いくたの太公望が腕を振るう…「釣り堀」
「釣り堀」(つりぼり) とは、ネット の世界においては、いわゆる 「釣り」 がよく行われる場所のことです。 すなわち釣り行為を行う人が集まり、釣られる人も大勢現れるネット上のコミュニティを指します。
ネットスラング における釣りとは、掲示板 や チャット、ブログ のエントリーなどで、おかしな意見発信、突っ込みどころ満載 の 逆張り や奇矯な 書き込み などをことさらに行い、他人の注目や反応を釣ることを指します。 レス (返信、レスポンス) を 「釣る」 ことを目的としていることからこう呼ばれています。
こうした行為は 煽り や 叩き、荒らし などと並び、2ちゃんねる など 殺伐系 のコミュニティでは日常の風景のようにもなっていますが、その後他のネットコミュニティやサービスにも伝播。
なかでも一部参加者の怒りの沸点が低いと評判のコミュニティ (例えば 「発言小町」 など) や、利用者が多いことから情報 拡散力 が強く ネットリテラシー の低い人も数多く参加している ツイッター などは、釣果も上がりやすいとして、数多くの釣り自慢・太公望が 「釣るための質問や回答」「釣りのための ツイート」 を、せっせと書き込んでいるようです。
釣り行為がバレるとかっこ悪い…技術を磨く釣り職人
内容的には、明らかな事実誤認やデマを自信満々に書き込んだり、ひとりよがり・独善的な意見をさも当たり前・常識のように主張したり、世間でみなが支持しているものを批判したり、逆に批判されてるものを擁護するようなものが多くなっています。 見ている方はついつい反論したくなりますから、結果的にレスがたくさん釣れることになります。
ただしあまりにあざとい書き込みは、「釣り針 がデカすぎる」 などと看破されて揶揄され、相手にされず スルー されてしまう場合もあります。 これは釣り人 (釣り職人) にとっては恥ずかしいことですから、そうならないよう、相手の心に 刺さる ような シチュエーション と文章を、必死に練って技術を磨いている場合もあります。
本来ならば釣り行為になど関わるだけ無駄な話ですが、一方で誰も反論しなければ、あたかもそれが正論のような形でネットの履歴に残る場合もあり、あえて釣り針に食いつくような行為もあります (いわゆる ピラニア)。 また釣り職人の技術や能力が低すぎると、釣ったつもりが逆に釣られて袋叩きになるケースもあったりして、外から見ていると興味が尽きない一大決戦になっている場合もあります。
なお一般的な釣り堀の本来の意味は、魚釣りを娯楽として手軽に楽しむために、人工的に作られた水面 (陸地に造成したり、川や海の一部を区画したもの) を用意し、その中に魚を放流した施設となります。 利用客は料金を支払って釣り遊びに興じることになります。
そのため、ネットの釣り行為にひっかかる未熟なネット利用者を、ことさらに釣り堀や生け簀に放流された哀れな魚扱いする場合がある一方、「釣り堀のように釣りやすい場所でいくら釣れても、釣り師として一人前とはいえない」 のような、釣り師を罵倒する意味で使う場合もあります。 この場合は、釣るのが難しい場所 (利用者のリテラシーが高い場所) で釣るほうが立派で素晴らしいといった、独特の感覚が生じる場合もあります。