好きなメンバーを応援します 「担当」
「担当」 とは、主に男性アイドルタレントに対して女性の ファン が使う言葉で、「〇〇のファンだ」「一番のお気に入りだ」 といった意味の言葉です。 ファン同士の会話やコミュニティでの発言、あるいは 同人 における作品中で 「自分はこのタレントが好きだ」 といった 自己紹介 の文脈でも使われます。 使い方はそのまんまで、タレントがAさんなら 「A担当」 となります。
個人活動をしているタレントさんに対して使うケースもありますが、ジャニーズ事務所所属タレントをはじめ、男性アイドルの多くがグループ単位での活動をしていることもあり、言葉の成り立ちも含め、本来的には 「グループの中の〇〇さんが好きだ」「〇〇さんを追っかけている」 との意味を持ちます。 これは、もっぱら女性アイドルグループの好きな特定メンバーに対して男性ファンが使う 「推し」 とほぼ同等の意味と使い方です。 ただし、2009年頃から広まった 「推し」 に比べると、ずっとずっと古い言葉となりますし、ニュアンス は微妙に違います。
なお ネット用語・おたく用語 として広まった 「俺の嫁」、昔からアイドルファンが使っていた 「〇〇派」(例えば蘭ちゃん派、ミーちゃん派) などとも実質的にほぼ同じ使い方をします。
派生語として 「自担」(自分が担当のタレントのこと、担タレ)、「同担」(主に仲間内で他の人と担当が被ること、同推し・推し被り)、「同担拒否」(担当が被ることを嫌うこと、同担NG、同推し・推し被り敵視)、「担移り」(他のタレントの担当になること、転ぶ こと)、「担降り」(ファンをやめること、あるいはファンだけれど積極的なファン活動はやめること) などもあります。
実在男性アイドルを指す言葉から、様々に派生
元々はグループ単位で活動する男性実在アイドル (ナマモノ) をもっぱら扱うアイドル用語として認識されていた言葉でした。 しかしその後、アニメ や ゲーム の キャラ をはじめ、実在・架空を問わず好きな対象を広く指す言葉として使われることもあります。
筆者 の観測範囲では、半生 である特撮の戦隊ものはもちろん、完全に 二次元 扱いの コンテンツ、例えば 「美少女戦士セーラームーン」(1992年〜) のファン 界隈 などでも、特定キャラのみを推すファンが 「うさぎ担当」「亜美ちゃん担当」 などと少なくとも1995年時点で当たり前のように使っていました。 ファン層がある程度被っていたことも合わせ、数あるアイドル用語の中でもひときわ歴史があり、ずっと使われ続け、かつかなり奥行きのある言葉だと云えるかもしれません。
ちなみに筆者はジャニーズタレントのファンではなかったため、当時 「担当」 をそれほど強い意味のある言葉とはまだ認識しておらず、一般用語の担当と同じ程度の認識でコミュニティ内では使っていました (セラムンでは、天王はるか担当でした)。 セラムンファンには女性も多く、周りにうちわを作ってライブに参加しているような熱心なファンが何人かいましたから、当時から当然のように使われていましたね (オンライン・オフライン 問わず、交流があった パソ通 の他コミュニティでも似たようなものでした)。
なぜ 「担当」 なのか
なぜ 「担当」 という言葉が使われるようになったのかについては、明確な言い出しっぺの存在や語源も含め、諸説ありまとまってません。 ただしグループのファンなどは、同じグループのファン同士で集まりますし、そうしたグループで 肉筆回覧誌 (学校のクラスや 仲良し グループ内で交代・リレー形式で作るノートや スケブ を使った回覧誌) を回したり 同人誌 を作るとなれば、当たり前ですがAさんファンがAさん部分を担当することになるでしょう。
またみんなでカラオケで歌えばAさんパートはAさんファンが担いますし、ランダム販売のグッズでAさんのグッズが出たら、当然Aさんファンが担当して引き取ることになるでしょう。 こうしたことの積み重ねにより、ファン同士の交流の中で 「Aさんファン ≒ Aさん」 のような関係性やポジションの一体化が徐々に醸成され、時にはグループの関係性がファン同士の人間関係の中にも疑似的に形作られていったりもします。 不特定多数が集う同人に関わっていなくても、コンサートやライブのチケット取りの関係で友人の友人あたりの初対面の人と合流する機会も多くあり、自分の担当を記した手作りの 名刺 などを持ち歩く文化もありましたし、一体化しやすい条件が揃っているといって良いでしょう。
同じグループのファンや、そうしたファン同士の集まりを 「身内」 とか 「家族」「ファミリー」 と呼んだりもしますが、熱心に何年もずっと同じ仲間と同じグループを追っていると、仲間意識や友情も深まりますし、そうした様々な関係性や役割分担の中でもっとも使いやすい言葉が、すなわち 「担当」 なのかも知れません。
女性の男性アイドルファンの多くが義務教育の時期にそうした活動に入ることもあり、小中学校内の 生徒会 やクラス内の生徒活動で 普通に 使われる 「〇〇担当」 が、そのまま緩く使われるようになったのかなという気もします。 突飛でも仰々しいでもない普通の言葉であり、どこででも使える、ウィットと知性に富んだなかなか良いネーミングな感じです。