おおっと、ここで華麗に…「スルー」
「スルー」 とは 「無視すること」「シカトすること」「気にとめないこと」 です。
もっぱら ネット の世界では 掲示板 に現れた 荒らし や 釣り、煽り などを無視したり、おたく の 界隈 では新しく始まった アニメ の放送や マンガ の連載、新作の ゲーム やアイドルの売り出しを無視したりといった文脈で使われます。
従来から使われてきた 「パス」(トランプのゲームなどで自分の順番を飛ばしてもらうこと) がもっとも近い言葉となりますが、1970年代中ごろ、レストランやファーストフード (新潟県のフレンド喜多町店や、東京のマクドナルドの環八高井戸店) がアメリカのシステムを真似る形で相次いで 「ドライブスルー」 を導入。
以降マクドナルドを中心にクルマに乗ったまま通り抜けつつ買い物ができるドライブスルーシステムが日本中に広まり、1980年代になって若者言葉として 「通り抜ける」 の意味でスルー (Through) が定着。 その後 「反応せず通り抜ける」「無視する」 といった意味で使われ続けることとなりました。
「ドライブスルー」 と、「スルーパス」
なお 「スルー」 定着にはもうひとつの要素があり、サッカーにおける 「スルーパス」(敵のディフェンスラインを突破するため、敵ディフェンダーの間を通り抜けさせる難易度の高いパス、通ると相手ディフェンスラインの裏を取り決定的なチャンスを得やすい) の影響もあります。 テレビのサッカーの中継などで、スルーパスが通った際に 「おおっと、ここでスルーパス」 といった 実況 がされ、これを真似る形で自分や友人らが 「スルーする」 ことを茶化して実況的にしゃべることが広まり、ギャグとして定着することになりました。
本来は 「ドライブスルー」 にも 「スルーパス」 にも英語の 「スルー」 にも 「無視する」「反応しない」「受け流す」「聞き流す」 といった意味はないのですが、これらが相乗し、「おおっと、ここで華麗にスルー」 などが若者言葉として1990年代には一般的な表現となりました。
難しい 「スルー力」
俗に 「荒らしに反応する人も荒らしです」 と云われますが (反応を貰うためだけの中身のない書き込みに反応して相手の思う壺にはまるので当然ですが)、これを実践するのは結構難しいものです。 どうでもいい話題では無視できても、自分が本当に入れ込んでいる話題やその スレッド では、つい感情的になって反論したくなるものです。
逆にスルーできる高い能力 (スルー力) を持つ人は、スルーだけに表面的にはその力がわかりづらいものですが、しっかりした 運営 や管理がされている掲示板やスレッドなどは、そうした レベル の高い人がどっしりと話題をリードしているものです。 誰かが散発的に煽るような書き込みをしても誰もレスせず、淡々と流れるさまは見ていて痛快で、耐性の極めて高いコミュニティを 「要塞」 などと呼ぶこともありますが、いやあ、あやかりたいものです…。
「スルー推奨」 とは…?
なお 「スルー推奨」 は、他人の発言に対して 「無視しろ」 という意味の言葉ですが、自分の発言や創作物につける場合もあります。 この場合は 自虐的 な意味の 「無視してください」 の意となります。