見栄えがする 「グラデーション表現」
「グラデーション」 とは、色 や明るさ、透明度の連続した濃淡の諧調変化のことです。 英語の 「Gradation」 と同じで、略して 「グラデ」、日本語では 「連続諧調」 とか単に 「諧調」、あるいは 「ぼかし」 と呼ぶこともあります。
また特定の2色とか3色、あるいは明暗のみで行うグラデーションは 「2色グラデ」「3色グラデ」、それ以上、あるいは虹のように様々な色や明るさが複雑に絡み合うものは 「虹色グラデ」(虹色グラ) とか 「多色グラデ」 と呼ぶこともあります。 ここでいう虹色は、文字通りの虹色の7色を使うという意味だけではなく、様々な色という意味でも使われます。 具体的な色名を使った呼び方もあります。 例えば赤と青なら 「赤青グラデ」 といった具合です。
色のグラデーション (色グラデ) の他、明るさのグラデーションもあります。 光のグラデーション (光グラデ) は 「フレア」、影のグラデーション (影グラデ) は 「パラ」 と呼びます。 またグラデの形をあらわす言葉として、直線的なグラデーションは線形グラデ、円形のそれなら円形グラデといった感じです (使われる世界によって同じような処理でも様々な呼び方があります)。
なお文字の世界や日常会話の中でも、色々な要素が混ざり合う姿をグラデーションとかグラデ模様と呼ぶなど、広く一般でも使われる言葉ともなっています。 逆に混ざり合っていながらそれぞれが独立したような状態は、同じく絵画技法のそれにならって 「モザイク」 と呼んだりします。
グラデ処理を原稿段階で行うか、印刷段階で行うか
グラデーションは手書きの 絵画 や イラスト、パソコンを使った CG、あるいは 印刷 や アニメ といった 画像 を扱う世界では非常にありふれた技法であり言葉です。 それだけにそれぞれの業界ごとに同じような処理を異なる言葉で呼んだり、同人 の世界で 趣味 として 絵 やマンガを描く人たちの略称や俗称などもあって、専門用語ベースで捉えるとかなりわかりにくいものでしょう。
例えば印刷の場合、原稿 の段階でグラデ処理をするのか、印刷の段階で刷り処理として行うのかによっても、言葉の使われ方や指示の仕方が変わります。 また実際は諧調に変化がないけれど、網点 やドットの密度によって 疑似的 なグラデーションを行う場合もあります (タイリングとかジャギ消しとか)。 このあたりは全てを一度に理解するのは難しいので、最初は 「グラデ = 色が何となく連続して変わってる」 くらいの理解でも問題ないでしょう。
同人の 界隈 で印刷処理として行うグラデでもっともよく見られたのは、便箋 の印刷におけるグラデ便箋 (虹色のグラデーションによって印刷された便箋) かも知れません。 印刷業者 に頼んで行う場合もあれば、プリントゴッコ (プリゴ) で印刷インキを調整しながら自分で作ることもありましたが、手軽に作れるものでもあるので、非常になじみ深いものとなっています。
カラーグラデの場合、どのような色をどう変化させて選ぶかで美しさも変わる
色相関図で見る、オレンジ → 青グラデ の色の変化 |
2色グラデの場合、その2色に何を選ぶかによって見た目の美しさに違いが生じます。 一般に 補色 (反対色 (例えばオレンジと青とか) を選んだ場合、その中間色、境目にグレーっぽい彩度の低い濁った色が生じてくすんで見えることがあります。
これは一般的な RGBカラー による色相関 (カラーサークル (右図) で見るとわかりやすいのですが、オレンジから補色である青へと一直線に変化させると、中央の白い部分を通ってしまうためです (実際は右図ほど極端には出てきませんが)。
この場合は、色の補完方法で 「知覚的」 を選んだり、色相関の周囲をぐるっと回るように色を選んで (オレンジ → 緑 → 青 とか)、中間となる緑部分を小さくしてバランスを取ると防ぐことができます。 2色グラデでも、実際は3色グラデにするわけですね (サークルを逆方向に廻るなら、オレンジ → 赤 → 紫 → 青 の4色とか)。 あるいはそれぞれの色の濃淡・混ざり合う部分が白にならず、三角形状に色がきっぱり別れたサークルが色パレットに反映するツールを使う手もあります。
このあたりは、グラフィックツールでグラデの色を選ぶ時に細かく調整できますので、彩度やコントラストが低くグレーっぽくみえる部分が少なくなるよう、全体を見ながら作成するようにすると失敗しづらくなります。 同人作品などでは、キャラクター を構成する色などは決まっていることが多いでしょうから、グラデで好きな色が自由に使えるわけではないでしょう。 どの色を選ぶにせよ、このあたりが頭に入っているとくすみを減らすことができるかも知れません。
見た目がリッチになる一方、手抜きに見えることも
実際の処理としては、紙の原稿用紙を用いた モノクロ の手書き原稿の場合は、グラデになるように色の濃淡をカケアミで描いたり、グラデトーンと呼ばれる スクリーントーン を貼ることが多いでしょう。 パソコンを使った作業の場合は、最初からグラデ処理で色を塗ったり、色塗りの後に色や画面全体にグラデ処理をすることもあります。
一般にグラデ処理を行うと単色塗りに比べ画面上の情報量が増えてリッチに見えるようになりますが、多用しすぎると逆にチープに見えたり、とくにパソコン作画の場合、ソフトウェア (アプリ) の画面効果や特殊処理に頼り切った手抜きにも見えることがあります。 べつに自分のイラストなんですから自分の好きなように描けば良いのですが、他の 絵描きさん の絵と比べて自分の絵に物足りなさを感じたりする場合は、このあたりをちょっと気に留めると良いかもしれません。
一般にパソコンを使った絵描きだと、単色の塗りつぶしが極めて容易な上、モノクロからカラー化したとはいえ当初の発色性能が8色とか16色とかだったので、きれいなグラデを表現するのが極めて難しい状況がありました。 16色CG でこれを克服するため、色ドット (点) を複雑に組み合わせて疑似的なグラデーションに見せかけるテクニック (タイリング) などが発展することになりました。
その後パソコンの普及、高性能化、低価格化が進む中で、色数も256色とかフルカラー (1,677万色) やハイカラー (65,536色) も当たり前となり、美麗なグラデーションを フォトショップ などのツールで簡単に実現することができるようになります。 それに伴い、前述したような理由により、手抜きの代名詞として 「グラデ塗り」 とか 「グラデ絵」 といった言葉も使われるようになっています。