学校の体操着の定番! 青春を感じる… 「ジャージ」
着て良し愛でて良し ジャージって最強じゃね? (同人する子) |
「ジャージ」(ジャージー/ Jersey) とは、メリヤス編みされた布生地 (天竺生地)、転じてそれを用いた衣類、とくに比較的安価で伸縮性と吸汗速乾性に富み、繰り返し洗濯への耐久性を持つ長袖長ズボンのトレーニングウェアを指す言葉です。
トップスをトレシャツ、パンツをトレパンと呼んだり、全体でトラックスーツ (Tracksuit) と呼ぶこともあります。 日本においては学校の体育用衣料として単色・サイドに白ストライプが入ったものが広く普及しており、中でも上下が揃い、襟つきの上着部分がファスナーによって前開きになったものをジャージやスクールジャージと呼んでいます。 また男子は青か濃紺、女子はえんじ色のもの (芋ジャー) を選ぶことが多いでしょう。
一般的に学校の体育では体操着としてTシャツ状のトップスと 半ズボン (短パン) 状のボトムス (トレパンやショートパンツ、ブルマ) が用いられますが、ジャージはこれらと組み合わせて着用することが多く、とくにトップス部分はTシャツ状の体操着の上に身に着けることが多いでしょう。 寒い時期などは、同じようなデザインのウィンドブレーカーやパーカーに替えたり、ジャージの上に重ね着することもあります。
一方、学校や地域、時代にもよりますが、体育時間や校内の部活練習以外に着用するジャージとして、もっぱら校外活動用に使われる部活専用の部活ジャージもあります。 こちらの場合、スクールジャージとは異なる有名ブランド品だったり、色や配色 (ツートンカラーも多い)、スタイリッシュ なデザインが施されたり、胸や背中部分に学校名が大きく記されるなど、通常のスクールジャージとは一線を画すものが多いでしょう。
アパレル業界的にはプリントや刺繍などの加工を前提とした無地アパレル・アイテム とされ、代表的かつ大まかなシルエットや意匠に独自性や知的財産権 (意匠権) がないため、大小様々なメーカーによって地域ごとにほぼ同じものが昔から製造販売されています。 学校で使われるジャージの場合、入学時にまとめて購入手続きが行われたり、学校指定のスポーツ用品店などで販売されます。 ちょっとしたおしゃれさんは、ほとんど同じだけれどブランド違いの高級品を選んだりもします。
国内メーカーで有名なところでは、1953年設立で学校指定体操服・ジャージの老舗として知られるカネマス (カネマス・SANGRET・MINO) や、1930年に逓信省の放出品の入札業として創業し、戦後アメリカ軍の放出品や ミリタリー 関係の衣料品などを扱うようになった C.A.B.(キャプ) とそのブランド United Athle、学校指定品としてよく選ばれる 1963年創業の GALAX (ギャレックス)、通販なども積極的に行っているスクールユニフォーム総合メーカー、オゴー産業の sporlesh (スポレッシュ) などがよく知られています。 地域ごとにローカルな 「おなじみ」 のメーカーがある場合もあります。
1990年前後からはジャージがブームになったこともあり (後述します)、異業種がジャージ製造・販売に参入したり様々な新興メーカーが登場したり、さらには同じころのブルセラブームとか コスプレ が一般層にも徐々に広がったことによる 需要 の拡大で、ネタ として着用される見た目重視の安価なスクールジャージっぽい簡易的な衣料品なども登場しています。 これらはジョークショップや格安量販店、ドンキホーテのような激安ショップなどによく並んでいます。 これは時代を下って2010年代前後からの、若手お笑い芸人のコスチュームのようなイメージによるものも多いでしょう。
1980年から1990年にかけての、ファッションとしてのジャージ
1970年代や1980年あたりまでは、一部のスポーツ愛好家や競技者を除けば、社会人になって日常生活でジャージを着用する機会はあまりなく、とりわけ紺やえんじ単色で白の2本ストライプ入りジャージはいかにも学校の体操着といったイメージでした。 当時の社会人スポーツは企業活動とも強いつながりがありましたが、どうでも良い室内着ならともかく、社会人が屋外で身に着けることは少なかったでしょう。 どちらかと云えば、学校を卒業したり成長してサイズアウトした孫からどうせ捨てるならとジャージを貰ったおじいちゃんおばあちゃんが、動きやすく汚れても良い古着として野良仕事で使ってるようなイメージです。 しかしその後健康志向の高まりからジョギングが流行すると、社会人でも個人でのスポーツ活動が活発化し、徐々に着用する人が増えることに。
さらに1980年代末から1990年代前半にかけ、欧米のヒップホップやロックのアーティスト (例えば Run-D.M.C. やオアシスなど)、ダンス、ストリートファッションの影響からスポーツウェアやトレーニングウェアの街中での普段着使いが若者を中心に広がります。 国内メーカーの アシックス (ASICS)や ミズノ (MIZUNO) に加え、アディダス (adidas) やプーマ (Puma)、ナイキ (NIKE) といった海外スポーツブランドの人気の高まりと共に、気取らない普段着としても広く普及するようになりました。 またそれに伴い、色による男女の区別などもなくなっています。 ちなみに1990年代後半には空前のスニーカーブームも巻き起こっています。
この頃のジャージやTシャツ、スニーカー、古着の活用、あるいは防寒着としてのアウトドア系のジャケットやコートなどは、一見ラフで安っぽく見えてはいても、実際はそれぞれがかなりの高級品や高額の レアもの だったりします。 この当時日本はバブルからバブル崩壊の時期でしたが、バブル全盛期のギラギラしたわざとらしい豪華さやわかりやすいハイブランド志向ではなく、さりげなくわかる人だけが分かる肩の力が抜けたゆるい上質さ、ガツガツせず人生ナメてる風でも決めるところは決めるみたいな感じで、時代性を帯びた独特の 雰囲気 を醸し出していたのはポイントでしょう。
生活のゆとりが感じられる凝ったヘアメイクやボディスタイルの維持などにも意欲的で、バブル崩壊以後の経済的に厳しい時代にあっては、パッと見のイメージだけで真似ると単に安っぽく貧乏たらしくなってしまうのは辛いところです。 もう一方に安室奈美恵さんをお手本とするアムラー現象や ギャル といったトロピカルで可愛くフェミニンな着こなしが流行する中、同じストリートファッションのジャージの着こなしにも高いセンスが求められる時代になったといって良いでしょう。
ジャージとスウェットとヤンキーとアウトドア系
ところでほとんど同じような衣料品にスウェットの上下があります。 こちらはトップス部分の前開きがなく、トレーナー状になっていることが多いでしょう。 またおおむね丸首 (クルーネック) で襟や前開きがなく、胸の部分に何らかの意匠がデザインとしてあしらわれていることも多くなっています。 胸ポケットがついていることも多いかもしれません。
いずれも現在ではゆったり目の大きめサイズを部屋着やワンマイルウェア (散歩や近所への買い物用外出着) として利用することが増えていますが、一方であまりの着やすさや手軽さから多用され、さらに高い耐久性を頼んだ長期間常用による劣化 (シルエット崩れ、毛玉だらけとか) も少なくないため、「だらしない」 という印象を受けがちな部分もあるでしょう。 ゆるゆるジャージやスウェットにブランド品のバッグは、地方のヤンキーあるいはその傾向があるマイルドヤンキーファッションの代表と見る向きもあります。
秋冬の寒い時期はこれらに加え、もこもこのダウンジャケットといったアウトドア系やスポーツ系のゆるい上着も用いられます (ブランドは前述したものに加え、例えばノースフェイス (THE NORTH FACE) とかモンベル (mont-bell) とかのカジュアルよりの商品とかユニクロといったファストファッションブランドが広く普及しています)。
サブカルジャージの登場
直接的にはストリート系の影響を受けながらも、より都会的で新しいシルエットを持つものに、サブカルジャージ (サブカル系ジャージ) があります。 ビビッドで派手目だったり淡くてパステル調の色合いに、やたらでかくてゆるゆる・ダボダボのシルエットを持つジャージで、アクセサリーなども積極的に取り入れた、10代から20代前半あたりまでの着こなしです。
ゲームとかアニメとかコスプレ、ボカロ曲といったおたくっぽい要素も含まれていて、やたらと大きめのジャージからアクセやネイルアートが施された細い手、ごついスニーカーを履いた細い足がにゅっとでたようなパターンが多いでしょうか。 髪色 もパステル調に染髪していたり2色3色の 多色髪 だったり、逆に 黒髪・おかっぱ でダークさを出したりと、アレンジの種類も豊富です。
こうした着こなしは1990年代以前にも 「近未来」 をイメージしたイラストなどで見られていましたが、2000年代以降になると、実際に街中でもよく見かけるようになっています。 相性が良いのは地雷系とか不思議ちゃん系などでしょうか。
創作物におけるスクールトレーニングウェアとして
学校を舞台とした アニメ や マンガ、ゲーム、あるいは お菓子系・U-15 アイドル などにおいては、スクールジャージは 制服 や スクール水着、学校指定の通学カバンや靴のローファーなどと並び、極めて重要な記号的アイテムとして登場します。 校外活動でよく用いられるため、準制服の位置づけもされています。
もちろん制服を着ている時間の方が圧倒的に長いですし、見た目のインパクトはスク水やブルマに及ばないものの、日本人なら義務教育を通じて誰でも知っているジャージの生地の柔らかさや温かみのある優しい肌触りのイメージ、シンプルでスポーティーな印象はキャラに彩を与えます。 女性の場合、胸のふくらみが自然な形ででますし、フェチ的 な魅力だけでなく幅広く根強い人気と ファン を持っています。
とくに部活ジャージの場合、スポーツ根性もの (スポ根) の男性キャラやスポーツ少女などとの相性は当然ながら抜群で、萌え要素 としても 認知 されていると云って良いでしょう。 また修学旅行や 合宿 といった 宿泊 行事におけるパジャマ代わりの寝間着として着用されることも多く、学校生活の描写には欠かせないものとなっています。
着こなし方としては、伸縮性を活かした 萌え袖 (袖部分を伸ばして手を隠す) や 萌え襟 (襟を伸ばして口元を隠す) があります。 また手で襟をクイッと上げる 襟クイ といったポーズによる凛々しさを愛でると云った方向性もあります。
極めてマニアックなものでは、女子が制服の ミニスカート の下に 防寒用 のジャージのパンツを履くというスタイルもあります。 寒い時期によくみられるもので、俗に 「埴輪ルック」(古墳時代の埴輪の衣服みたいな見た目から) などと揶揄されることもありますが、いかにも等身大・リアルな女子の着こなしといった感じがありますし、気取らない いもっぽさ や野暮ったさ、ダサさが逆にかわいい、萌える というファンは少なくありません。