なんちゃってオタクから、ぬるヲタへ
「ぬるヲタ」 とは、「ヌルい」(未熟な事、あるいは物足りない、浅い状態)の おたく の意味です。 言葉の 概念 としては、「なんちゃってオタク」(オタクのフリをしている非おたくの 一般人)とか 「ライトオタク」「ちょいオタ」「プチオタ」「ニワカ」 などに近い言葉で、しばしば本人が自称する言葉となっているのが特徴です。
また自分ではものを作らない、クリエイティブではない、単に人の作品を消費するだけ (ただし他人の受け売りで評論だけは立派で過剰なおたくアピールをしたり イキっ たり) のオタを批判的に指すケースも多いようです。 あるいは一般人がおたくになる、その途上の状態とも認識されています。
「おたく」 誕生から20年…世代によるおたく観も変化
本来的には 「おたく」 という名称自体も、それまでのメインカルチャーもしくはメインカルチャーに非常に近いポジションのサブカルチャーの信奉者から、「ぬるいやつら」 のような意味でも使われていた言葉です。
ファンタジー やSF作品などの原作や古典、さらにその元となった神話や宗教、伝説、伝承物語、歴史、あるいは名作や良作だけではなく、歴史的駄作や迷作までを系統的にきちんと教養として踏まえた ファン と、単なるその焼き直し、手軽に楽しめる孫引きのような アニメ や マンガ、ライトノベル しか読まない、知らない人との断絶のような感じですね。
しかしその後、時代を経て 「おたく」 そのものが権威化してくると、今度はさらにアニメマンガ作品の 世界観 や 作者 の作家性などを無視し、物語の表面的な分かりやすい魅力や、作品に出てくる キャラクター やその容姿だけに 萌える ような人を アニヲタ や 萌えオタ などと呼んで差別化。
一方で、若い人にしばしば見られる 「好きな作品だけを選んで楽しんで何が悪い」「古臭い過去作品やトラディショナルなバックボーンなど、知らない方がむしろカッコイイ」 みたいな独特の価値観や、「相手が過去作品を知らないことで下に見て、あげく人格まで叩くような頭の固いオタクにはなりたくない」 などの風潮も登場。 その次がこの 「ぬるヲタ」 といった感じでしょうか (短く流れを追うため、誤解を承知で、かなりかいつまんで書いてます…)。
「新世代オタ」 と、「旧世代オタ」
ただし他人が貼るレッテルとの印象が、とりわけ初期の 「おたく」 には強くありましたが、アニメ や マンガ、ゲーム の世界が拡大する中、次第に変容。 現在は自称するケースがかなり多くなってきました。
その点で云うと 「ぬるヲタ」 は、かつての 「新参 に対する 古参 の見下すような差別感」 とか、「メインカルチャーやほぼメイン化したサブカルチャーに対するカウンターカルチャーとしての先鋭感」 などとはあまり関係がなく、むしろ排他主義、選民思想に陥りがちな古参に対して新参が、「俺はぬるいから」 のような謙遜、へりくだった自分のポジション、もしくは旧世代に対し若干の皮肉を込めて自嘲気味に使う場合もある言葉となっていますね。
実際、「ぬるオタ」 を自称する人は 同人 の世界でも ネット の世界でもたくさんいますが、一部の人は、自分の好きな ジャンル においては、かなりの割合でそうとうにディープです。 奥行きのある世界では、「俺なんてまだまだですよ…」 なんてのが、若干の自負心もちらつかせながらよく語られますが、「ぬるヲタ」 も表面的な意味とは違った意味を二重三重に持つ、かなり 「ひと癖ある」 言葉なのかも知れません。
なお対義語は ガチ なおたくで 「ガチオタ」 となりますが、これも表面的な言葉通りの意味もあれば、そもそも他人をガチオタと評する人がたいしておたくに詳しくないという部分もあり、本当のおたくを指す言葉とは 認知 されにくい呼称とも云えるでしょう。 もちろん自称するような言葉でもありませんが、ぬるヲタを相手に俺はガチだという主張をする人もいます (そういう無意味な マウント を取ろうとする時点でガチではない気もしますが)。