フラグ信じて突進したら見事玉砕! 「ダミーフラグ」
「ダミーフラグ」 とは、フラグ (その先のストーリー展開やゲーム内の状況が大きく変わる節目、分岐点になる 「変数」 と、それによる 「目印」 のようなもの) の 「偽物」 のことです。
通常 「フラグが立った」 となると、その方向へ向けて不可逆 (分岐され後戻りできない) で物語が進みますが、フラグを破壊する フラグクラッシャー が登場してそれを無効化したり、物語でフラグの主と絡む別の キャラ が元のフラグを打ち消すフラグを立てる (死亡フラグ に対する 生存フラグ など)、さらにフラグの主の 「勘違い」 などを後で謎解き、ネタ ばらしして効果を打ち消すなどがあります。
こうした 「ダミーフラグ」 は、ヒーロー ものや恋愛もの、物語が二転三転し、逆転につぐ逆転をする ゲーム や アニメ、マンガ などで頻繁に登場しますが、後で何の謎解きもない、完全な偽フラグ (嘘のフラグ) は、あまりありません (作者 がフラグの存在を忘れた…なんてケースはありますが)。 フラグや伏線を完全に裏切ってしまっては、その後のストーリー展開に信頼が置けなくなってしまうからで、それではと、「確かに嘘だけど、まるっきりの嘘八百ともいえない」 などと、微妙なラインを攻める場合もあります。
せっかく期待したのに…フラグ無視かよ! いえいえ実は…
例えば 恋愛フラグ の代表として良く知られる 「廊下で出会い頭に衝突して出会う」 なんてシーン。 これも 主人公 と準主人公とがこの形で出会うと、揺るぎのない 「恋愛フラグ成立」 となりますが、その後主人公なり準主人公なりが、とても恋愛の対象とはならない別のキャラと同じように何度も廊下で衝突して、「そういうキャラなんだ」 なんて状態になると、これはフラグの無効化がされてしまったといってよいでしょう。
あるいはバレンタインで立派なハート型の手作りチョコを貰う。 これなどは、「恋愛フラグ」 というよりは恋愛成就そのものとも思えますが、後で学校のクラスの男性全員に同じようなプレゼントをしていた、単なる 「義理チョコだった」 なんて形でフラグを蹴る場合もあります。 もっともその時に、「自分のだけ、チョコに名前が入ってる」 なんて要素がさりげなく提示されて、将来の恋愛大成就を予感させる 「恋愛フラグ」 となっている場合もあります。
多くのフラグが様式化され記号化されている中、作者にしてみたら、フラグで プレイヤー や 読者 の 「期待値」 をコントロールするのは、わりと容易です。 しかしそれに頼りきりでは 「陳腐な物語」「意外性のない退屈な物語」 になってしまいます。 「フラグを裏切る」 というのは読者の意表をつくものすごく簡単で極めて効果の高い方法ですが、これも1度やってしまうと、もう読者やプレイヤーはフラグを信頼してくれなくなり、その後同じ手は二度と使えなくなります。 「フラグ無視」「伏線無視」 を 「物語無視」 とし、「ご都合主義だ」「予定調和だ」 として毛嫌いする人も多いものです。
「後で ネタバレ をするダミーフラグ」 は、フラグ無視の禁忌を犯すことなく、ギリギリのところの効果を狙う、ある種日本的なストーリー作りの お約束 とも云えるでしょうか。 逆に 「この 作者 は、このフラグを後でどうダミーフラグとして処理するのか、その 「言い訳」 が楽しみ」 などと、かなりスキマ的な楽しみを持っている ファン などもいます。 毎回が 「恋愛フラグ」→「実はダミーだった」 を繰り返す 「ラブコメ」 などは、これがその肝だったりもします。