キレイな○○/ きれいなジャイアン/ 同人用語の基礎知識

お前が落としたのは、このキレイな○○ですか？それとも…

　「キレイな○○」とは、日ごろは良くないもの、悪いもの、例えば嫌われ者だったり乱暴者だったり、金に汚い、性格が残忍、無慈悲、狡猾、虚言癖があったり容姿が醜い人などが、「心を入れ替えて真人間になった」「姿かたちが突然美しくなった」ような状態を指す言葉です。

　またヤンデレで暴走しているような状態（似た言葉でＬ５発症など）から、元の素の状態、穏やかな状態に戻っている様などを表す言葉でもあります。　暴走モードを「黒化」「黒姫化」などと呼ぶことから、「白化」「白姫化」と呼ぶ場合もあります。

元ネタは「ドラえもん」の「きれいなジャイアン」

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マンガが元の「きれいなジャイアン」ＡＡ

　「キレイな○○」の元ネタですが、「ドラえもん」のエピソード、「木こりの泉」に登場する、「きれいなジャイアン」（略して「きれジャイ」）に由来します。

　有名な童話、「金の斧と銀の斧」をモチーフとしたエピソードですが、これと同じ効果が得られる「ドラえもん」の道具、「木こりの泉」が登場するお話で、これを使って泉（水たまり）を地面に出現させ、その中に食べかけの「どら焼き」や、汚れた古い道具や洋服を投げ入れると、まだ口をつけていない大きなどら焼きや新品の洋服などを手にした女神が、水の中から現れます。

　童話「金の斧と銀の斧」で木こりが正直に「汚れた鉄の斧が自分の落とした斧です」と答えると、正直者へのご褒美として金の斧や銀の斧をもらえるように、この「木こりの泉」も、正直に落としたものを答えると、大きなどら焼きや新品の洋服がもらえるという寸法です。

　このエピソードでは、その泉を使おうとするジャイアンが登場、欲張ってたくさんのおもちゃを投げ込もうとして誤って泉に転落してしまい、その結果現れたのが、女神が差し出す「きれいなジャイアン」（イケメンで言葉使いもまじめな、キラキラ輝くジャイアン）なのでした。　転じて、「その人のいつもの姿とは違う、ありえないくらい美しい状態」を指す言葉として、「キレイな○○」が、広がることになりました。

　ちなみにドラえもんの「木こりの泉」の結末ですが、のび太らは当然ながら「乱暴で汚いジャイアンです」と答え、きれいなジャイアンを女神から渡されます。　では本当に落ちた、いつもの乱暴者のジャイアンは…と云うと、見苦しく自分で泉から這い上がろうとして、女神に頭を押さえつけられて終わりなのでした。

その後、いろいろなものに転用

　その後こうした言い回しは「きれいなカイジ」（賭博黙示録カイジ）、「きれいなノリさん」（中日ドラゴンズの中村紀洋選手）など、日ごろお金に汚い（と思われているような）人がそれを払拭するような態度に出た時に、「きれいな○○」と呼ぶネットスラングになっています。

大ヒットブラウザゲーム「艦これ」の艦娘グラ変更で

艦これ人気キャラ龍驤が「きれいな龍驤」に？
筆者の艦隊の龍驤ちゃんも新しい雰囲気に
「艦隊これくしょん」（角川ゲームス/ DMM.com）

　2013年４月に登場し、瞬く間に大ヒットとなったブラウザゲーム「艦隊これくしょん」（艦これ/ 角川ゲームス/ DMM.com）。

　第二次大戦中の旧日本海軍を中心とした軍艦をモチーフに艦船を擬人化した「艦娘」（かんむす）と呼ばれる美少女を集めて艦隊を組み、謎の敵と戦うオンラインゲームですが、この中でも高い人気を誇る軽空母龍驤（RJ）の改造バージョン（龍驤改）のグラフィックが、2014年４月９日のメンテナンスで追加差し替えされました。

　ところがこのグラフィックが、それまでの龍驤と大きく変わったように見えるものだったため、それまでの既存絵で長期間プレイし慣れ親しんでいた提督（プレイヤー）、既存絵のテイストが好きだった提督の一部などから、違和感を覚える、元の絵に戻して欲しい、イラストの切り替えができるようにして欲しいなどの批判や要望が相次ぐことになりました。

　この新グラフィックが、瞳キラキラの少女マンガのような姿となっていたことで、上記「きれいなジャイアン」をアレンジした「きれいな龍驤」（きれいなりゅうじょう/ きれいなRJ）といったネタや批判が登場。　ネタ画像なども多数つくられ、再び「きれいなジャイアン」がネタとして再注目されることになりました。

　ゲームキャラの中途でのグラフィック変更は、単なる好みの問題、慣れの問題の場合もありますが、どのような形であれ批判されがちではありますし、こうした出来事をきっかけに、本当のファンではない単なる野次馬やアンチが入り込み、騒動を大きくしてしまう傾向もあります。

　とはいえ、事前にグラフィックが変わることをある程度知ることができ、プレイヤーが選択することもでき、史実をモチーフとした装備面などで分かりやすく意味のある変更も伴うことがある改造の改造（改二）時のグラフィック変更と違い、自分が好きで育てていたキャラの絵がいきなり強制的に大きく変更となるのは、それが人気キャラであればあるほど、大きな問題にもなりがちなのでしょう。

　ちなみに筆者も艦これはプレイしていて、龍驤の絵師であるくーろくろ氏の絵柄がとても好きで（古いのも新しいのも好き）、しかも龍驤はうちの艦隊の初空母だったこともあり、レベル順ソート１ページ目から外れたことがない空母のエースとして愛でていたので、ちょっとびっくりはしました。　とはいえマイナー誌ばかりだったとはいえ筆者も一応漫画で生活していた時期があるので絵師さんの気持ちや苦労も何となくわかるし、もちろん龍驤ファンの気持ちもわかるしで、ちょっと胸中は複雑です。

　なおこのキャラはその後さらなる改造（改二）が実装され、それに伴い新しいグラフィックが追加となりましたが、その新しいグラの仕上がりは素晴らしいもので、ほとんど全面的絶賛に近い高い評価を多くのファンから受け、「艦これ史上最大の手のひら返し」などとも呼ばれることになっています。

　この間、くだんの絵師さんは数多くの批判や罵倒に一切の反論も釈明も愚痴や弱音の吐露すらも行っておらず（感想に対する感謝はしていた）、ある意味「絵で批判に答えを出した」ような形になっています。　ご本人の心の中はわかりませんが、外から無責任に見ている身からすると、「すごい人だな」と一連の流れに尊崇の念すらわいていたりします。　いやあ、世の中にはすごい人がいるんですね。