シンプル&ベーシック、それだけに魅力的 「おかっぱ」
「おかっぱ」 とは髪型のひとつで、前髪は眉毛にかかるくらい、サイドほか全体はおおむね襟足から肩口 (肩と腕の関節) くらいの長さまでで、それぞれ同じ長さで水平に切り揃えられた全体に丸みのある形状のものです。 ストレートヘアをカットによって形つくる非常にナチュラルな髪型であり、老若男女問わず用いられますが、もっぱら女性、とくに女児や生徒・学生に良くみられる伝統的かつ 定番 のヘアスタイルといって良いでしょう。 学校の規則などで女子の髪型が厳しく制限されている場合、おかっぱは望ましいとして推奨されがちな存在でもあります。
非常に似た髪型にボブ (ボブカット)、あるいは双方の良さを組み合わせたおかっぱボブ、男性に多いマッシュ (マッシュカット) がありますが、それぞれは似たものとなるケースも多く、カットだけではなくアレンジでも違いを表現することの方が多いかもしれません。
カット違いでは、サイド部分の内側と外側を異なる長さでカットしたレイヤーカットボブや内巻きボブ、グラデーションボブ、サイド部分を前後で斜めにカットした前上がりボブや前下がりボブなどもあり、これらは前髪以外同じ長さに揃えるというおかっぱの特徴から外れて一般にボブ扱いです。 しかし異なる長さにカットしながら同じ長さに見えるよう整えるワンレンボブもありますし、実質同じような扱いをされる場合もあります。 またカット直後はともかく、しばらくして髪が伸びたら違いが小さくなって区別がつかない場合もあります。
おかっぱ頭の例 (同人する子) |
毛先を同じ長さで水平に切り揃えるようなカットを切りっぱなしと呼びますが、こちらもおかっぱ、おかっぱボブ、ボブともにポピュラーなカットとなっています。 毛量が多いと毛先が外側に跳ねたりしますが、これもどの髪型でも同じ傾向となり、やっぱりさほどの違いはありません。
髪の長さもバリエーションがあり、基本的には肩にかからないショートカットの範疇に入る短いものが中心ですが、若干長めのもの、逆に非常に短く一部を刈り上げるものなどもあります。 おしゃれに敏感な女性やヘアサロン関係者ならともかく、あまり詳しくない男性からしたら、ストレートヘアを肩口くらいまででスパっと切り揃えたように見える髪型はみんなおかっぱ (あるいは逆にボブ) 扱いかも知れません。
女性、とりわけ女児や若い女性のもっともベーシックな髪型のひとつであり、飾り気がなく古風・素朴であるとか垢ぬけない、イモっぽい (ロリ っぽい) など 地味 な印象があります。 また地毛色か 黒髪 で仕上げられることが多く、頭の形が丸くでて可愛らしい反面、無難で暗くて重い髪型だとされることもあります。
とはいえカットの仕方によっては短めでシャープなシルエットにもできますし、毛先のあしらいやヘアピンといった アイテム を用いた遊びやアレンジ、耳のあしらい方などで、様々な表情を見せることができます。 ロングヘアなどに比べ、入浴時の洗髪とタオル・ドライヤーでのヘアドライ、ブラッシングやセットなどなど、日々のお手入れが楽なのもポイントでしょう。
おかっぱっぽい刈り上げヘアが最先端として人気に
1980年代後半に、アパレルショップの店員さん、いわゆるハウスマヌカンがおしゃれな職業として、その独特なカタカナ名称とともに一種のブームになります。 その一部がしていた黒髪で後頭部が短い刈り上げのおかっぱ風のそれは、黒ずくめファッションともども象徴のような扱いとなります。 シックで大人の女性っぽいけれど 中性的 でもある前衛的でおしゃれなもの、男性のテクノカットともども、都会的で非常に魅力的なものとして注目を集めます。 当時このスタイルは男受けはあまり良くなかったのですが、男性に媚びないスタイルだというのも、世の女性に訴求したポイントかも知れません。 マンガ 「Dr.スランプ」 の皿田きのこみたいな髪型ですね (作中では 「ナウいギャルはここんとこをかりあげるのよ!」 とアラレに説明しています)。
一方でシンプルなだけにごまかしの効かない髪型でもあり、頭の形や ルックス の良い人物 (とくに顔のパーツが左右対称で均等に整っている人) のおかっぱ頭にはそれを際立たせる効果がありますが、似合わない人だと子供っぽくなったり田舎臭くなってしまうのは難しいところ。 両サイドを内側に寄せ顔の輪郭を隠して小顔に見せると云ったメリットはあるものの、どこか垢ぬけないと感じる人は多そうです。 ともあれ当時はこのおかっぱ風刈り上げヘアはハウスマヌカンブームとともに広まっており、なかでも前髪を短くしたものはパッツンヘア、カットやヘアオイルなどでボリュームを抑えたものは ぺたんこヘア と呼ぶこともあります。
ちなみにおかっぱの名称はそのまんまですが、妖怪の河童から来ています。 河童の頭の形と似ているとの理由ですが、現在は河童の髪型と云えばもっぱら男性の ハゲ を指すことが多いので、このあたりのイメージの変遷は面白いです。 俗称・異称は前述したハウスマヌカン風の刈り上げヘアの他にもいろいろあり、日本の伝統的なこけし人形にありがちな髪型だとしてこけしヘア、妖怪の座敷童にありがちで座敷童ヘア、金太郎にありがちで金太郎ヘア、七五三にありがちで七五三ヘア、皿田きのこ (以下略)、磯野ワカメ (以下略) などと一部では呼ばれることがありました。
うちの近所というか ジャンル (セーラームーン) の一部では (うちの サークル だけかも)、セーラーサターン・土萠ほたるのおかっぱ頭をダースベイダーヘア (たぶんスターウォーズが流行した1977年以降頃からの言葉) とか呼んでました。
創作物では必ず一人はおかっぱキャラがいるほどの存在感
歴史物語中の片田舎の小さい子供から、都会の現代的なおしゃれな女性まで (男性のロン毛の一部としても)、地域や時代、年齢を問わず広くカバーできる万能のヘアスタイルと云えるかもしれません。 とくに1980年代末から1990年代にかけて 茶髪 といった明るいヘアカラーや ギャル系 といった派手でかわいらしさを前面に押し出した髪型が流行る中、その対極にあるようなおかっぱは重要な 萌え要素 としても 認知 されるようになっています。
創作物においては、おかっぱ頭 (ほとんどボブも含め) の キャラ が登場しない作品は日本にはないのではないかというくらいポピュラーであり、おかっぱ好きには選択肢が豊富にあるのも嬉しいところ。 女性でも男性でも、ロリでも ショタ でも大人でも、あるいは 巨乳 から 貧乳 まで、性格や服装などその他の 属性 も含め、ほとんど無限に存在すると云って良いでしょう。
これほど一般的なため、髪型のみで個性を出したり付与したり、何らかのありがちな傾向が生じることはあまりありません。 派手めの髪型キャラが大勢でる作品では黒髪がちなことも手伝い、おしとやかとか古風、優等生や 生徒会長 みたいな属性がつくこともありますが、ショートカットでもあるため活発で元気いっぱいのスポーツキャラの場合も多いですし、少年のイメージを持つ人もいます。 髪型だけで何らかの限定的属性を訴求するのは難しいでしょう。
人気キャラはそれこそ星の数ですが、前述したセーラーサターン・土萠ほたるとかサザエさんの磯野ワカメ、皿田きのこの他、国民的アニメとも呼ばれる、まる子 (ちびまる子ちゃん)、ピノコ (ブラックジャック)、節子(火垂るの墓) あたりは日本人なら知らない人の方が少ない感じかなと思います。 猿飛エツ子 (さるとびエッちゃん)、チカコ (ひみつのアッコちゃん)、大宮忍 (きんいろモザイク) も代表的なおかっぱキャラかも知れません。
ちなみに筆者は非業の最期を遂げる牧村美樹 (デビルマン)、らんま1/2 の天道なびき、あと はなかっぱの ももかっぱちゃんはかなり好きですね。 このあたりは髪型が好きなだけでなく、性格もコミの話ではありますが。