できれば野宿は避けたい…でもお金が、空き部屋が… 「宿泊」
「宿泊」 とは、どこかに出かけた際に宿をとること、自宅以外の家や施設に泊まることです。 出かける用事がある日の前日 (前夜) に現地入りして宿泊することは前泊、用事を終えた後に宿泊することは後泊と呼びます。 同人 や おたく の世界では、日帰りがきつい距離で行われる イベント やライブなどに 遠征 をする際に、どこかで宿泊することを指します。
一般的にはホテルや旅館、民宿といった宿泊施設に泊まる、その地域に友人や親戚がいたらその人の家にお世話になるといったパターンが多いのでしょうが、お金がないとか宿泊施設に空き部屋がない、頼れる知人もいないなどの場合は、サウナ風呂や深夜喫茶、居酒屋などで鉄道の始発がはじまるまで時間をつぶすと云った方法がポピュラーでしょうか。
1980年代あたりからは深夜営業を行うファミレスや一部のファーストフード店、カプセルホテルの登場とか、1990年代あたりからは簡易宿泊施設とも云えるマンガ喫茶 (マン喫) やカラオケボックス、DVD 鑑賞・個室ビデオ店で夜を過ごすと云った方法も取れるようになっています。 このあたりの選択肢の豊富さは、治安 のよい日本ならではといった感じでしょうか (2020年のコロナ禍以降、深夜営業の飲食店が激減し、選択肢としては微妙になってはきています)。
ただしこれらはあくまで 「夜を過ごすため」 にしか使えず、ベッドで横になって寝ることもできないので身体的な負担はかなりのものとなります。 サウナやマンガ喫茶、個室ビデオなら横にはなれますが、おおむねリクライニングシートでとなります。 後泊で翌朝に家に帰るだけならともかく、イベントが複数日にまたがる場合、お風呂やシャワーに入れない場所に宿泊してそのまま次の日も参加するのは、夏場などは精神的にもなかなかきついでしょう。
無計画な遠征は、自分だけでなく周囲にも迷惑をかける可能性が
この他、車で遠征なら車中泊という手もありますし、春や秋といった過ごしやすい気候の時期ならば、場所によってはテントを張ってキャンプしたり野宿するという手もあります。 若い男性ならば 青春18きっぷ を使ってのんびり旅をしながら移動し、万が一宿が取れなくても最悪そこらのベンチでゴロ寝でいいやで出かけることができるかも知れませんが (いわゆるベンチホテルですが、お奨めはできませんし、仮にそうなっても地域住民に迷惑にならない場所というのが大前提ですが)、いくら治安のよい日本でも女性ではちょっと難しいでしょう。
せっかくイベントのチケットが取れても、宿が取れなくて遠征を諦めるといった判断が必要となることもあります。 交通費節約も兼ねて深夜バスなどを利用し、極力 「夜の時間」 を外で過ごさなくて済むよう工夫することも大切です。 深夜バスも年を取って体が硬くなるとまぁまぁ辛かったりもしますが、そこは若さでカバー? できるかも知れません。 寝台列車 (夜行列車) はもうほとんど残ってないので、選べないのは寂しいところです。
ちなみに野宿自体は別に違法ではありません。 個人の所有地や条例で禁止されている場、駐車場や都市部の公園といった場で占有を伴う宿営は違法か違法性が高いと考えられますが、そうでなければ疲れたから安全な場所でちょっと座ってウトウトと居眠りする、暗くて危ないので夜が明けるまで邪魔にならない場所で一時的に横になるなどの常識的な行為は、国民が国民共有の財産である国土に対して持つ権利みたいなものです。 近年はホテルの宿泊料は高騰するし、都市部に無料もしくは安価で時間をつぶせるような施設もどんどんなくなっていますが、貧乏な若者が有り余る時間を頼りに自己責任で気ままな旅すらできないのは社会としてどうよとは思います。
ただし家のそばに野宿者がいると云うのは地域住民にとっては不安を感じるものなので十分な配慮は必要ですし、深夜に大騒ぎをする、飲食をしてゴミを出すなどは論外の話です。 また野宿する人に危険だってあります (泥棒にあったり朝の寒さで体調を崩したり)。 原則的には避けるにこしたことはなく、あくまで不測の事態 (イベントが長引いたり荒天などで移動手段がなくなったなど) の緊急避難の最後の手段として考えておくというのが大切です。
ワシントンホテルから見下ろすコミケ入場列 「見ろ、人がゴミのようだ」
同人と密接に関係する宿泊に、夏冬に 東京ビッグサイト で開催される コミケ (コミックマーケット) のための宿泊があります。 盆暮れは連休やそれに伴う帰省の影響もあり、都心部は閑散とするケースもあるものの、コミケともなると近隣の宿泊施設はどこもいっぱいで、会場 に近い場所になるほど、予約を取るのが非常に難しくなっています。
ワシントンホテル (東京ベイ有明ワシントンホテル) |
そんな宿泊施設の中でも別格扱いなのは、東京ビッグサイト最寄り駅でりんかい線国際展示場駅前にあるワシントンホテル (東京ベイ有明ワシントンホテル/ 1999年開業/ 830室) でしょう。 東京ディズニーリゾートにも近い立地で元々人気が高い上に、コミケ時期ともなると予約が取れないホテルとしてその名を馳せています。
ちなみに サークル参加 する人が高層階に宿泊すると、朝は眼下に 一般参加 のための長大な 待機列 を見ることとなり、「見ろ、人がゴミのようだ」 とつぶやきながら 「天空の城ラピュタ」 のムスカ大佐を気取るのが お約束 となっています。 利用を検討するなら遅くとも2か月前くらいには、安価な部屋が希望なら3か月前には予約を入れたいところです。
その後、近隣にホテルトラスティ東京ベイサイド (2008年開業/ 200室) やホテルサンルート有明 (現:相鉄グランドフレッサ 東京ベイ有明/ 2009年開業/ 912室) が相次いで開業すると、これら3ホテルを 「三大ホテル」 や 「三大宿泊施設」、利用者を 「三大宿泊組」 と呼ぶこともあります。 いずれも会場まで徒歩圏内であり、電車組 (始発組) などに比べ気分的にも身体的にもスケジュール的にも、圧倒的な アドバンテージ を得ることができるでしょう。 とくに1日参加ではなく2日参加、通し参加などになると、その違いは大きなものになります。
その後も当地域には大型ホテルが建ち、とくに2018年に駅の真横にできたダイワ ロイネットホテル 東京有明 (現:ダブルツリー by ヒルトン東京有明) はインパクトがありました。 その他、ホテル ヴィラフォンテーヌ グランド 東京有明 (2020年) や ファーイーストビレッジホテル東京有明 (2024年) あたりも徒歩圏内であり、前述した3大宿泊施設に準じる扱いでしょう。
なおコミケでは、会場付近で 徹夜 で並ぶこと (徹夜組) は禁止です。 絶対にしないようにしましょう。
ちなみに昔からホテルが取れない場合の最後の手段としてよく云われるものに、ラブホテル (ブティックホテル) の利用があります。 こちらも週末はどこも混雑しますが、一般のホテルと違い、宿泊以外に2時間とか3時間程度の 「休憩」 があり、回転が早いため、タイミングによっては部屋が取れたりします。 ただし一人だけの利用とか男性同士・女性同士だとダメとか、いろいろと制限がある場合があります。 話の種に泊まってみるのも面白いですが、当たり前の話ですが誰かと泊まる場合は相手が異性であれ同性であれ信頼できる相手か、そうなっても構わない相手と利用するようにしましょう。
時代によって変わる宿泊の形…値段が高すぎて泊まれない! 空室がない!
身体にもっとも負担がかからず、他人に気を遣わずにも済むのはイベント会場のそばにホテルを取ることでしょう。 しかし若いうちはあまりお金もないですし、どうせお金を使うならイベントでのお買い物の軍資金にしたいもの。 交通費と並んで、圧縮できるならできるだけ圧縮したいのが宿泊に関する出費でしょう。
2010年代後半になると、いわゆるインバウンド (訪日外国人) 需要 の高まりとともにホテルに空室がなくなったり、長期休暇や土日を中心に需要が集中する時期の料金変動制 (ダイナミックプライシング) によって、宿泊費の高騰が生じるようになっています。 それまで数千円で泊まれたビジホ (ビジネスホテル) の素泊まり料金が2万円を超えたり、カプセルホテルで1万円台後半とか、ナイトプランを使って千円程度で始発待ちができた漫画喫茶ですら数千円の費用がかかるようにもなっています。
外国人観光客があまり利用しない都市中心部以外の宿泊施設 (例えば東京近郊なら埼玉県とか千葉県とかの郊外宿泊) を探したり、サウナ風呂などは狙い目ではありますが、そもそも中心部以外の宿泊施設やサウナ風呂自体の数が少ないですし、時期と地域によってはどう頑張っても宿が取れないという状況にもなってきています。 とりあえずイベントやライブなどがよく開催される大都市圏に住む友人や親戚らは、大切にするようにしましょう… (ちなみに 筆者 は東京住まいなので、夏冬はわりと サークル の仲間や友人らが泊まったり、人数がいれば 合宿 みたいになったりします w)。
一部ではやむにやまれず、カーシェアを使った車中泊なども
推奨される利用方法では全くありませんが、2010年代前後から普及したカーシェア (レンタカーの シェアリングサービス) を利用して車中泊というのもよく聞くようになりました。 都市中心部ではイベントが開催されるのが週末や祝日になりがちということもあり空車がなかなか見つからなかったりしますが、郊外で深夜帯ならば、結構空いていることが多くなっています。 シェアされる車をプールしている駐車場がおおむね駅そばの立地というのも便利なポイントでしょう。
月数百円の会費と利用時間に応じた利用料が必要ですが、それらを合わせても年に数回ホテルに泊まることを考えるとはるかに割安になるケースが多く、運転免許を持っている人が、最後の手段として選択肢に残すケースが多い印象です。 BOX タイプの車種であれば、大人2人なら余裕をもって横になれますし、タイムズカー (旧タイムズカーシェア) やリパークのカーシェアーズ (旧カレコ) といった全国規模のカーシェアサービスなら、スマホで簡単に予約や利用も可能です。
車中泊は苦手な人はほんとうに苦手なようですし、前述の通りあまり褒められた利用方法でもありません。 エアコンをつけながらの寝泊まりではエンジンをかけっぱなしになることが多く、騒音だけでなく一酸化炭素中毒の恐れもあります。 とはいえ駐車場付近の 環境 (地域住民に迷惑かどうか) と身体に無理がなければ、少なくとも都市部の野外で夜を明かすよりはよほどマシだと云えなくもありません。
原則的には郊外の宿泊施設への移動を目的として、もし緊急避難的に利用せざるを得なくなった場合は、駐車場でそのまま寝泊まりするのではなく野宿可能な場所への移動に限る、後でその車両を利用する人のために通常利用時にも増して室内を清潔に保つよう努力するなどは心がけるべきでしょう (人が寝泊まりした後は独特の臭いがついたりしますし)。 そもそもこうした最後の手段に頼らなくて済むよう行動するようにしましょう。