男性器と女性器の両方を持つ存在、「ふたなり」
「ふたなり」(二成/ 双成) とは、「両性具有」、すなわち、男女両方の性器を併せ持った人のことです。 「2つ成っている」 つまり 「ふたなり」 というわけです。
そのほかの呼称としては 「半陰陽」「アンドロジニー」(Androgyny) や 「インターセックス」(Intersex)、「ヘルマプロディトス」(Hermaphroditus) などとも呼ばれていて、そうした性質を持っている状態の人は 「インターセクシュアル」(IS/ Intersexual)、「アンドロジン」(Androgyne)、「ハーマフロダイト」(Hermaphrodite)「アンドロギュノス」(Androgynous) などと呼んでいます。
いわゆる 同人 の世界では、男性同性愛である やおい におけるある種の 「性転換」 とか 女体化 の 「一部」(あくまで一部) として、あるいは女性同士の同性愛 レズ ものの作品の一部として、触れられるケースの多い 設定、シチュエーション となっています。 また 「中性的」 というよりは、「性自認」(自分が感じている自分の性別) は明確に男女どちらかにあって、ただ体のつくりがそうなっていない…といった感じが多いですね。
もちろん純粋に 「ふたなりが好きだ」 という人も結構いるのですが、多くの場合は、「受け キャラ が好きだけど、異性と性行為をするのは汚されるようで許せない、だけど同性なら良い」「しかし同性だと、いわゆる 「挿入」 が描けず、不完全燃焼だ」 なんて時の、「便利な設定」 として、使われる場合も多いようです。 ただし美しい女性の顔、姿をしているのに、股間に 「醜く不釣合いな男性器」 がついている、そのギャップ、違和感に性的な興奮を覚える人も少なくはないようです。 当然ながら、18禁 の エロ な作品が大半です。
日本の 同人誌 や 「同人」 の 世界観 が海外で注目を集めるようになり、「ふたなり」 も海外に持ち出され、英語でそのまま 「Futanari」 としても通じる言葉となっています。
「第三の性」 としての 「ふたなり」「両性具有」
マンガ の世界では 「便利な設定」、時には 「ちょっとコミカルな設定」 のような 「ふたなり」 ですが、実のところ両性具有となっている人、あるいはそれに近い人が、現実にかなりの人数でいたりします。 当事者にとっては、笑い事じゃないんですね。
多くの場合は発育の障害や遺伝子的な問題があり、「正常(より正確に云うと、多数の性別パターン、男女性別の典型例)」 な人に対して差別的な扱いを受けたり、本人も自分の性に悩んだり、あるいは生殖機能を喪失しているケースが多いなど、実生活や性生活に支障をきたしていたりします。
また 「人間に本来は性別などない、社会的な抑圧、刷り込みから、人間は後天的に男女を意識するのだ」 といった、過激なジェンダーフリー思想の人たちから、ことさらに 「理想的な第三の性」 として持ち上げられたり、古代中国などでは 「陰陽」(世界は1つだけではなく、光と影、嘘と真、男と女など、つねに表裏一体の2つの世界が重なり合っている) の考え方から、男女両方の特徴を持つ両性具有者を 「半陰陽」 と呼び、そうした 「陰陽の世界観」 を体現する存在として神聖化していたり、インドにもそうした特長を持つ神様がいたりもします。
ファンタジー だなどと思っていない、そう思えない人もいる、難しい ジャンル だというのは、たまに思い出してみてもいいかも知れません…。
「ふたなり」 とは一線を画す 「ニューハーフ」「シーメール」
「ニューハーフ」 とは、男性であること、またしばしば性自認が男性でありながら、女性のような装い、しぐさ、場合によっては外科手術などにより女性の体の一部の再現、男性の体の一部の放棄などを自らの体に行っている人のことですが、これは擬似的な 「ふたなり」 に近い状態になりましょうか。
ニューハーフは 概念的 にはオカマに近く、一般的には 「美しいオカマ」「美しい女性そのものにしか見えない男性」=「ニューハーフ」 のようなイメージで使われる言葉です。 1980年に大阪・ミナミの有名なショーパブ、「ベティのマヨネーズ」 で、ママ (店長) であるベティさんと歌手の桑田佳祐さんが行った対談の際に、「私は男と女のハーフなのよ」 との自身の説明をベティさんが行ったところ、桑田さんが 「じゃあニューハーフだね」 と即興でネーミング。
これが話題となり夜の世界で少しずつ言葉が広まる一方、翌年に、オーディションにより選ばれ東京は六本木のイメージ ポスター のモデルとして芸能界に登場し、「六本木美人」 として評判になった松原留美子さんが、実は男性だった…との大きな話題となる出来事があり、松原留美子さんの話題やこうしたショービジネスに関わる男性を 「ニューハーフ」 と呼ぶことが大手マスコミなどでも流行。 広まることとなりました。
こうした男性の呼称には、他にも 「Mr.レディー」 などと呼んだり (「La Cage aux Folles」 を原作とする 1978年の映画 「Mr.レディ Mr.マダム」 に由来)、それ以前には 「シスターボーイ」(美輪明宏さん時代に一部で流行)、「ブルーボーイ」(パリのキャバレー 「カルーゼル」 の舞台に立つ、性転換を行った踊り子の俗称に由来)、「シーメール」(アメリカなどでの俗称、She-Male から)、「トラニー」(同じくアメリカの Trannie に由来) などの呼び方もあります。
もっぱらショービジネス、水商売などで活躍される方が多い 「ニューハーフ」「シーメール」 ですが (近年はアダルトビデオやストリップなどでの 露出 も増えています)、こうした 「性別があいまいな状況」「性差が混濁した状態」 に、日常生活では味わえない強い性的興奮を覚える人も少なくないようで、単なる話題作り、シャレで訪れる客もいる一方、熱心な ファン をたくさんもつニューハーフやシーメールも登場しています。