ただでさえ天使のミクが感情という翼を持って女神になろうとしてるな
「ただでさえ天使の○○が」 とは、褒め称える対象がさらに付加価値を増して、よりいっそう素晴らしいものになる、さらなる高みに昇る…との絶賛の形をとりながら、大仰な表現によりそうした対象をあがめる人たち、ファン などを皮肉り揶揄し冷ややかに見るような独特の言葉です。 略して 「ただ天」 とも。
「感情」を獲得した初音ミク―「ダーク」 「ソフト」でうたってもらった」 (ITmedia News/ 2009年12月9日) |
「ただでさえ天使の○○が」 と単独で使う場合もありますが、本来は 「ただでさえ天使のミクが感情という翼を持って女神になろうとしてるな」 で、「ミク」 とは DTM (デスクトップミュージック) 用の音声音源ソフトウェア、初音ミク (VOCALOID2 初音ミク) を指します。
元ネタは 「初音ミク」 関連ニュースへの掲示板のレスから…
元ネタ ですが、2009年12月9日に、「初音ミク」 でよりいっそう感情を込めた歌い方を簡単に行わせることのできる 「初音ミクAppend」(「初音ミク」 をインストールしたパソコンに、追加でインストールするアペンド形式のソフトウェア) によるデモ版が公開されたというニュースが ITmedia News に掲載、その 「感情」を獲得した初音ミク――「ダーク」「ソフト」でうたってもらった」 という記事を取り上げた 2ちゃんねる のニュース速報板 (ν速板) の 書き込み に由来します。
このニュースを取り扱った スレッド において、ある人物が、
10 : 白金耳(愛知県) :2009/12/09(水) 18:09:06.79 ID:e2j2X+bU
ニコ厨のきもい妄言の予想
「ただでさえ天使のミクが
感情という翼を持って女神になろうとしてるな」
と レス。
これは読めばわかるように、書き込み主による 「初音ミクをあがめている 「ニコ厨」(動画共有サイト、「ニコニコ動画」 の熱心なユーザを 厨 扱いして批判する呼称) は、きっとこんな反応をするはずだ」 との侮蔑的な予想のネタ書き込みでした。 しかしその後のレスで他のスレッド参加者が、「何それ、逆に引くわ」「お前がニコ厨なんじゃないのか」 と面白がって理不尽な揚げ足取りを開始。 「これはテンプレになるな」 との流れになってしまいました。
こういった揚げ足取り、追い込み方は、時としてこれらの 掲示板 では ネタ としてよくあることではありますが、それはそれとして 「ただでさえ天使のミクが感情という翼を持って女神になろうとしてるな」 との言い回しは完成度が非常に高い洗練されたフレーズだったこともあり、一部省略され 「ただでさえ天使のミク」 との言い回しで同板で徐々に定着。
それ以前から似たような経緯と意味で使われていた 胸が熱くなるな (胸熱) などと同じように、ニコニコ動画やボーカロイド関連の話題 (しばしば一部の アンチファン による ネガキャン、揶揄の ニュアンス が加わる)、後には他のものへと対象を広げながら、成句、ネタ用語として使われるようになっています。 また成句の略語と略語を合体させたもの (例えば 「ただ天胸熱」 など) も、数多く生まれています。
ただでさえ天使のミクがせんべいに… 「ただ天」 が枕詞状態に
その後この 「ただでさえ天使の○○」 はすっかり定着。 初音ミクがらみのニュースが流れるたびに枕詞として使われる状態に。 「ただでさえ天使の○○が□□に」 というフレーズは、とにかく使いやすいということなのでしょう。
大きな話題となったものだけでも、「ただでさえ天使のミクがせんべいに」(ねぎ入り初音ミクせんべい「みくせん」(志満秀) の発売で/ 2010年2月)、「ただでさえ天使のミクが雪化粧で白銀の女神に」(さっぽろ雪まつりに初音ミク雪像が登場/ 2010年2月)、「ただでさえ天使のミクが新幹線に」(初音ミクっぽいカラーリングの新型新幹線、E5系の愛称募集で、「はつね」 に投票騒動/ 2010年3月)、「ただでさえ天使のミクがタクシーに」(宮城県白石市の個人タクシーがミク仕様に/ 2010年3月) など、数多くあります。
これ以外の 「初音ミク」 がらみの言葉としては…
「初音ミク」 がらみの関連用語は上記 「胸熱」 以外にもたくさんあり、有名なものに 飽きた寝る や ふーん、ご立派ですね、ひっくり返るよ、当然 など様々なものがあります。 話題となったソフトだけに、作品だけでなく熱狂的なファン、アンチが数多く現れ、ポジティブ にしろ ネガティブ にしろ、様々な言葉がいろんな経緯で生まれてくるのは興味深いですね。
この 「ただ天」 が生まれたのは、初音ミク発売から2年以上も経過した後なのですが、ミクを利用した新しい作品はどんどん作られていますし、大手ネットメディアで、実力派の ベテラン ライターらに実演で力のこもった記事を頻繁に書かれ話題となるなど、その勢いは全く衰えていない印象です。