高貴で神秘的、憂いも感じる 「紫髪」
「紫髪」 とは、紫色の 毛髪 のことです。 髪色 としては個性的なもののひとつであり、一部の若者やファッションアイコンが選択することもありますが、他の 色 と比べるとあまり一般的ではありません。 もっとも多いのは、白髪 を染める中で個性的な色を選ぶ中高年女性でしょうか。 老化とともに 黒髪 はやがて白髪となりますが、実際は白というよりは若干薄い茶や黄色が混じったクリーム色っぽい色であり、グラデーション をかけた紫色がよく 映える (紫と黄は 補色 の関係にある) という部分もあります。
一般に紫は高貴で優雅、妖艶で神秘的でクールな印象を与えますし、青髪 や 緑髪 などと同様に自然界では人を含む哺乳類ではまず見かけない色であり、マンガ や アニメ などでは妖精や妖怪・異星人 といった 人外 のキャラに用いたり、擬人化 された ゲーム で、元となる何かの色を再現する形で使われることが多いかもしれません。 またそのキャラがイメージカラーを持っていてそれが紫だった場合、髪色そのものは黒髪だったりするものの、身に着けている紫色の リボン や カチューシャ といった髪飾り、アクセサリー なども構成要素として見なし、全体で紫髪と 認知 されることもあります。
なお濃い紫 (深紫) の場合は濃い青髪と、薄い紫 (浅紫) の場合は ピンク髪 との区別がつけづらいかもしれません。 とくに明暗や2つ以上の色が諧調で表現される グラデ髪 の場合、その区別はいよいよ難しくなります。 青と赤の配分にもよりますが、それぞれで深紫・浅紫とか青紫・赤紫といった細かい分類がされることもあります。
なぜ紫色は高貴なる色なのか
紫が高貴な色だとされる文化は世界中にあります。 日本はもちろん、中国やヨーロッパでもそれは変わりません。 例えば日本では、聖徳太子が中国のそれを参考に603年に定めたとされる冠位十二階制における冠の色で最上位が深紫、第二位が浅紫ですし、仏教の袈裟 (僧衣) も最上級は紫衣となっています。 御所で天皇の即位の礼など最重要の儀式を行うもっとも神聖な建物も紫宸殿です。 古代ローマや中国の皇帝らもしばしば紫色の衣を纏っています。 これは紫色を 「禁色」 として、その身分にない者の着用を厳しく禁じるほどの強い独占性を持つものです。
理由としては、鮮やかな紫色を再現するのがその他の色に比べ非常に難しかった (手間や費用がかかる) というのがあります。 色素を抽出する素材の調達や色の精製、それを糸に染め上げる技術も難しく手間がかかり、貴重なものとして扱われてきたのですね。 もちろん希少価値があるだけでは高貴さのシンボルにはなりませんから、紫と云う色彩そのものに何らかの神秘性を見出す色彩感覚を人間は持っているのでしょう。 一般に紫色は古代ローマ時代の貝紫色 (ロイヤルパープル (Royal purple) と呼ばれるように貝類の抽出液によって再現されますが、これには身に着ける者へ力を与えその身を災厄から守る効果があると信じられていたこともあります。 これも、紫色を見た時に人々が感じるイメージに喚起するものなのでしょう。
中国や日本、あるいは広くアジアの地域では、糸や布を染める際に貝染めではなく紫草を用いた草染めが行われます。 しかしこれらも元を辿れば貝紫 (の代用品) であり、古代ローマ帝国をはじめヨーロッパで誕生した 「高貴なる紫」 という 概念 が中東・インドを経由して東アジアに伝播し広がったというのが定説となっているようです。