キャラクターの描き分けが髪型だけ… 「ヅラチェンジシステム」
「ヅラチェンジシステム」 とは、作品中に登場する キャラクター の造形にあまり個性やバリエーションがなく、キャラごとの描き分けがきちんとできていない状態で、「違うのは髪型だけだ」 なんて時に、そうした作品やそれを描いた 絵師 (漫画家) やその傾向などを指し、罵倒する意味で使う言葉です。
ハンコでおしたように同じような顔、似たような顔のキャラクターばかりが出てくる作品、あるいは作家を、判子絵 (ハンコ絵)、ハンコ絵師などと呼んだりしますが、意味はこれとほぼ同じとなります。
テレビゲームの容量の関係でヅラチェンジが…
こうした 絵 を描く作家や作品は昔からあり、「違うのは 髪 の形や 髪色 だけだ」 なんて揶揄されていましたが、これが 「ヅラチェンジシステム」(Dura Change System) という、ある意味でキャッチーな言葉となったのは、コンピュータゲームの世界からでした。
初期のテレビ・パソコンゲームの作品では、データ容量の関係であまりたくさんのグラフィックデータを作品パッケージに持つことができず、登場人物のグラフィックデータの一部共用が図られていたのですね。 多くの場合、基本となる顔のデータはほんの数パターンしかなく、後は 差分 として髪型をちょっと変えたり、メガネ や リボン、カチューシャ、ヒゲをつけたり、肌の色 や服の 色 をちょっと変えたりする程度で、大勢の 「別の人」 に見せかけていました。 これを称して 「ヅラチェンジシステム」 と呼ぶようになったのでした。
元々は少ないデータ容量の制限のためではあったのですが、ユーザーから見ると 「手抜き」 や 「使いまわし」 を強く連想しますし、データ容量に余裕が生まれても キャラクターデザイン (キャラデザ) のデッサンにバリエーションがなく、結果的にヅラチェンジシステムのように同じような顔が並ぶケースも多かったため、以降は 「キャラの描き分けができない作家や作品」 を侮蔑・罵倒する言葉として一部で広がることとなりました。
なお容量の関係で 「ヅラチェンジシステム」 がやむを得ない状態の時でも、ヒロイン や ヒーロー といった重要な登場人物は通常、独自のグラフィックが別途用意されていました。 これが転じて、その作品中で 主人公 や物語のキーとなる重要なキャラを、「独自グラフィックキャラ」「専用グラフィックキャラ」 などと呼ぶ場合もあります。 固有の名前を持つ重要なキャラを ネームド と呼ぶのと同じで、その作品で大切な役割を担う存在だとの意味になります。