同人用語の基礎知識

媚薬

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「体が熱いよおぉぉぉぉ…お願い…欲しい…欲しいのぉ…」 的な 「媚薬」

 「媚薬」(びやく) とは、もっぱら夜の営み、すなわち性行為に用いられる薬品のことです。 本来は強壮剤や場のムードを高めるだけの香料、刺激に対する身体の感度を高めるローション類などを含めたとても広い言葉ですが、エロティックマンガアニメゲームラノベ などにおいては、理性に反して体が性行為を強く求めてしまうような薬品、あるいは 「惚れ薬」(ほれぐすり) や 「愛の妙薬」「魅惑万能薬」 といった現実ではありえない夢の薬をもっぱら指すケースが多いでしょう。

 とくに性行為を体が求めてしまう薬 (催淫剤・発情剤) や惚れ薬などは、自分は好きなのに振り返ってくれない異性あるいは同性がいる一部の人にとっては、喉から手が出るほど欲しい薬なのでしょうし、18禁同人誌 などでは、作品中でいきなり性行為に及んでも 「媚薬の効果」 で説明ができてしまうので、物語を手っ取り早く進めてくれる便利な 設定 としても多用されているといって良いでしょう。

 なお発情とか好意を催させるのではなく、単に 摂取 したものの意識が混濁したり喪失したり、せん妄状態にさせるだけの薬品 (麻酔薬やクロロホルム) やアルコール度数の高い酒なども一種の媚薬扱いされるケースもあります。 しかしこの場合は、相手を抵抗ができない状態に陥らせ好き放題するだけのことであり、催淫剤・発情剤や惚れ薬ではなく、単なる強姦薬・レイプドラッグ (おおむね即効性のある強い睡眠導入剤) だとする意見がほとんどでしょう。 他の媚薬と異なり現実に存在し悪用もされているため、創作物だとしても肯定的に扱うのは避けられがちでしょう。

 また媚薬ではないものの、都市伝説的に媚薬的効果があると語られているもの (例えば酔いが早く回るみたいな飲み物に目薬とか) を、都合の良い媚薬の代用品として利用する場合もあります。 もっとも飲み物に目薬などは実際には何の効果もないので、エロい物語の場合、媚薬のつもりで飲ませたらそれを知った相手が効果があったフリで受け入れてくれただけ、みたいな オチ がついているものも多いです。

いわゆる 「麻薬」 を 「媚薬」 同様に扱うようなケースも

 一方、セックスドラッグなどと呼ばれる麻薬の中には、催淫剤・発情剤に近い効果を発揮するものもあるようです。 この場合、理性が吹き飛んで体が何かを求める、全身の感覚が敏感になってちょっとした接触でも大きな快感や多幸感が得られるなどで、性行為をしたくなる、さらに性行為によって通常では考えられないほどの快感や絶頂を得られることもあるようです。 また一度薬物を利用した快感や絶頂を知ると、それまでの性行為に満足できなくなり、より強い刺激を求めて薬物接種を繰り返すようにもなり、常用・濫用に至るケースも少なくありません。

 もとより麻薬や危険ドラッグなどは違法なので手にするべきではありませんが、創作物の世界ではこうしたドラッグで清楚・純情な女性を 「性を貪るメス」 に堕とす、肉便器 のような存在に貶めるといった筋書きも見られます。 その場合、薬物をキメてするセックスの意味でキメセックス (キメセク) とか、ガンギマリセックスなどと呼ぶこともあります。 肉体的な快感と依存性のどちらが強いのかはともかく、俗に 「薬物と風俗は一度始めるとより強い刺激を求めておおむね全種類制覇する」 などと云いますし、しばしばそうした文脈の作品なども見られます。 しかし、こと おたく同人 の世界では、さほど大きな ジャンル にはなっていないようです。

 ともあれ 「媚薬」 と 「麻薬」 とは根本から異なるものですが、昔から媚薬として伝えられてきた物質に麻薬成分が含まれているものもあったりしますし、ある文明や文化においては、双方に違いはあまりなかったのかもしれません。

 ちなみに日本における媚薬と云えば 「肥後ずいき」 が有名ですが、こちらはハスイモの葉柄の皮を剥き乾燥させたもので、サポニンという成分が生殖器の粘膜部分に刺激をもたらして血流を増加し、性的快感を与えたり高めるとされています。 男女ともに使われますが、もっぱら 「江戸時代に大奥で使われていた」 との話から、女性に対して使う媚薬として知られています。 形状は男性器を模した張形で、大人のおもちゃバイブレーター のように、女性器に挿入して使うものもあります。

創作物における 「媚薬」 の効能

 麻薬は論外として、それ以外にも実際に 「性行為をしたくなる薬」「惚れ薬」 に近い効果を持つ薬は、それなりに存在はするようです。 例えば多くの動物や昆虫は、子孫を残す交尾へと自分や相手の体を向かわせるため、発情を誘う性フェロモンをオス・メス共に体に持っていますし、これに近いものはもちろん人間も持っています。

 もっとも動物ほどの感受性はなく、それが行動に直接大きな影響を与えることも少ないようですが、フェロモン濃度が高そうな脇や股間、首筋、あるいは使用済みの 靴下 の匂いで興奮する人は少なくありません。 また体中に元気が漲る、気分的に高揚する、心臓がドキドキと脈打ち血流が盛んになると、つい体を動かしたくて仕方なくなりヤル気に溢れますから、その時に異性が目の前にいれば、当然性行為もしたくなるのでしょう。

 しかしマンガやアニメにあるように、飲ませたらすぐに体が火照って誰彼の見境なく性行為を求めるようになるとか、特定の対象に惚れ込むような効果を持つものは、さすがに自然界には存在せず、合成に成功したといった信憑性のある話も存在しません。 こうした薬は、性フェロモンなどの生化学的物質というよりは、神話や伝承、創作話を通じて広まった魔術や魔法といったオカルトに近い架空の 「あったらいいな」 的な薬品の 概念 によるものなのでしょう。

 なお時の権力者が有り余る財力にものを言わせ、「媚薬」 なるものの調合や発見を学者らに依頼したり命令したという話は古今東西結構あるようです。 この種の 「誰もが欲しがるものを人間の手で合成したり発見させる」 という話は、東は不老不死の薬を生み出す練丹術、西は黄金を生み出す錬金術が有名です。 媚薬の類も、こうした取り組みの中で偶然発見されたとか、あるいは練丹術師や錬金術師が秘薬として完成させたといった話があったりしますが、いずれにせよ誰もが欲しがる、しかし不老不死の妙薬や黄金の合成と同様、決して実現しない夢の存在ということなのでしょう。

 なお相手や場合によっては、単に若いとか容姿が優れている、大金や高収入、高額な宝飾品といった金銭や贅沢な暮らしがもっとも効果がある媚薬や惚れ薬なのかも知れないっぽいのは、それはそれで切ないものです。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2010年4月3日)
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