イラストやウェブ制作の納品にはつきものの 「レイヤー分け納品」
「レイヤー分け納品」 とは、パソコンなどデジタル機材で描いた イラスト を納品する際に、グラフィックソフトウェアの機能である レイヤー (グラフィックデータを複数階層の画像データで構成したもの) を統合せず、分けた状態で納品することです。
レイヤーの分け方は様々です。 例えば キャラクター を描いたイラストだとして、キャラのレイヤーと背景のレイヤーとの2つに別れている場合もあれば、キャラや背景の制作時の作画作業的なレイヤー分け (線画と着色とか、顔と体とか、細かく分かれている状態) のように、数十から数百を超えるほどのレイヤー数になることもあります。
レイヤー分け納品は、データ納品後の修正や調整には不可欠
レイヤー分け納品を行う理由はいくつかあります。 例えばキャラと背景があるイラストデータの場合、完全に統合された状態では、キャラ単体で使いたい場合に背景が邪魔になってしまうでしょう。 また複数のキャラがいるイラストの場合も、それぞれのキャラごとにレイヤーが分かれている方が、色々とアレンジができる余地が生まれます。
一方で、キャラと背景とが一緒で一枚の 絵 として完成させている以上、キャラだけとか背景だけで使われるのは、絵描き として不本意な場合もあるでしょう。 このあたりは 商業 にせよ 同人 にせよ、データやイラストをどのように使うのかを、事前にしっかり話し合って合意する、あるいはそれを契約書など書面に残す必要があるでしょう。
一方、絵を描く行程やパーツごとに細かくレイヤーが分かれている状態での納品を、強く求められることもあります。 もっぱら商業の場合が多いのですが、これは 「確実に制作した証拠」(どこかで拾ってきた画像ではなく、ちゃんと描いたもの) という痕跡がレイヤー統合前のデータであれば、ある程度以上確実に証明できるという理由もあります。
画像の盗用などはネット記事にせよ書籍類にせよ、公開した後に発覚すると大問題となりますから、複製が簡単なデジタルならではの要求かも知れません。 またレイヤーが別れている状態のデータそのものではなく、作業途中のキャプチャ画像やタイムラプス記録 (メイキング動画のように制作中の任意のタイミングで保存した静止画をつなぎ合わせたもの) などで制作証明を求められることもあります。
いずれの場合も、レイヤーが分かれていればいるほど納品後の画像編集や改変が容易になりますし、納品後の作品の 著作権 や権利関係・利用範囲のあれこれで揉めることがないよう、事前にしっかり合意を取るのが大切です。
同人誌などの入稿の場合は…
同人誌 などの 原稿 を 印刷所 に 入稿 する場合は、レイヤーは統合するのが原則です。 ただし入稿の方法は印刷屋さんによっても異なりますから、入稿マニュアル などをよく確認するようにしましょう。