絨毯を敷き詰めるように一網打尽 「絨毯爆撃」
「絨毯爆撃」(じゅうたんばくげき/ Carpet bombing) とは、軍事 の世界における戦術のひとつで、爆撃機によって広範囲にわたる爆弾 投下 を無差別に行う攻撃を指します。 床に絨毯を敷いて範囲を覆い尽くす、塗りつぶすような 爆撃 というわけですね。
主な目的は、戦争初期においては敵の戦力やインフラを根こそぎ徹底的に破壊し、その後に行う直接的な軍事行動の前に敵の抵抗力を弱体化させること、精密な敵目標が特定できない場合に物量に物を言わせてまるごと殲滅すること、および敵の士気を下げることにあります。 対空・地上戦力や物資が集まっている場所へまずは空からの攻撃で壊滅的な打撃を与え主導権を握ることが重要視されるのですね。 戦争中期から末期であれば、敵の最後の抵抗力を喪失させ、継戦能力を奪うために残存する敵兵力だけでなく生産設備などにも広く行われます。 対義語は精密爆撃やピンポイント爆撃です。
似た言葉に 「無差別爆撃」 があり、これは絨毯爆撃と行為自体はかなり近いのですが、爆撃地域の選定などに違いがあります。 絨毯爆撃は、無差別とはいっても原則的には軍事施設や敵戦力、生産設備、インフラのある地域・範囲を爆撃するのに対し、無差別爆撃はそれらを含めた全ての地域・目標がが攻撃対象であり、民間人しかいない住宅地や森林、歴史的遺構、文化財をはじめ、戦争になんら関係のないあらゆる地域・範囲が爆撃対象です。
絨毯爆撃にせよ無差別爆撃にせよ、この戦術が登場した当初から非人道的・非倫理的だとして批判される行為ですが、攻撃側が 「敵兵士が民間施設に潜んでいる」「軍事施設を民間施設に偽装している」「民間人も住宅内で軍需物資生産に携わるなど戦争に直接協力している」 などとして、いくらでも非軍事目標を軍事目標にすり替えることができます。 また無差別とはいっても、何ら戦術・戦略的に意味のない無人の荒野を爆撃しても意味はないため、それなりの効果が見込める地域や範囲を選ぶことになりますし、結果的にあまり言葉や定義に大きな違いは見出せないでしょう。
軍事以外でも、何かと使われる 「絨毯爆撃」
いずれにせよ絨毯爆撃という言葉は、手あたり次第に全てを攻撃するという部分で 一般人 にも分かりやすい 概念 ですし、日常 の生活のあれこれでも比喩としてよく用いられています。 おたく や 腐女子、同人 の世界では、自分の好きな ジャンル の 同人誌 や グッズ、その他全てを購入する、手に入れるといった意味で使われます。 その場合、ジャンル買い とか 島買い と呼ぶこともあります。
また ネット の世界では、いくつかの 投稿 に対して複数の レス をすることを爆撃に喩えることもあり、絨毯爆撃は全てのレスに返信する (全レス する) あるいは特定の 掲示板 の全ての スレッド、あるいは板にレスするとの意味で使われることもあります。 この場合も ネットスラング で絨毯爆撃の他、無差別爆撃が使われることもあります。 また結果的に連続した投稿になることから、連投 と呼ぶこともあります。
広告のための スパム や 荒らし などにもよく見られる無差別で物量に頼った投稿方法であり、いずれにせよ迷惑行為との認識がされるケースがほとんどでしょう。
同様の意味で 「ローラー作戦」 が使われることも
ちなみに絨毯爆撃と似たような使われ方をする言葉に、警察や公安が重大事件捜査の際にしばしば行う 「ローラー作戦」 があります。 担当 する地域を決めた大勢の捜査員がそれぞれの地域をローラー (roller) で塗りつぶすように全戸訪問して聞き込みするもので、犯人や犯人につながる情報がありそうな地域へのしらみつぶし・徹底的な捜査方法となります。
一方、同じ 「ローラー作戦」 は軍事用語にもありますので、警察用語のそれはこちらが転用されているとの話もあります。 軍事におけるローラー作戦はローラーを転がすように特定の地域や範囲に繰り返し継続的な攻撃を加えて、その地域や範囲を押しつぶしていくように制圧していく戦術です。 語源に一定のつながりはあるのかもしれませんが、警察のそれは塗料を塗るローラー、軍事のそれは道路を均すロードローラーみたいな ニュアンス になっていますね。
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