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アーティスト病

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アイドルや声優からアーティストへ… 「アーティスト病」

 「アーティスト病」 とは、アイドルタレントや声優 (アイドル声優、アニソン の歌手) などが、突然アーティストや芸術家、シンガーソングライターを目指し、それまでの芸能活動を切り離し、それと違った ジャンル の活動へと急激に路線転換をすることです。 「芸術家病」 とも呼びます。

 こうした 「突然それまでの芸能活動とは違う活動に走る」 というのは、アーティストの以前にも、若いアイドルタレントやお笑い芸人などが俳優や女優になりたがる病などでおなじみのものでした。 多くの場合、「アイドルを卒業してより次元の高い活動を目指す」 といった文脈になりがちで、それまでアイドルとして応援していた ファン などは、自分たちが切り捨てられたと感じて怒りを覚えたり、アイドルやお笑いを低いランクの仕事とみなしていたのかとの不信感から、強い アンチ を生み出す深刻な病とされています。

「今の自分は本当の自分ではない」=「それを支持してたファンの立場は?」

 こうした中途での芸能人の路線変更は珍しいことではありません。 中には様々なジャンルに手を出すマルチタレントなどもいますし、本業と副業ともいうべき使い分けをしているケースもあります。

 しかしアーティスト病の場合、多くのケースで 「アイドルを卒業」「脱皮」 といった後戻りのできない不可逆の路線変更となっていることが多く、さらにその際、「これまでの仕事に疑問を感じていた」「本当に自分のやりたいことができていなかった」 などと、過去の芸能活動の否定 (それは、その活動を支持していたファンに対する否定でもある) を伴うため、ファンらのショックや反発は想像以上のものとなる場合があります。

 また、とりわけ 「本来はアーティスト活動こそが昔からしたかった」 という告白は危険です。 こういう物言いをする声優やお笑い芸人、タレントなどは、たいていの場合、声優やお笑いにデビューしある程度知名度を上げた段階で 「声優が子供の頃からの夢でした」「お笑いに人生をかけるつもりで」 などと別のインタビューで喋っていたりもするからです。 別の見方をするとその時点その時点で自分のやりたいことに一生懸命で極端な物言いをある種のサービス精神として発露しているだけなのでしょうが、応援していたファンらにとって裏切られた印象を与えるだけでなく、その場限りの嘘を平気でつく人との信頼感の失墜や、過去記事の発掘などを通じて 「攻撃しやすいネタ」 をアンチに提供することにもなっていまいます。

 こうした路線変更が成功するケースは極めて稀で、過去のファンを切り捨てながら 新規 のファンの獲得には結びつかず、そのままフェードアウトしてしまうタレントが少なくありません。 またそもそも、「アーティスト○○の姿を見て欲しい」 などと本人が述べるのは見ていてあまりに 痛く、100年の恋も冷めてしまうインパクトを十分に持っています。 本来アーティストや芸術家などという 「尊称」 は、他人がその活動や実力を認め、賞賛して付けるもので、「歌手」 や 「画家」 などと違い、あまり自称する 概念 ではありません (いない訳ではありませんが)。

 これは外から見たときに、他の芸能人やシンガーソングライター、クリエーターらがマスコミやファンなどから 「アーティスト」 と呼ばれているのに憧れているだけ、自分を見失い、過度の 承認欲求 や肥大化した自意識によって薄っぺらいプライドを求めて舞い上がっているだけに見えてしまうからでしょう。

アーティスト病、芸能事務所の方針転換と、本人の資質

 こうした路線変更にはいくつかのパターンがあります。 例えばアイドルタレントなどなら、ある程度の年齢になったらアイドル路線のまま芸能活動を続けるのは難しく、ある段階で芸能事務所などがビジネスとして、イメージチェンジ (イメチェン) の形で方針転換を強く打ち出す場合もあります。 とはいえ人気商売ではあるので、「売れなくなってきたから路線変えます」 とも コメント できず、あくまで本人の自由意志による路線変更の形を取ります。 その際、やり方や対応で失敗すると 「アーティスト病」 と呼ばれファンが急速に離れてしまうことにもなります。

 一方で、アイドルとしての人気や、大ヒットした アニメ の声を当てるなどして人気となった声優などが、チヤホヤされて勘違いし、人気に舞い上がって実力が伴わない分不相応なより高い位置を目指すとの意思表示を、「過去の自分を捨てる」 という形で積極的に行う場合もあります。

 ありがちなのはアニメ声優などがアーティスト宣言を行い、今後アニメの仕事はせずシンガーソングライターとして音楽活動だけをやりますと表明したり、ファン感謝祭や様々なファンサービスを一方的に休止し、可愛らしいアイドル歌謡からロックに音楽ジャンルが急激に変わったりもします。

 この場合は、事務所との不協和音などがスキャンダラスに芸能ニュースに登場したり、それが発端となって一時はそれなりの話題になる場合もあります。 事務所やタレント本人が注目度を上げるため、あえて ネガティブ な情報や話題を芸能ニュース ネタ として取り扱ってもらうため流出させるケースもあります (ノイズマーケティング炎上マーケティング)。 しかし通常は、その後 急速に仕事がなくなり、そのまま 「あの人はいま?」 の扱いになってしまう場合が大半でしょう。

タレント本人、ファン、事務所、誰も得しない形になることも

 声優は裏方・職人というイメージもありますが (それらは必ずしも否定的な意味だけではない)、それらをひっくるめて極めてクリエイティブな仕事、立派なアーティストだと思います。 またそれは、その他のジャンル (歌や舞台、その他) のアーティストと比べて、どっちが上でどっちが下とは思いません。

 しかし芸能界での待遇の差は厳然としてありますし、活躍できるフィールドが広がる一方、求められるクオリティも大きく変わってしまいます。 声優というカテゴリでは必要十分でその時代を代表するような大きな人気が得られたとしても、それがその他のジャンルで通用するとは限りません。

 芸能人、有名人と云えど、実際は社会経験の少ないただの若者ですし、一時の人気に惑わされてしまったり、過度のプレッシャーや多忙から来る孤独などから突飛な行動に走るのはやむを得ない部分もあります。 また自分の可能性を自分で信じなくて何ができるという考えも、また一方の真実でしょう。 過去発言との矛盾なども、社会人として仕事をする以上、無縁でいられるのは幸運な人だけでしょう。 かといって、それらを全てひっくるめて、「本当のファンならば対象が何をやっても温かい目でずっと見守れ」「すべてを飲み込んで支持し続けるべき」「真のファンだけをふるいにかける 厳選タイム だ」…というのも少々無理があります。 人の心は移ろいやすいものですし、とても難しい問題ではあります。

 結局は本人次第となるのでしょうが、ハマリ役だったアニメ声優が降板したり、そのジャンルでは才能があったのに別のジャンルにいって消えてしまうのももったいない話です。 それを含めて本人の人生ではありますが、芸能事務所やファンクラブが、しっかりとバックアップできれば良いのに…と思うような、素晴らしい才能の持ち主が消えていく姿を見て、残念に思うこともしばしばです。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2010年9月10日)
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