田舎っぽくて地味…でもその素朴さがいい! 「イモ」
「イモ」 あるいは 「芋」 とは、植物の根や地下茎が肥大化し、養分を蓄えたもののことですが、おたく や 同人 といった 界隈 では、「芋っぽい キャラ」 あるいはそうした 雰囲気 を持つ画風、設定 という意味で使われる言葉です。 一般でも芋や芋くさいという表現は 「田舎くさい」「どんくさい」「垢ぬけない」「地味」「ダサい」 といった ネガティブ な意味で広く使われますが、原則的にはそれと同じ意味となります。 創作物のキャラではなく、実在するおたくや 腐女子 といった人たちの一部がしがちな冴えないファッションを指すこともあります。
とはいえ必ずしも対象を悪く云うだけの言葉ではなく、特定文脈ではむしろ肯定的・ポジティブ に捉える向きが少なくありません。 田舎っぽいとか地味というのは、別の言い方をすれば 「素朴だ」「幼い」「未完成」「純情で無垢」「郷愁」「つつましさ」「親しみやすい」 でもありますし、どんくさいなどは、創作物の中で見るだけなら、むしろ 「庇ってあげたい」「守ってあげたい」「可愛がってあげたい」 という感情を惹起し強く刺激するものでしょう。
そうした特徴を持つキャラは、女性の場合は芋女 (いもじょ) や芋っ娘 (いもっこ) お芋っ子と呼んだりします。 ロリ の文脈で同じ音が入った 妹 (いもうと) とシャレで複合することもあります。 平安時代には妻や恋人など愛しい人を妹 (いも) と呼ぶこともあったようなので、これはこれで伝統的な美称にも思えなくもありません。 また日ごろはイモ要素のないキャラがイモっぽい服装や言動をしたり、垢ぬけたキャラをイモっぽい絵柄の作家が描いてイモキャラっぽくなった場合は 「芋を食った」 と表現することもあります。 いつもクールなスーツ姿の美女が、家ではどてらや割烹着といった古風で家庭的なものを身に着ける姿などは、そのギャップが強い印象を与えるものでしょう。
男性を芋男と呼ぶこともありますが、むしろダサ男とかキモ男といった、より直接的で救いのない呼び方の方が多いかもしれません。 ショタ の文脈では比較的見かけますが、いずれにせよ女性や女児の芋呼称に比べたらはるかに少ない印象です。
美人過ぎず垢ぬけ過ぎず、身近な存在に萌える
イモっぽさがことさらに受ける場合、全てではないものの、おたく自身がしばしば垢ぬけない地味な存在で、コミュニケーション能力に難があったり 自虐的 な傾向が少なくない中、自分に近いという親近感や共感、あるいは 「こんな自分でも相手にしてくれるかもしれない」 という与しやすそうな都合のよさを感じることもあるでしょう。
当然ながらこれらの 属性 はロリとも親和性が極めて高く、一部ではかなり意図的にイモっぽいキャラを描いたり、絵師 によってはそうしたキャラを描くのに最適な画風 (あまり緻密に描き込まず、ふんわりとしたちょっと古風な造形や色使い) を追及しているケースもあります。 とりわけファッションで云えば、学校指定のやや古臭い スクール水着 や ブルマー、ジャージ などとの相性は抜群です。 なかでも今はもうほとんど絶滅した旧スク水とかブルマ、女子用のえんじ色のジャージ、俗にいう 芋ジャージ (芋ジャー) などは、珍重する人が結構多いでしょう。
絵柄というのは時代によって流行り廃りがありますし、作家個人の個性という部分がありつつも、時代に取り残された古臭い画風は注目を集めることもなくなり、よほど自分の画風や絵柄に自負やこだわりがない限り、「流行りの画風」 の要素を取り入れたりもしたくなるものです。 時代に合わせた アップデート は生存戦略としても有効な場合もありますが、しかしやり過ぎると 「絵が変わった」「流行りに媚びてる」 とそれまでの画風を支持していた ファン が離れますし、とりわけ 絵 でご飯を食べているプロ作家の場合、難しい判断を迫られることもあります。
そうした中、素朴でやや古めかしいイモっぽい画風や絵柄で長期にわたって人気を得るのは並大抵のことではなく、二桁年単位で生き残っているイモっぽい絵柄の作家の能力は、流行り廃りや時代を超える並外れたものがあったりもします。 それは普遍的な魅力といっても良いものですが、ごてごてしたものより素朴でシンプルなものの方が流行に左右されない タイムレス な価値を持つことがあるので、そうした部分も影響しているのかもしれません。
似た属性や ジャンル には前述した地味やロリの他、根暗 や 陰キャ、引っ込み思案、人見知り、コミュ障、引きこもり、ニート、いじめられっ子、処女、そして他ならぬ おたく (おた女) などもあり、いずれも重要な 萌え要素 と 認知 されています。