「オンリーイベント」 の赤字救済企画のような… 「ボードオークション」
「ボードオークション」「イラストボードオークション」 とは、イラストボード (イラボ) に描かれた一点ものの肉筆 イラスト を、オークションにかけて競り落とすタイプの催し、販売方法です。 「公開オークション」 とも呼びます。
多くの場合、小規模な 同人誌即売会 や 地方イベント、オンリーイベント などで、開催費用を捻出したり、イベント会場 のレンタル料による赤字などを埋め合わせるために、イベントに参加しイラストを描く サークル 側がイベントの 主催者 に協力する形で、イベント内企画のひとつとして行われます。
オークションに掛けられるイラストは、イラストボードに描かれたもの、色紙にサインつきでイラストが描かれたものや、セル画、生原稿など、基本的には肉筆一点ものとなり、その 同人作家 の ファン ならば、よだれがでるような レアもの ばかりです。
オークションで落札された場合、売り上げはもちろんイラストを描いた人のものになりますが、そのうちの一部をイベント主催者側に寄付するような形で支払うケースも多く、それで苦しい 運営 費用の充当を行う場合もあります。
押しも押されもせぬ人気同人作家の誕生…なんてドラマも
この種の 「企画もの」 は、お茶会 や MAD の上映会、コスプレ による寸劇、ショー、グッズ類のフリーマーケットなどと並び、「同じものが好きなもの同士」 が集まる小規模イベントではおなじみです。 「ボードオークション」 がそれら他の企画と違うのは、直接 「お金」 が関わる企画ってことでしょうか。
募集サークル参加スペース数が数十程度の小さいイベントですと、どこかの会議室を借りるにしても予算的にはかなりギリギリですから (サークル参加費や一般入場料をあまり高くしては誰も来ませんし)、このオークションが盛況ですと赤字も解消、イベントそのものも盛り上がると一石二鳥なんですね。
またある程度規模の大きな 「オンリーイベント」 や、勢いのある新しい ジャンル などでは、このボードオークションがきっかけになって、「大注目サークル」 が現れることもあります。 筆者 のいたあるジャンルのオンリーでは、それまでにも一定の評価はされていたものの、コミケ の抽選にずっと落ち続けていて本をあまり売ることができずに実力を発揮できなかったある作家のボードイラストが、オークションが始まるや否や応札が殺到、値段があっという間に2万4万6万8万…と駆け上り、その日のうちに、「このジャンルの人で、このサークルのことを知らない人はいない」 なんて状況にまで到達したのを見たことがあります。
ちなみにその作家は友人だったんですが、自分のイラストが高値になったのを喜んでいるのかと思いきや、「これで俺が欲しい ○○さん のイラストのオークションの入札は、10万円までなら耐えられる」 なんて状況になっていて笑ったことがありますw (結局11万円ほどになって、お金を貸す貸さないになった記憶も…)。 その後その友人のサークルは 「コミケ」 にも当選し参加。 一気に 大手サークル に成長していました。
なんだか 「スター誕生」 を見ているような面白さです。
ジャンケンオークションのような形も
1990年代末になり、Yahoo!オークションなど ネット のオークションが盛んに。
それに伴い、「ネットオークション」 を嫌う人たちから、「イラストボードオークションは確かに盛り上がるが、転売屋 によるネットオークションを是認していると取られかねない」 なんて声も聞かれるように。 ということで、値段を競りで吊り上げるのではなく、純粋に欲しい人たちで奪い合う、勝ち抜きジャンケン大会で販売するスタイルも増えています (まぁジャンケン大会やビンゴ大会も、昔からありましたが)。
この場合でも、人気のある作家のイラストには参加者が殺到しますから、「いま、どのサークルが一番人気があるのか」「信者 がついているのか」 が、かなりはっきりと分かる独特の催しになってますね。 日ごろ 「あなたのサークルが一番好きです」 なんて声を掛けてくれる一般入場者の 「本音」 がわかったりもして、面白いというか、ある意味残酷というかw、独特の駆け引きや空気読みが充満する異空間になっている場合もあります。