役立たずだと思われ真っ先に切り捨てられる存在…「ハジパイ」
「ハジパイ」(ハジハイ) とは、役立たず・はぐれ者・邪魔者といった低い評価がされ、真っ先に切り捨てられるような人を揶揄・罵倒するような意味の言葉です。 切り捨て要員とかトカゲのしっぽ切りのしっぽ扱いされるような人を指して使います。 異端という意味で使うこともあります。
元ネタ というか語源は、麻雀における 「端牌」 です。 牌 (麻雀牌) の俗っぽい分類名の一つで、萬子・筒子・索子の数牌 (一から九までの数字を持つ) のそれぞれ端っこになる数の一と九の牌 (老頭牌)、および字牌 (役牌/ 東・南・西・北・白・發・中) を合わせた牌を指します。 正しい呼び方は 么九牌 (ヤオチューパイ) です。
役作りがしにくく、しょっぱなに捨てられやすい端牌
麻雀では、配牌や 自模 などで得た牌を手前に並べ、同じ数牌の数字の並び (一二三とか四五六とか) を作ったり (順子)、同じ牌を2つとか3つ集めたり (二萬二萬 (対子) とか東東東とか (暗刻) して、それらを手牌の中であれこれ組み合わせて役を作ったり、手を広げて複数の役の複合を狙ったりします。
この際、それぞれの数牌の一や九は端っこになるため、二から八までの数牌 (中張牌/ チュンチャンパイ) に比べ順子の組み合わせパターンが少なくて確率的につながりにくいでしょう。 また字牌は対子もしくは暗刻しか作れず、順子を構成することもできません。 麻雀で比較的作りやすく他の役とも複合しやすい断么九 (タンヤオ) や平和 (ピンフ) といった役もこれら端牌があると作れなかったり作りづらくなり、対局が始まるとまず真っ先に邪魔者扱いされて場に捨てられがちな牌だとも云えます。
また 「あと一牌で上がり (和了/ 栄和/ ロン)」 の状態を聴牌 (テンパイ)といいますが、端牌が他 プレイヤー (対局者) の上がりのための一牌 (待ち牌) になることも待ちの数の確率および役作り上も少ないため、対局の終盤や立直 (リーチ/ 聴牌の宣言) が掛かっている時には、安牌 (アンパイ/ 他プレイヤーの当たり牌の可能性が低い安全な牌) と認識され、捨てられやすいと云えるでしょう。
これらのことが転じて、「たいして役に立たず、真っ先に捨てられる存在」「捨てても問題が起こらないような安全無力な存在」 といった比喩として 「ハジパイ」 が使われることもあります。 「トカゲのしっぽ切り」 とか 「窓際族」「リストラ対象」 といった、かなり救いのない存在をあらわす揶揄・ネガ比喩 のような扱いです。
真っ先に捨てられる安全無害な端牌…しかし使いどころによっては
一方で端牌は、手牌や場の流れによってはとても力強く有益な存在にもなります。 麻雀の上がり得点は上がり方やドラ (上がり時に飜が加算される特殊な牌) の有無の他、役 (飜数) と構成する牌の符によって決まりますが、端牌は符が高く設定されていますし、例えば字牌は、白・發・中の三元牌なら無条件で、東・南・西・北の風牌なら自分がその風の位置にあれば暗刻を作っただけで役が成立して上がりの条件を満たします。 么九牌の対子や暗刻、あるいは么九牌に絡む順子だけで構成された手牌は難易度が高い分高得点が見込める大きな役が目白押しです。 組み合わせしにくく活用しづらい端牌だけに、それが集まるととてつもない破壊力を発揮するのですね。
とくに麻雀を知らない人でも比較的知名度が高いと思われる大きな役 (役満) に 「国士無双」 がありますが、これはその他の役とは全くふるまいが異なり、么九牌をそれぞれバラバラに1牌ずつ集めたら聴牌、どれかが2枚になったら役が完成するという特殊なものとなります。 役満は多少負けが込んでいてもこれ一発で形勢を逆転できるくらいの破壊力がありますし、運に見放されて負けるような時はしばしば么九牌が集まりがちなこともあり、それを使った大逆転劇はちょっとしたカタルシスもあります。
誰かをハジパイ扱いして 「あいつは非力で無害だから責任をおっ被せて切り捨てろ」 と軽くあしらったら、思いのほかしたたかな相手で手痛い反撃を食らうなどは現実世界でもよく見かけるものです。 他者を尊重せずに都合よく手牌のように動かしたり切ったりする人は、相手を見る目がないと自分に災いが及ぶということなのでしょう。