同人用語の基礎知識

節子、それ〇〇やない。〇〇や

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サクマ式ドロップスのかわりに舐めたものは…「節子、それ〇〇やない。〇〇や」

 「節子、それ〇〇やない。〇〇や」 とは、人の間違い、あるいは間違ってはいないが 突っ込み どころのある発言に対してよく使われる テンプレート 的な ネットスラング です。

 元ネタ はスタジオジブリの アニメ 映画 「火垂るの墓」 で、物語の 主人公 の清太が、妹の節子に対してしゃべったセリフがベースとなっています。 ただしこの テンプレ 文字列と実際のセリフとは微妙に云いまわしが異なっていて、セリフがそのまま転用されているという訳ではありません (後述します)。

見るのに勇気と体力がいる名作…「火垂るの墓」

 作家 野坂昭如さんの戦争体験を一部脚色して綴った短編小説を原作とする映画 「火垂るの墓」 は、高畑勲監督による1988年に公開された長編アニメ作品です。 冒頭に主人公である清太や節子の死が示され、回想の形で戦争とそれによる厳しい社会情勢、飢えなどによって過酷な運命に翻弄される幼い兄妹を描いた悲劇の物語ですが、中でも作品中盤以降は悲惨な光景が続き、作品の持つ高いメッセージ性や名作としての評価とは別に、ある種の 「トラウマ作品」「二度と見たくない傑作」 とも呼ばれる作品となっています。

 家を失い身を寄せた親戚の家からも邪険にされて飛び出した兄妹は、川沿いの小さな洞穴に住み着き、2人だけの生活を始めます。 しかし食べるものに困り、清太は畑泥棒や火事場泥棒までして飢えをしのごうとしますが、節子は徐々に衰弱してしまいます。 このセリフは最終盤に登場し、住む家や食べ物もなく飢えつつある兄妹、なかでも妹の節子が極度の栄養失調のために意識も朦朧とし、生死の境をさまようときのシーンとなります。

 物語では元気だった節子はみるみるやつれ、ついには倒れて病院に運ぶことに。 洞穴に戻ると栄養をつけなくてはと清太はなけなしのお金で食べ物を調達しますが、戻ってみると節子は何かを舐めています。 節子が好きだったサクマ式ドロップスの缶の中にはドロップの代わりにおはじきが入っており、節子が舐めていたのもおはじきでした。 清太は節子の口からおはじきを取り出すと、くだんのセリフを口にして調達してきた食べ物を振舞おうとします。 しかしすでに節子の容態は手遅れとなっており、わずかにスイカを口にした後、そのまま亡くなってしまうことになります。

実際のセリフは 「節子、何舐めとるんや! これおやじきやろ! ドロップちゃうやんか!」

 ところで実際のセリフは 「節子、何舐めとるんや! これおやじきやろ! ドロップちゃうやんか!」 であり、ネットで流布している 「節子、それドロップやない。おやじきや」 とはかなり違います。 そのセリフの前は 「うまいことかしわも も買えたんやで、それからなぁ…」 後も 「今日は兄ちゃん、もっとえんもんもろてきたんや。 節子の大好きなもんやで」 であり、意味や ニュアンス はおおむね合っているものの、テンプレ文字列通りの内容ではありません。

 これは要するに 2ちゃんねる といった 掲示板 で、うろ覚えによるセリフの再現 書き込み が広がり、AA などコピペ素材としても使われて、それがそのまま定着したパターンなのでしょう。 こうした 「誰でも即座にそのシーンが思い浮かぶけれど、言い回しや作中で使われたタイミングが微妙に違う、あるいはまったく違う」 ようなアニメや マンガ のセリフは結構あります。

 有名なのは 「宇宙戦艦ヤマト」 の 「こんなこともあろうかと」 や 「フランダースの犬」 の 「もう疲れたよパトラッシュ」、本作と同じジブリ関係では 「風の谷のナウシカ」 の 「薙ぎ払え!」 と 「焼き払え!」 などがあります。 現在のように 動画サイト やネット用語の解説サイトなどがたくさんあれば確認もできるのでしょうが、広がり始めた頃にはそれがなく、ある意味で 「アニメ由来の新しく作られた言葉」 のような存在なのかも知れません。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2010年4月23日)
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