博愛主義なのか、単なる無節操、誰でもOKなのか…誰でも大好き、DD
「DD」(ディーディー) とは、「誰でも大好き」=「Daredemo Daisuki」 の略語で、特定アイドルのみの熱心な ファン などが、複数のアイドル、もしくはあらゆるアイドルを好きになる節操のない (と感じられる) ファン (「全推し」「箱推し」 とも) に対し、侮蔑的に使う隠語のひとつです。 2007年頃から流行りだしたとされる、いわゆる KY式略語、ローマ字略語 などに近いテイストの言葉ですが、発祥ははるかに古く、パソコン通信 時代にはその原型の言葉が出現していました。
また 「DD」 という考え方自体は、それこそアイドルとそのファンがこの世に誕生した時点からあったといっても良いでしょう (例えば 筆者 の記憶では、ピンクレディーの両方が好きなファンは、ミーちゃんケイちゃんそれぞれの単独ファンから、かなり冷ややかに見られていましたし、それはキャンディーズやフォーリーブス、たのきんトリオやグループ・サウンズなど他のグループ、場合によっては応援するプロスポーツチームのメンバーなどでも同じでした)。
なお時代を下ると 「どっちもどっち」 という意味で使うケースも出てきました。 この場合、「DD論法」(どっちもどっち論法/ そっちこそどうなんだ論法 のこと) といった云い回しもあります。 またあんまり関係ありませんが、投資や経営の分野では、デューデリジェンスをDDと表記したり、財務諸表をDD資料とか呼んだりもします。
一途に特定アイドルを応援するファンから見ると 「浮気性」「不誠実」 に見えるのか…
この言葉がもっとも端的に現れるのは、モーニング娘。 でお馴染みの 「Hello! Project」(ハロプロ) 系アイドルや 「AKB48」、さらに遡ると 「おニャン子クラブ」 のような、大勢のアイドルが参加するグループ形式のアイドル ユニット のファンでしょう。 男性アイドルでは、ジャニーズ系などがそれに当たります。
特定の一個人メンバーだけに入れ込み、深い愛情とファン心理を持つファンにとって、複数、もしくはメンバー全員を応援するようなファンは、「アイドルなら誰でもいいのかよ」(女なら誰でもいいのかよ) と感じられるケースも多いようです。 しかもそういうファンが イベント やコンサートで最前列あたりの良い席を取っていたりして、自分が好きなアイドルの一番良いポジションに座っていたりすると、「俺の方が○○ちゃんを大事に思ってるのに、何なんだあいつは!」 的な不快感がモロにでるケースが多いようです。 自分がいかに対象とされるタレントが好きなのかを、それ以外のタレントを叩くことで証明しようとしている部分もあるのでしょう。
一方で、「DD」 と呼ばれているファンの方は、特定アイドルのみのファンの考え方を今ひとつ、もしくは全く理解できなかったり、あるいは不快に思うケースも多いようです。 例えば 「○○ちゃんファンは、グループやユニット全体のことをまったく考えず、○○さえ良ければいいと考えている」「メンバーの人気ランキングなどで大騒ぎして迷惑だ」「不等号厨 は ウザイ」 などと考えるケースも多いようです。
これらは男女・年代問わず、またアイドルだけでなく、声優のユニット、劇団やミュージカルの舞台俳優関係などでも程度の差こそあれ、よく見られるファン同士の軋轢でしょうか。
よろずや全カプなど、同人の世界にも似た言葉が…
「よろず」(万) とは 「あらゆるもの」 の意味で、よろずサークル と云えば、どんな ジャンル の作品も描くサークルのことです。 また 「全カプ」 とは 「全てのカップリング」 と云う意味で、全ての キャラ、あらゆる方向の カップリング を行うの意味です。 これらも特定作品の一途なファン、特定キャラの熱狂的なファン、特定のカップリングを支持するファンなどからは敵視され、時としてかなり激しく攻撃すら受ける場合があるようですね。
アイドルにおける 「DD」 もそうですが、無視するのならともかく、自分が好きなものを 「つまみ食い」「二股三股」 されているかのように感じられる、愛がない ように見えるのが不快を覚える原因だと思いますが、ここらは妥協の余地のない 趣味 の世界の話ですし、どっちが上だ下だ、正しい悪いといえるものでもないので、なんとも難しい問題です。
尊重しあうのは無理としても、お互いに無視ができれば波風も立たないのでしょうが、アイドルファンにしろ同人ファンにしろ、コンサートや握手会、同人イベント などの各種 イベント で利害関係を持った出会い方 (イベントのチケット争奪や場所取りなど) をするだけに、不快感が生じると我慢がならないなどとなりがちです。 これはファンが集う ネット のコミュニティなどでも同じです。
DDというより、もはや騒ぎたいだけ…? 迷惑行為を行いイベントで締め出されるケースも
一方、古参 のファンからはDDに見えるだけの 新規 ファンや、あるいはコアなファンとは思えない人たちが、「騒げそうな声優などのコンサート」 で目立ちたいだけ、オタ芸 で大騒ぎするためだけにライブやコンサートに片っ端から訪れるケースも後には生じ、タレント側が声援の一部自粛や実質的な締め出しを要請するなど、取り巻く 環境 の変化も見られます。
単なるコンサート荒らしなのか、新参 と古参とのスタイルの違いによる軋轢なのかは、それぞれの当事者ごとにそれなりの言い分はあるのでしょうが、タレントさん本人やその事務所、あるいはファンの多くが 「迷惑だ」 と感じてしまうような応援は、やはり問題が大きでしょう。
こういった応援スタイルの違いによる軋轢は、それこそアイドルが登場し、そのファンが声援を送るようになった時からつきものではありますが、ルールでがんじがらめ、締め付けすぎても エンターテインメント として不自由なものの、ハメを外しすぎて迷惑がかかったり、何か事故が起こってしまっても困ります。 人が集まる場所では、他人の立場になって考え、また行動するのが大切なのでしょう。