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黒髪

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黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき… 「黒髪」

 「黒髪」 とは、髪の毛 が黒いこと、あるいは艶があって美しい黒髪を称賛する意味で使われる言葉です。 毛髪色 は主にメラニンの種類によって決まり、その種類はユーメラニン (真性メラニン/ 黒や茶褐色) とフェオメラニン (赤褐色から黄色) に分類できます。 通常はこれが一定の割合で混ざって色を作りますが、日本人を含むアジア人の毛髪にはユーメラニンが多く含まれ、それによって黒や黒に近い茶色 (栗毛) の毛髪色になります。 これは紫外線が比較的強い南方地域に住む民族が持つ特徴のひとつです。

 日本においては国民の多くがほとんど同じ人種や民族で構成されており、個人差による髪質の違いはあるものの頭髪もおおむね黒かそれに近い色のため、人種や個人の個性としての毛髪色の違いは、さほど意識されてこなかった歴史があります。 あるとすれば生活の 環境病気 などによる変色や髪の痛み、加齢による 白髪 くらいでしょう。 なので色で区別や優劣を捉えず、同じ黒髪の中で黒の深みや艶、指通りの良いなめらかさといった部分に着目して愛でる感覚が研ぎ澄まされます。 これは健康的な若さとか色香とも密接に関係しています。

「黒髪美人」… 艶やかな黒髪は美の象徴とも

 とりわけ女性の美と艶やかな黒髪を結びつける考え方は分かちがたいほどに根強く、俗に 「黒髪は女の命」 と呼ばれるような独特な価値観を育みます。 平安時代の和歌や俳句をはじめ、黒髪の美しさを賛美する作品は数多く存在します。 これは白く透き通るような 肌色 とセットでもあり、黒と白とのコントラストの妙といった部分もあります。 また黒は色と云うよりは明度でもあるため、逆に黒の中のわずかな色味や自然光の反射などを含めた認識がされるケースも多かったかもしれません。

 こうした人種的な条件に基づく審美的基準は、他のアジアの国々でも共通する部分があります。 中国でも美しい黒髪を健康的な美や若さの証として尊重する文化を持っており、髮美女は美しい女性を称えるもっともポピュラーな美称のひとつとなっています。 中国史上最高の美女とされる楊貴妃も豊かな黒髪をたたえていますし、同様の文化はお隣の韓国なども持っています。 このあたりは価値観が同じ部分なのでしょう (ちなみに楊貴妃と並んで世界三大美人と呼ばれるクレオパトラも黒髪の おかっぱ ですし、小野小町も言わずもがなですが、小野小町を含めるかどうかとか、そもそも世界三大美人という 概念 自体に意味があるのかについては議論の余地があります)。

天使の輪とか黒髪ロングとか

 日本女性の髪色としてしばしば理想とされる色に烏羽色 (からすばいろ) や濡烏 (ぬれがらす) があります。 やや青みを帯びてしっとりとした深い黒を指す言葉で、光の反射によって鳥のカラスの羽のように美しい干渉模様 (色) が浮かび上がるものとされています。

 また美しい色艶をはっきりと見て取るには、ある程度の長さと整った真っすぐさが必要でしょう。 いわゆる 「黒髪ロング」 が珍重されるのも、これら古くからの日本的な美意識を元に、毛髪色から若さや健康的な 清潔感、優雅さ、清楚でおしとやかなイメージを喚起するからで、時代が変わっても大和撫子の美を象徴するもののようなイメージが根強いものなのでしょう。

 とくに黒髪の頭頂部周辺に環を描くように光が反射する様子は天使の輪 (天使の輪っか) と呼ばれ、黒髪ストレートがもっともよく見えたり 映える ものでもあるため、美髪の象徴のような扱いがされることもあります。 これはシャンプーやリンスといったヘアケア製品の広告において、毛髪の表面にあるキューティクルのきめがよく揃い、健康な髪である証拠のような扱いをされたことで、より一層求められるものとなっている部分があります。

 宗教画における文字通りの 天使 の輪や後光、霊的存在のオーラといった概念への影響もあったと考えられます。 艶やかな髪を美しいと感じるのは、時代や文化や宗教の違いを問わないのでしょう。

モノクロマンガにおける黒髪表現

 モノクロマンガイラスト では、髪の色は墨の黒一色で表現しなくてはならず、黒のベタ塗りと白のままとその中間 (斜線や スクリーントーン) で様々な髪色を描き分けます。 黒髪の場合は、ベタで塗って光沢をハイライトで抜いて表現するといった描かれ方が多いでしょう。 カラーで描かれる場合は グラデーション も用いられ、青や紫がかった黒として表現されるケースが多いかもしれません。 こちらは 地味 で重くなりがちな黒髪に彩や軽快さを与え、その艶やかさをよくあらわす色使いだと云えます。 赤や暖色系なら情熱的とか温かさが強調される感じでしょうか。

 一方、アニメ などでは純粋な黒髪はそう多くなく、色とりどりの髪色の キャラ が登場しがちです。 これは日本人ばかりが登場する作品では髪の毛の色のバリエーションが少なすぎ (染髪しなければ、おおむね 黒茶髪 や白髪 (銀髪) 程度に留まる)、キャラの個性を際立たせるために黒髪の中のわずかな色味を誇張・デフォルメしたり、色がもつイメージをキャラに付与する、あるいはテレビがカラー化した際に華やかさに欠けカラー映えしないからとか、小さな子供が見ても容易に区別がつく識別性に配慮するという部分もあります。 これは肌色や目鼻立ち、体形なども同様でしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2002年11月26日/ 項目を分割しました)
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