんどの児童殺害が家庭内で起こってることについて、家庭問題の専門家としての意見はないのか」 と、強い非難が巻き起こりました。
なお児童に対する性犯罪は肉親のほか、教員や公務員が加害者となるケースがとても多いのですが (教員の児童に対する性犯罪発生率は、一般人のおよそ 15倍と云われています)、円より子議員は家庭問題の専門家、下田敦子議員は教育問題の専門家です。 親の子殺しや教員の性犯罪には何も云わず、アニメやゲームばかりを悪者にし、そのユーザを 「心が壊れている」「人間ではない」 とまで非難する根拠はなんなんでしょうね。
またおりしも、児童ポルノ法 の見直し検討の時期 (単純所持禁止 をするかどうか) で、表現規制についての議論が高まっている時期だっただけに、議論も加熱したようです。
あいまい、その場限りの言い逃ればかり、あげく国会で大きなミスを
その後、有志による、録音した電話での問い合わせ (電凸) で、「国会議員は請願の要請を国民から受けたら原則としてそのまま請願しなくてはならない」「円より子は請願の書類に目を通しておらず、きちんと内容を把握してなかった」 と弁明。
しかし問い合わせた有志が 「では私が、ゲーム規制をしないように要請する請願を依頼したら請願書を国会に出してくれますね」 と切り返すと、「請願の内容をきちんと把握しないと受けられない」「精査して問題があれば請願はいたしかねる」 と、最初とはまるで正反対の返答を行い、さらにこの有志が議員会館まで訪れ、担当者に請願書を直接手渡したところ、あろうことかこれを紛失。 それらの様子は音声データつきで逐一 「ニコニコ動画」 などで発表され、円より子議員、およびその事務所のデタラメぶりが露呈する形になっています。
さらに6月11日には、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の一部を改正する法律案」 および 「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律案」(2案同時投票) の賛否投票について、全ての議員の中でただ一人、反対票を投じましたが、投票ボタンの押し間違いによる反対投票だったことが判明、参議院議長に謝罪しています。
法案や請願の内容をろくに読まず、あるいは読んでいるなら国民に嘘をついている上に、投票行動もいい加減な人に、年間2,100万円以上も税金で歳費を支払って議員をされても困ってしまいます。 途中、「国民の声を聞くため」 に開設していたブログにも、数千件の 書き込み がありましたが、全て無視して コメント欄 を一方的に閉鎖しています。