並んだ・並んだ・赤青黄色… 「髪色」
「髪色」「毛髪色」 とは、人間 (ヒト) の 頭髪 の 色 のことです。 実在人物・創作上の キャラクター ともにその人物の外見上の特徴や個性をあらわすもっとも大切な要素のひとつであり、とくに第三者からの第一印象に強い影響を与えます。 創作上の人物の場合、実在の髪色を写実的に表現したものから、色彩心理学的に色から受けるイメージをキャラの個性や差別化、目には見えない心の内を視覚化するものとして扱うなど、様々な意義を持っています。 例えば黒い髪色なら清楚でおしとやか、赤い髪色なら情熱的で活動的といったイメージですね。
マンガ や アニメ のキャラクターでは青や緑など、人間 (ヒト) や哺乳類の体毛としては、自然界にまず存在しない色もよく使われます。 また日本の作品で登場人物も日本人ばかりなのに、金髪 や 赤毛 など、人口のほとんど全てが 黒髪 や 茶髪 で構成される日本人 (アジア人) とは思えない髪色も当たり前のように登場します。
こうした色使いについては、黒髪の中にあるわずかな色味や光の反射による色の揺らぎを視覚的に誇張・デフォルメしたものだったり、キャラクターを区別するための記号的な使い分けの機能として用いたもの、あるいは神話や宗教において、自然現象・物理現象を 擬人化 した際のキャラ造形の影響も考えられます (例えば火の神が赤い毛だったり)。 アニメの場合、テレビが 白黒 からカラーになって普及する頃に、ことさらに色を意識した キャラクターデザイン がされたケースもあります。 とはいえこれらは、前述した色から受けるイメージをキャラの性格付けのために利用していることと複合もしており、別に人種や民族の違いを表現するためだけに使っているわけではありません。
金髪は白人へのコンプレックスや憧れの発露?
海外のマンガファンなどが、日本のキャラに金髪や色白、青い目 (金髪碧眼) が多いのは白人への憧れやコンプレックスがあるからだとの説が何度も 定期的 にされますが、そのつもりで描いている人はそう多くないような気がします。 そもそもモノクロマンガの場合、ベタ塗りすると黒髪以外には見えず、それ以外の髪色を表現するには白抜きくらいしかなかった部分もあります (画材 として スクリーントーン が使われるようになったのはずいぶん後になってからです)。肌の白さは飛鳥時代に大陸から白粉文化がやってきてからですし、鼻を欧米人のように高く描くような文化もさほどありません。 ただし舞台が西洋の作品がヒットし、その作品の影響を受けて類似の表現を日本人キャラに対して用いることはあったでしょうし、戦後にアメリカの豊かな文化が日本に入ってくる中で、それらを好意的に作品創りに活かした人も少なくないでしょう。 ただそれを白人コンプレックスだとまで云われるとさすがに行き過ぎな気がします。
二重まぶたや大きく描かれる目、女性の胸のサイズまで白人コンプのなせる業みたいな扱いがされますが、ごく一部の欧米人から見て日本人の顔や体格がどう見えているかの写し鏡のような感じで、あまり良い気分はしないでしょう。 というか、それほど金髪碧眼が多いわけではないと思うのですが、世界的に大ヒットした作品にセーラームーンとかドラゴンボールとか、見た目がそういうキャラがいたせいなんでしょうけれど。
なお当たり前の話ですが、実在人物の髪色がその人の性格や内面をあらわすものでは全くありません (ただし一部の髪色が歴史や宗教のあれこれで差別されたり、それによって様々なイメージ付けがされることもあります)。
メラニン色素の量と種類によっておおむね決まる髪色
現実の髪の色はメラニン色素の量と種類によっておおむね決まります。 紫外線が比較的強い地域に住む人々はメラニン色素が多く、またユーメラニン (真性メラニン/ 黒や茶褐色) が多く含まれ、その結果、黒髪や濃い茶髪などになります。 逆に紫外線が弱い北方地域に住む人たちは、フェオメラニン (赤褐色から黄色) が多く、黒よりは茶といった明るい髪色が多いイメージです。この他、生まれつきメラニン色素が非常に少ない個人的なアルビノ(眼皮膚白皮症) によって変化したり、同じ人間でも年齢によって髪色が変化 (加齢による 白髪 とか、紫外線や海の塩分などによる焼けや 病気 などによる変色もあります。 もちろんヘアブリーチといった脱色や染髪によって色を変えたり、ウィッグ (かつらや部分かつら、付け毛) で色を変えることもあります。
一方、一風変わった髪色でいえば、整髪料や光線の加減で、色味を帯びた反射や光沢を生じてそれが色味として判断されることもあります。 場合によっては毛髪 (外部に露出している毛幹表面の構造) によって玉虫色に様々な色に変化する場合もあります。 また単に色の種類だけでなく、明るさや複数の色が諧調 (グラデーション) している グラデ髪、単色の塗りつぶし (単色髪・ベタ塗り髪)、ツートンカラーやそれ以上 (多色髪) まで、髪色の組み合わせによるバリエーションも豊富です。 一般的には人やキャラの髪は色と長さ、形でヘアスタイルが決まり、特定の組み合わせは性格の傾向とともに類型化もされて、萌え要素 ともなっています。
これらはキャラの個性 (あるいはキャラを見分けるための記号) とも不可分なものとなっていて、ごく一部の例外を除けば、マンガ・アニメのキャラの髪型や髪色が途中で大きく変わることはありません。 アップヘアのキャラが一時的に髪を下ろしたり風呂上がりの時だけいつもと違う髪型になるくらいはあっても、ロングヘアだった女の子がバッサリ髪を切ってその後ずっとショートカットのまま過ごすなどは滅多にありません。 例外があるとすれば、一代記 (人の 一生 を描く作品) や回想シーンなどでそのキャラが小さな子供の頃の姿が出てきた時くらいでしょうか。 髪型を大きく変えてしまっては、別キャラになってしまうケースが多いからでしょう。
代表的な髪色
黒髪 | 黒い髪の毛のことです。 日本人にもっとも多い髪色で、一般に 地味 な髪色だとされがちです。 一方で単に黒いだけでなく深みのある黒、艶と光沢のあるものは非常に美しい髪色とされ、日本はもちろん東アジア全体で美の象徴としても扱われます。 とくに長くて真っすぐなそれは黒髪ロングなどと呼ばれ、清楚・おしとやか・健康的な 清潔感 や若さを象徴するものとして認識されているといって良いでしょう。 紫外線の多い南方地域に多い髪色となります。 |
茶髪 | 黒に近い褐色の茶から濃いオレンジ色までを含む、いわゆる茶色っぽい髪色です。 含まれる彩色によって鹿毛 (赤) や栗毛 (黄) と呼ぶこともあります。 日本人にも比較的多い髪色ですが、1990年代後半に生じたアムラー現象や ギャル ブームによって、染髪された髪色として一気に広がりました。 黒髪に比べて明るく活発で柔らかなイメージがあります。 蔑称としてうんこ色とも。 日焼けした肌 ともども、ギャルと同様に チャラ男 の代表的な特徴のひとつでもあります。 |
黒茶髪 | 作中のキャラの髪色が黒髪と茶髪だけで構成されている作品を指す言葉です。 具体的な特定の髪色を指す言葉ではありませんが、前述した黒髪や茶髪を含め、おおむね暗い黒茶系統色の全体をこの言葉で表現することもあります。 |
栗毛 | 茶色や黄色味がかった褐色の毛のことです。 もっぱら馬の毛色で使われますが、人の髪色で使ったり、栗毛色といった表現でそれ以外のものにも用いられます。 茶系統の馬の毛色には鹿毛もありますが、こちらは黄ではなく赤みがかった褐色となり、人の髪色の表現として使うことはあまりないでしょう。 黒髪が加齢によって白髪になる際に栗毛っぽくなることもあります。 明暗やグラデーションによっては、金髪や黄髪との区別が難しくなることもあります。 馬をはじめ哺乳類の体毛によくある色であるため、ケモノ などでは好んで使われます。 |
金髪 | 金色に輝く髪の毛のことです。 メラニン色素が少なく、紫外線が比較的少ない北方地域に住む民族に少数現れる髪色です。 その他、アルビノ (白子症) の傾向を持つ者も多く、目の瞳の色も一緒に青くなる場合もあります。 これは一般に金髪碧眼と呼び、肌色 の白さとともに、一部の白人に特徴的なものだと見なされますが、日本人のアルビノにも同じような特徴を持つ人がいます。 一般に高貴で優雅な髪色とされますが、黒髪がほとんどの日本においてはヤンキーや不良が脱色した過激・ド派手な髪色との認識もされます。 近年では若者から高齢者まで、ファッションとして選ばれるケースも増えています。 |
銀髪 | そのまんま銀色に輝く髪色の他、白髪の別称として扱われることもあります。 金髪同様に高貴で優雅な髪色とのイメージがあり、また知的で冷静、孤独や悲しみといったイメージを持つこともあります。 褐色肌 と組み合わせることもあります。 人以外の種族 (人外) に用いられることも多いでしょう。 |
赤毛 | 赤、もしくは赤みがかった茶色の髪色です。 赤髪やジンジャーヘアと呼ぶこともありますが、日本では赤毛との呼称の方がポピュラーでしょう。 情熱・意志の強さ・孤高・陽気さ、あるいは明るさの中の葛藤や苦悩と云った部分が表現されることもあります。 北方地域に住む民族に比較的多い髪色で、歴史的・宗教的なあれこれで、実在人物の赤毛には差別的な扱いをイメージすることもあります。 そのため、容姿上のコンプレックスとして描かれることも多いでしょう。 |
青髪 | 頭髪が青いこと、寒色系の色をしていることです。 人を含む哺乳類では自然界にほぼ存在しない髪色であり、染髪やウィッグ、いかにも創作されたキャラの髪色との認識がされています。 理知的で高貴、ちょっとクールで無口な印象を持ち、創作物では主人公のライバルや敵として描かれることが多いかもしれません。 |
緑髪 | 青髪と並び、哺乳類では自然界にまず存在しない髪色となります。 赤や青を含めた RGB 3色の中では優しいイメージがあり、創作物中でもバランスの取れた性格のキャラに付与されることが多いかもしれません。 また色というより光線の反射の加減で緑色っぽく見える (玉虫色) のを強調している色使いだとする見方もできます。 緑色キャラはそう多くはありませんが、日本の おたく の歴史における重要なキャラが結構いて、その存在感は小さくはありません。 |
紫髪 | 赤と青の中間である紫色の髪の毛です。 一般に紫は高貴な色とされますし、創作物においては黒髪 (の中の微細な色彩) の強調表現として用いられることも多いかもしれません。 また日本においては中高年女性の白髪染めに伴う染髪でひと昔前から比較的見かける髪色でもあり、街中で遭遇してもさほど違和感のない髪色と云えます。 |
ピンク髪 | 薄い赤や紫がかった色を含め、ピンク色っぽい髪色を指します。 桃色や桜色と呼ぶこともあります。 天然色というよりは染髪による一時的なヘアカラーといった存在感が大きいかもしれません。 創作物にあっては、パステル調のピンクならば愛情や温かみ、癒し、メルヘンといった印象が、ビビッドで鮮やかなピンク、とくにショッキングピンクのようなはっきりとしたピンクの場合はキュートでポップ、お色気やちょっとエッチな印象もあります。 |
オレンジ髪 | オレンジ色の髪色です。 茶髪に近いもの、グレー (灰色) やベージュっぽいもの、赤やピンクに寄せたものもあります。 染髪ではよく発色する色とされ、明るく元気なイメージから人気があります。 |
黄髪 (黄色髪) | 黄色い髪の毛のことで、黄色髪と呼ぶこともあります。 金髪 (あるいは栗毛) とは似て非なるものですが、同じような扱いがされることもあります。 鮮やかな色使いならポップな絵柄に合います。 陽気でちょっと変わり者といったキャラ造形に似合うかもしれません。 人間以外のものの擬人化キャラの髪色でもよく見かけます。 |
白髪 | 白い髪色のことです。 生まれつき白っぽい髪色の人もいますが、もっぱら老化によって髪色が白くなることを指すことが多いでしょう。 子供や若者の場合は若白髪と呼ぶこともあります。 また何らかの大きなストレスによって一気に白髪化が進むといった心理描写の視覚表現に用いられることもあります。 |
灰髪 (灰色髪) | 灰色の髪色のことです。 灰色髪やアッシュと呼ぶこともあります。 銀髪や暗めの白髪との区別はあいまいですが、明確な違いが分かりやすい黒髪に近いダークグレーでよく使われるかもしれません。 色味はないかかなり薄く、落ち着いた髪色のためおとなしく大人っぽいキャラでよく用いられるでしょう。 |
ことりベージュ | 牛乳たっぷりのミルクティーっぽい、明るく薄くてくすんだベージュの髪色です。 メディアミックス作品 「ラブライブ!」 に登場する作中アイドル グループ μ's (ミューズ) メンバー南ことりの髪色とキャラ名からきた髪色です。 |
なお髪の毛がない場合は髪色というくくり方はされず、髪型としての区別がされるだけとなります。 毛髪が全て抜け落ちるか剃り上げて無毛となったツルツル坊主頭 (スキンヘッド) も、便宜上ヘアスタイルとして認知されることが多いでしょう。