頭髪・制服着崩し・私物持ち込み…それ学校の勉強に関係ないでしょ! 「風紀」
「風紀」 とは、社会やある集団の内部においてそこにいる人々が守るべき道徳的・倫理的な秩序やけじめ、とくに男女関係や性的なあれこれ (不純異性交遊)、それに影響を与える可能性のある日常の身だしなみやふるまいに関するルールや規律・統制のことです。 「風」 は風俗や習わし、ある時代や地域に根づいた人々の気風を指し、「紀」 は筋道や規律、物事を秩序立てるための決まりを意味します。 習俗上の秩序という意味ですね。 状態をあらわすだけでなく、そのために 共有 されるあれこれも幅広く指します。
元々は中国の古典にも見られる 概念 で、政治や社会の乱れを教育や戒め、刑罰によって 縛る だけでなく、そのために君主や為政者らが守るべき徳目としての文脈で用いられてきた歴史があります。 例えば 「上行下効」 のように、目上の者の言動が目下の者たちのそれにも影響を及ぼす、あるいは善い教えによって人々を導き (教化) 法制や道徳や礼儀などの秩序によってそれを守らせることではじめて正しい社会が保たれるといった考え方です。 逆に云えば君主や為政者らが乱れれば民も乱れて社会も乱れる、だから上の者ほど率先して身を正し範を垂れろというわけですね。
似た言葉に 「綱紀」 があります。 こちらは太い網と細い網をあらわし、大きな法律と細かい規則、国や組織を正しく円滑に統治するための基本となる法や規則、あるいは規律や秩序を意味する言葉です。 一般にもよく使われる 「綱紀粛正」 は、倫理観を高め身を引き締めて規律・秩序を正して守りましょうといった意味になります。 こちらも風紀における上行下効と同様、下々の乱れは君主や為政者らの乱れに原因があるとの思想や ニュアンス があります。
これらの考え方は様々な古典的思想書や宗教の教え、あるいは家訓などにおいて 「其身正 不令而行」 とか 「其身不正 雖令不從」「子帥以正 孰敢不正」 といった形で繰り返し繰り返し述べられ、故事成語あるいは格言などとして用いられています。 君主といった政治的な立場だけでなく、現在ではほとんど 老害 のたわごとのような扱いもされがちな 「長幼の序」「敬老」 も、単に偶然早く生まれただけの年長者を年下は無条件で敬えという話ではなく、年長者は人生の先達として年少者の手本となれ、そうすれば自然と敬われるという話とセットで考えるべきものでしょう。
日本では明治時代になって庶民の間にも広まる
風紀という言葉や概念は古くから日本でも使われてきました。 江戸時代には質素倹約と風紀の乱れを理由に庶民の娯楽が度々禁じられてきましたし、将軍や大名らはその模範たろうと色々と苦労をしています。 それが現在のように一般の庶民らにまで広まったのは明治以降の近代化の過程で、学校教育や軍隊組織における規律の維持を語る際に盛んに使われるようになって以降とされます。
戦前 から戦後にかけては、学校 における生徒・学生らの生活態度、マナー、頭髪、服装、学業とは関係のない私物の扱いとか、男女交際などを取り締まる文脈で風紀という言葉が便利なものとして頻繁に使われるようになります。 併せてそれらを取り締まる立場となる 「風紀委員」 といった組織や表現も一般化しました。
とくに 「風紀委員」 は、生徒の立場にあって品行方正をモットーに校則の遵守を呼びかけたり、制服 の着用方法や生活態度を同じ生徒らに対して正す役割を担い、多くの学校で今も存在しています。 マンガ や アニメ といった創作物においても、しばしば学校や先生 (体制側) の手先・番犬とか、あるいは学校や生徒らを支配する権力者として描かれる 生徒会 や 生徒会長 らの支配体勢や意志の実現を影で支える監視・取り締まりの実働部隊、一種の秘密警察や私兵のような誇張した扱いで描かれたりします。 「風紀」 といった文言が記された 腕章 を身に着け、髪型 や 髪色 がどうの スカート の長さがどうのと口うるさく注意をするといった描写がおなじみです。
夜職でよく使われる 「風紀」
やや誤用に近い使い方として、人の言動や 雰囲気、個人に対する形容詞のような使い方もあります。 「風紀が乱れた顔」 みたいな表現ですね。 類似の使い方は 治安 や 民度 といった接近する概念の言葉でもよく使われます。 不穏 みたいな言葉が使われることもあります。
学校以外の社会人の間でもモラルや職業倫理の向上、業務上の不正行為を防ぐといった文脈で風紀がしばしば用いられます。 一方、水商売や風俗関係の場での風紀は、男性従業員と女性従業員・キャスト (嬢) との恋愛関係や恋愛関係に基づく肉体関係を指す言葉として用いられることがあります。 こういった業界において 「店の女に手を出す」 は一般にかなり強めの御法度・禁忌 となっており、当然ながらそれなりの処罰を受けることになるようです。
これは 「店の売り物に手を出した」 という倫理的というか仁義に反する問題もさることながら、店内で恋愛関係が生じることで女性キャスト同士の関係がこじれたり、その恋愛が揉めたり終わった時に女性キャストが退店しがちという点も含め、店の円滑な経営を阻害あるいは破綻させる可能性がかなり強い行いだからです。 いわゆるアイドル業界の恋愛禁止もこれの延長線上にある話で、必ずしもスキャンダルがどうのとかイメージ戦略がどうのとか ファン のためという訳ではありません。 色恋沙汰にはキャストらに対する経営側の統制が利かなくなってしまうほどの力があるからです。





