「他の方は買わないでください!」 規約違反ながら行われる 「専用出品」
「専用出品」 とは、オークションサイト 「メルカリ」 などで行われている 「入札者 限定」 の出品のことです。 単に 「専用」 とも云います。 出品名に入札 (購入) 予定者の名前や ハンドル名 などが付けられ、「〇〇様専用」 などと表記される場合もあります。 メルカリの利用規約では非推奨や禁止とされている行為ですし、システム上も取引ルール的にも何の効力もありませんが、多くの利用者の間で暗黙の了解として 認知 されています。
本来なら相手を指定しての出品はできないので、いくら 「専用出品」 としていても、システム上は誰でも入札できます。 出品者は別の人が入札してもキャンセルすることができますが、規約違反なのでペナルティが課せられます。 嫌がらせなどで入札する人もいますし、通報されて削除されることもありますし、それなりに面倒ごとが起こる可能性も少なくありません。 もちろん面倒が生じても 運営者 もシステムも助けてくれません。
このような利用法をなぜ行うのかについては様々な理由があります。 それなりにまっとうな理由で同情の余地があるものもあれば、ほとんど違法、もしくはその可能性が極めて高い悪質な行為もあります。 繰り返しになりますが規約上非推奨・禁止されている行為でもありますし、何かと トラブル も多いので、そうした出品や入札は行わない方が良いでしょう。
様々な 「専用出品」 の形
「専用出品」 でもっとも多いと思われるのは、いわゆる 「お取り置き」 の代替手段としての利用でしょう。 ある物品を出品して入札され取引が成立したけれど、落札・購入者の手元に現金がないなどでしばらく待って欲しいとか、あるいは取引後に値引き交渉などが成立し、システム上で確定した金額とは異なる金額となったので、改めて値引き後の金額で出品して取引を行うというケースです。
なぜこのような面倒なことをするかというと、メルカリでは入金や配送などを匿名で行うことができる 「メルカリ便」 というオプションがあり、この機能を使う限り、落札後に一度定めた支払期限や支払い金額などが中途変更できない点があります。 もちろん双方がお互いの連絡先や銀行口座などを知っていれば、メルカリの外で連絡したりお金のやり取りができますが、個人情報を渡したくない場合には、両者合意の上で 「取引のやり直し」 をする方が早いのですね。 また値引きされた場合、メルカリ側に支払う手数料も変わってきますから、お金の節約にもなるでしょう。
一方、商品の 告知 や取引の取り決め自体は他の手段 (例えば メール や ツイッター・インスタグラムなどの SNS) で行い、商品やお金のやり取りだけメルカリを経由するといった使い方もあります。 ちょっとした生活小物や手作り アクセサリー などが代表的ですが、商品やお金のやり取りだけを 「メルカリ便経由」 とすることで、個人情報を交換することなくやり取りが成立しますし、商品が届かない、お金を払ってくれないといったトラブルも防いでくれます。 とくに購入者の要望に合わせた手作りだったり名前入りの小物やアクセの場合、途中で購入者から一方的にキャンセルされたり代金不払いが生じると販売者側の ダメージ が大きいので、ある種の保険としてこうした販売方法を行う利用者も少なくないようです。
なお一般的なオークションサイトでは取引を禁じられているような品物を販売し、その代金を確実に回収する手段として利用される場合もあります。 こちらも購入者募集の告知などは他の媒体を使い、お金のやり取りだけ 「メルカリ便」 を利用する形になります。 販売される商品は郵送や宅配などが不要で ネット でやり取りができる情報やデータ類が多く、例えば違法コピーされたソフトウェア (アプリ) のプロダクトキーやシリアルコード、暗号化された違法なポルノ画像とか、その他もろもろです。
「専用出品」 の横取りとは?
一方、専用出品された商品だと知りながら、別人が入札して取引を横取りするケースもあります。 単なる嫌がらせや出品説明をよく読まずに入札する人もいますが、例えば値引き交渉が成立した商品であれば、それなりにお買い得な価格となっているケースも多く、これを狙って横取りするハイエナのような人もいたりします。 もちろん出品者が 「この人は違う」 と気づけばキャンセルされて終わりですが、気づかなかったり、あるいは 「どうせ同じ値段で売るんだから、相手は誰でもいい」「キャンセルしてペナルティがつくのは嫌だ」 と思えば、そのまま横取りが成立し売買が確定してしまいます。
横取りされた購入者は他人に商品を取られたり出品者に裏切られた気分がして悔しい思いをすることになりますが、メルカリの規約上は専用出品こそ違反行為で、横取りの方は早いもの勝ちルールに則った正当な取引になるので苦情やクレームもつけられず、不快な思いを引きずることとなります。