1冊あると何かと重宝…「スケッチブック」
定番の、maruman (マルマン) のスケッチブック |
「スケッチブック」 とは、絵画用の画用紙などを束ねて閉じた、大きなノートのようなものです。 略称で 「スケブ」 とも呼びます。
「Sketch Book」 の名前の通り、「スケッチ」(写生や素描、粗描) をするためのもので、全体に適度な厚みがあり、腰掛けて膝の上に乗せたり、首からヒモで提げるなどして紙と机 (画板やイーゼル (画架) とを兼ねるような使い方もできます。 後は鉛筆一本あればスケッチが開始できます。
野外などで 絵画 制作 環境 が 整え られない時に、手早く気軽に絵を描くための 画材 として便利ですし、誰でも小学生の頃に美術の時間などで手にするなじみのある アイテム となります。 またデッサンと名前はついていますが、水彩画やデザインアート、ちょっとした携行ホワイトボードや看板などとしても使え、絵を描く描かない以前に、一冊あると何かと重宝するのがこの 「スケッチブック」 でしょう。
通常は裏写りや絵と絵が触れて汚れないように、見開きの片方のみ (左綴じ・左開きの場合、表紙 から数えて3ページ目、向かって右側の1枚 (奇数ページ) のみ) に描く場合が多いものですが、最初の1枚目を汚れ防止のための 遊び紙 のようにして、2枚目の右側から描き始める場合もあります。 筆者 なぞは、まっさらな罫線なしのメモパッドとこのスケブが家に1冊はないと、子供の頃からどうにも落ち着きませんw
ちなみに 「スケブ」 と良く似たものに、「クロッキー」「クロッキー帳」(Croquis Book) というものがあります。 名前は違いますが本来は同じ物です。 しかし日本では、スケブは学校教育の場などで水彩画などを描く用途にも頻繁に使われるのに対し、クロッキーは鉛筆画など、より素早い 絵描き に向いた画材として、それぞれが独自の進化をしています。
一般にスケブは紙が厚く、結果として一冊に綴じられている紙の数も少なめ、クロッキーは薄い紙でより多くの枚数が綴じられたものとなっています。 一般的な低年齢の児童向けの 「いたずら描き帳」 なども、どちらかと云うと 「クロッキー帳」 に振った性格付けがされていますが、いずれにせよあまり厳密な区別はありません。
身近な画材、「スケッチブック」
構造としては並口画用紙20〜30枚ほどを厚紙の表紙で挟み、折り返して1枚の紙のようになるよう、しばしばスパイラル製本 (渦巻状の針金で綴じる) などをしているのが特徴です (そうでないのもあります)。 必要があればビリビリっとスパイラル針金が通る穴 (目打ち) を破線として、切り取ることもできます。
サイズはB4やA4サイズが手ごろで、価格も100円から400円程度と安価となっています。 用途により厚口や特厚口の画用紙が使われたり、逆に薄い画用紙で枚数を増やしたもの、綴じている 「のど」 の部分が糊付けになっているものなどもあります (糊付け製本され画用紙がきれいに切り離せるものは、スケッチパッドなどと呼ぶ場合もあります)。
こうした構造のデッサン用画材はヨーロッパで生まれ、17世紀頃盛んに使われていた画板に画用紙を複数まとめたような手作りのものがそのルーツともなっています。 素早く絵を描く事を目的とし、スケッチやデッサンの名手とされる画家がこぞって野外の創作活動に使い、その後プロ画家や美術家用のみならず、庶民の 趣味 の画材としても普及。
日本では1920年、東京都神田で創業の丸萬商店 (現在のマルマン株式会社 (maruman) がスケッチブックの実用新案特許を取得。 都内の学校の美術教育用として販売を始め、戦争やその後の物資不足による事業縮小と復活を経て、1958年にヨーロッパから日本初となるスパイラル製本機を購入して量産化を開始。 学校教育用の文房具として全国で使われ、爆発的に普及することとなりました。
「サクラ」 や 「ぺんてる」 のクレヨンや絵の具セットとトンボ鉛筆、そしてこの 「マルマンのスケブ」 は、日本人なら誰でも一度は手にする最初の画材といって良いのではないでしょうか。
同人イベントで、作者とファンとの 「絵の往来」 にも活躍
実際に本格的に絵を描く場合には、利用する画材によっては画用紙は扱いにくいケースもあり、マンガ なら ケント紙、水彩の イラスト なら イラストボード (イラボ) などを使ったりもします。 しかし 同人誌即売会 などで スケブOK (この スペース でそのまま絵を描き差し上げます) などと掲げている 同人サークル や 絵師 さんは多いですし、その場で気軽に絵を描く、絵をやり取りするのに、これほど適したアイテムもありません。
紙に描かず、パソコンでイラストもマンガも全て完結させている作家さんも増えていますが、子供の頃のお絵かきや、野外でのお絵かき、そして人と人とが集まる イベント がある限り、「スケブ」 も愛され、また使われていくのでしょうね。
ところでどうでもいい話ですが、筆者が子供の頃は 「エッチ スケッチ ワンタッチ」 なんて言い回しがありましたが…今はもう使わないんでしょうねぇ。 気になります。 何だかものすごく気になります。