機能的でもない、いかにも作り物っぽいデザイン… 「萎え紐」
「萎え紐」(なえひも) とは、アニメ や マンガ、ゲーム などで キャラクター が着用するコスチューム、とくにアダルトゲームにおける素材や構造が謎な 制服 (謎服) にしばしば存在する、機能や存在理由がよくわからない リボン や紐状の何かのことです。 「謎紐」 とか 「例の紐」、「形状記憶リボン」 と呼ぶこともあります。
学校の制服などで、首元に結わう ネクタイ や リボンタイ といった意匠や アイテム はおなじみです。 制服やコスチュームによってはそれ以外にもリボン状のデザインやパーツが入ることもあります。 こうした衣服のパーツは、現在は純粋なデザインのための物でも、その成立過程では、当時の服飾文化や生活様式に則った役割や存在理由がちゃんとあります。
しかし一部の 成人向け 美少女ゲーム・エロゲーなどでは、どう考えてもそうした背景がなさそうな、それどころか実際に身に着けたら不都合が生じるような見栄えだけの 「取って付けたようなデザイン」「デザインのためのデザイン」 のリボンや紐パーツがあちこちにつけ足されたりします。 ありがちなのは腰回りについた細長い紐状のリボンや巨大なリボンなどですが、日常使いする現実の服にそんなものがついていたら、不便だったり思わぬ事故の元でしょう。
またこれら紐状リボンが重力や物理法則を無視してやたらとひらひら舞い踊っているかのような描写がされることから、「わざとらしくて 萎える」 と、揶揄する言葉として使われるようになりました。 制服ではなく、髪の毛 を結うためのリボンでこの表現を使う人もいます。 なお 「萎え」 は 「萌え」 の対義語であり、「萌え目的で入れた謎紐でかえって萎える」「あざとすぎて逆効果」 みたいな侮蔑の ニュアンス もあります。
とはいえ、リボンはくねらせ、躍らせたくなるもの…
絵 を描く方からすると、こうしたリボンの存在はありがたいものです。 ちょっと動きを与えるだけで躍動感が出ますし、一枚ものの キャラ絵 を描く場合にも、リボンを躍らせることで画面の空白部分を埋めることができたり、画面全体を華やかにすることができたりします。 同じような理由で身体を腰のあたりで捻ったり上半身を傾けるなどして躍動感を演出 (捻りポーズ/ コントラポスト) したり風が吹くなどで、セーラー服 やブラウスの襟をたなびかせたり、スカートを揺らすこともあります (それだけ揺れるほどの体の捻りや風が吹いているなら髪の毛とかすごいことになるはずだけど、なぜかならない…)。
一方で、現実ではありえない、いかにも イラスト っぽいありふれた表現でもあるため、同じく現実ではありえない 乳袋 (上着がおっぱいを包む袋のように描かれる) や 「謎構造」(見てくれはいいけれど、よく見たら服としての構造を無視した作りになっている) などと並び、あざとさとか 作者 の服飾的な知識のなさが感じられる手法とも云えます。
なおこれらを含めた制服風の 「謎服」 の成立過程には様々な理由があり、詳しくは謎服項目でご説明していますが、バブル時代の学校制服の DC ブランド採用によるおしゃれ化とか、未成年の記号としての制服を成人向け作品で扱うことに対する様々な 自主規制 など、「単に作者が服飾や衣服の構造に無知なだけ」 ではないという点は、押さえておきたいポイントです。