描けば描くほど絵が変になる…「下書きの方が上手く見える問題」
「下書きの方が上手く見える問題」 とは、絵 や イラスト を描く際に、ラフや 下書き の段階ではめちゃくちゃ上手く描けた、会心の出来だと思うものの、いざペン入れや トーン の貼り付け、着色などを行うと、だんだんと思っていたのと違う絵、期待外れの絵になってしまうことです。
単に荒削りの魅力が失われるという意味もありますが、通常ラフや下書きなどは輪郭線などを複数の線で当たりをつけながら描くため、ペン入れなどで 「一本の線」 にまとめる中で、ラフや下書きでは見えなかったデッサン狂いや粗が、はっきりと浮き上がって見えてしまうのが大きいのでしょう。 また迷い線などがいくつもあってぼやけていると、見せかけの情報量だけは増えて表現がリッチに見えたりしますし、人はそこに自分に都合の良いものを見いだす傾向があります。 すりガラス (磨りガラス) の向こうにいる方が、想像力が掻き立てられて良く見えたりもするものです。
やむなくペン入れした線を消して描き直したり、パソコンで作画ならば主線入れ前の段階に戻って線を引きなおしたりと調整や修正を行いますが、やればやるほどドツボに ハマり、直せば直すほどおかしな方向に進んでいってしまいます。 例えば キャラ の目の瞳部分のわずかな修正で視線が泳いでしまったり、体の線の強弱で体が曲がって見えてしまったり、服のシワが不自然な形になってしまったり。
結局散々いじくりまわした後に最初のペン入れに戻って見ると 「あれ?こっちの方がいいじゃん、何で修正しようとしたんだろうか」 と頭が混乱したり、そのうち 「もう最初から描きなおした方が早い」 となって、あれだけ満足していたラフや下書きの破棄に至る場合もあります。 こうなるとモチベーションも喪失しますし、締め切り が近いと大きなタイムロスともなります。
根本は 「基礎ができていない」 から
筆者 もこの状態に頻繁に陥りますが、これは要するにデッサンや構図決めといった絵の出発部分における基礎的な訓練が十分にできていないからなのでしょう。 もちろんどれほど良質な基礎的訓練を積んでいる絵が上手い人でも迷う時は迷うようなのですが、その頻度を大きく減らせることができればそれだけたくさんの絵を描けますし、培った基礎を土台により高度な絵やイラストを描き上げることもできるのでしょう。
学ぶことに年齢は関係ないとは云え、年を取るとどんどん億劫になりますから、まだ若い方は信頼できる先生について訓練するか、今は ネット などでも優れた講座や解説がありますから、長期休暇の際などに一度どっしり構えて学び直してみるのも良いかもしれません。 美大やデザイン学校といった専門的な高等教育機関で学ぶのは無理でも、生徒や学生、若い社会人のうちなら学校の 漫画研究会や同好会(学漫) といった サークル や地域の お絵描き 教室などに通うだけでも、独習するより何倍も効率が良いものです。
手の形とか腕や足を組んだ状態、立ち絵 の体全体のバランスなど、ある程度記号的に形が決まったものが上手く描けない、その時々で描写に大きな振れ幅があるなどは、実物をちゃんと見ていない (だからデフォルメもできていない)、あるいはそれを含めて全般的に初歩的な修業や描き込みが足りない状態だと見て良いと思うので、描きづらいと感じる部分があるなら、そこを集中的に練習してみるのも良いかもしれません。
現在は 著作権 に問題がないトレスが自由にできるポーズ集なども様々出ていますし、そもそも人のポーズなどに著作権はないので写真やイラストを参考程度にトレスするのも問題はないと思いますが、トレス (トレパク) に対する厳しい目は強まる一方ですし、何より絵を描くたびにトレスや模写の参考元を探すのも大変です。 自分で思うような絵が描けると云うのは本当に楽しく幸せなものなので、やる気や時間があれば頑張ってみるのも良いでしょう。