ざっくりと塗り分けるイラスト着色方法…「アニメ塗り」
「アニメ塗り」(あにめぬり) とは、イラスト や CG を アニメ作品 (セルアニメのセル画) の キャラクター の 絵 のように、ざっくりと簡略化した色分けとして塗る方法、着色法のことです。 例えば影の境界線がはっきりと別れ、主線もしっかり残るような色塗りになります。 水彩画や油彩画などの伝統的な 絵画 やイラストの塗りに対する言葉で、エロゲ塗り と一緒に 「オタク塗り」 などと呼ぶ場合もあります。
アニメと一口に云っても、作品や作画によって画風や絵の 雰囲気 は様々ですし、イラストを描く人によっても 「アニメ塗り」 の形や定義には色々あるようですが、技巧を凝らし グラデーション や中間色を多用して複雑に塗り上げたりせず (グラデなどを全く使用しないという訳でもありません)、ある意味 「お手軽な色塗り」「手抜きの彩色」 のような意味で使う人が多い言葉となっていますね。 イラストの 作者 が自分の作品を卑下し 「所詮アニメ塗りですから」 なんて使い方がとても多い言葉となっています。
なお対義語としては、厚塗り、絵画塗り、油絵塗り なんてのがよく使われますが、こちらもかなり大雑把すぎる言い方なので、妥当な対義 概念 になるのかどうかは議論の余地があります。 ようは、世間一般でいう 「油絵などの普通の絵」「美術館にあるような伝統的な絵画」 と 「アニメのような絵」 との対比が表せれば良いという感じでしょうか。
これ以外にも頻繁に使われる言葉には、水彩塗り などもあります。
キャラ本来の指定色を、ある程度忠実に再現…
アニメ塗りのもうひとつの特徴としては、「光線」 や 「色彩」 に関する独特な作法が特徴として挙げられます。 絵画というものは、本来は作品ごとに光線 (光源やその 色、影) の関係でキャラの 髪の毛 の色や肌の色がもちろん変わるものですが (夕焼けの中にいたら、キャラの髪や肌は赤っぽくなるでしょう)、これらを意図的に無視、あるいは非常に軽く扱ってしまうようなのも、アニメ塗りの特徴となっているのですね。
これは、アニメの制作 現場 で 「シーンごとに色の 設定 を変えるのはコスト的に難しい」 ということもあったのですが、ファン にとっては 「髪の毛の 色 や肌の色が大きく変わってしまっては、もはやそのキャラではないだろう」 といった意味も、多少はついて回ります (髪の毛の色の違いのみでキャラを描き分ける 判子絵 なんて言葉があるくらい、髪の毛やパーツの色は重要です)。
ちなみに似た言葉に アニメ絵・オタク絵 というのもありますが (アニメの登場キャラっぽい雰囲気のイラスト、絵柄のこと)、使いどころは結構近い言葉となります。 ただしアニメ塗りした絵がそのままアニメ絵になるというわけではありません。 またラノベ塗りとかフォトショ塗りとか、媒体や扱うツールごとに特徴的な塗り方を指す言葉は他にもいくつかあります。
アニメに見慣れた目には、アニメ風の彩色が魅力的に
なお塗り方としては 「お手軽」「簡単」 な塗り方となる 「アニメ塗り」 なのですが、別にそれがそのまま 「手抜きで魅力のない色塗り」 になる訳ではありません。 セルアニメ風の色塗りが好きな人も大勢いますし、とくに 二次元 (二次、虹) が好きな おたく などは、やたら写実的で立体的な凝った色塗りを 「くどい」「アニメ独特の空気感がない」 として、むしろ苦手とする人も結構いるものです。
これは日ごろ見慣れているアニメの パロディ や 二次創作 作品では、絵柄や色塗りでオリジナルと同じか非常に近いテイストを求める傾向があるからなんでしょう。 またアニメ絵に特徴的な、黒くてはっきりとした輪郭線には、ざっくりとしたアニメ塗りが合うという部分もあります。
CGなども3D表現が当たり前になりましたが、質感を高める海外の3DCGに比べると、日本の場合は トゥーンレンダリング (3Dのモデルの輪郭を黒線で強調し、質感をアニメ塗り風にしてセルアニメ画のように表現する技術、実は普通の3Dより面倒で処理が重い) が独自に発展しています。 「リアルになれば良いというものではない」 のが、おたくの世界なのでしょう。
何でもそうですが、モチーフ、テーマ にあった 「技術」 が、大切なんでしょうね。