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ジェネリック

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似せたもの、似たもの、代用品… 「ジェネリック」

 「ジェネリック」 とは、ネットスラング としては 「代用品」「二流品」「下位互換」「イミテーション」「偽物」「パチ物 (ぱちもん)」 といった意味で使われる言葉です。

 例えば高級料理店のタレや味付けを真似て自宅で作った料理をジェネリックと呼んだり、カニ風味かまぼこをジェネリックと呼ぶなどです。 銘柄にこだわらないといった意味で、美味しいし等級も高いけれどほどほどの値段で買えるマイナーなワインなどもジェネリックと呼ぶことがあります。 また 二次創作パロディ をそう呼んだり、既存作品の二番煎じのような作品を指して使う場合もあります (例えば〇〇という アニメ に似せたものなら 「〇〇ジェネリックアニメ」 と呼ぶなど)。

 一方、この言い回しの 元ネタ である本来のジェネリック (Generic) は、ジェネリック医薬品 (後発医薬品) を指す言葉です。 新薬 (先発医薬品) と同じ有効成分を含み、公的機関 (日本では厚生労働省) によって効き目や安全性、品質、用量などが同等であるとの承認を得て製造された医薬品のことで、新薬の特許が切れた後に販売されるため莫大な開発費や特許料の負担がなく、安価なのが特徴です。

 また単に安いだけでなく、新薬の登場より数年から十数年 (日本の場合はおおむね6年から10年程度以上) を経て開発されるため、その間に登場した新しい技術を取り入れるなどして、飲みやすさといった薬効以外の部分が大きく改善されている場合もあります。 決して 「代用品」 や 「パチ物」 という訳でも劣っているわけでもありません。

 一般的には患者の自己負担分の医療費を軽減したり、国の医療費の削減、最適化のために用いられ、薬剤の処方時に患者自身がどちらを選ぶか決められるようになっています。 日本の場合、少子高齢化などによって医療費の増大や財政負担の増加などが続いており、医療保険制度維持のためにも国主導で普及を促進する方向で進んでいます。 これは日本の充実した医療保険制度を維持するためにも必要な施策でしょう。

 なおデザイン性に優れた工業製品などで、特許ではなく意匠権の期限が切れたデザインを他者が再現して生産した製品のことはリプロダクト、あるいは俗語でクローンなどと呼びます。 期限切れのため オリジナル作者 に対する許可などは必要ありませんが、監修などの形で本人や関係者と協業し、公式 な復刻製品として付加価値をつけて販売する形もあります。 書籍類や音楽、映画といった作品・製品の権利保護の場合は 著作権 の扱いとなりますが、これらで期限切れとなったものはパブリックドメインの扱いとなり、その扱いの元で制作されたものはパブリックドメイン書籍とか、格安○○ (例えば古い映画を収めた 格安 DVD) みたいな名前で呼ばれます。

ジェネリックが一般化して日常会話にも転用されるように

 日本におけるジェネリック医薬品の本格的な普及は欧米に比べ遅れていました。 それまでは医療関係者の間でも 「ゾロ品」 や 「ゾロ薬」(特許が切れた後にゾロゾロと同じような薬がでてくることから) などと呼ばれ、新薬と同等の効能・効果、安全性が認められているにもかかわらず、何となく 「安かろう、悪かろう」 といった意識があったのですね。 それは存在を知る患者の側にもあり、普及が妨げられていました。 日本の場合、国民健康保険や高額療養費制度など公的な医療補助が手厚く、標準治療における薬価の違いで患者側の負担がさほど大きくは変わらないため、「だったら高い方で」 が当たり前のような状態もありました。

 また新薬開発を行う医薬品メーカーにとってはジェネリックが普及し当たり前になれば、特許満了と共に自分たちの製品の売り上げが急激に下がりますから (パテントクリフ)、様々な政治的な力関係が交錯する中、普及に向けた積極的な広報がメディアを中心に行われていないのではないかとの 陰謀論 じみた疑念を持つ人もいます。 一方で、過度のジェネリック依存は新薬メーカーの収益を悪化させ、高騰する新薬開発費の捻出を難しくさせてしまう、それによって開発意欲も低下させ、長い目で見たら医療 レベル や国内医薬品メーカーの国際競争力低下を招くリスクがあるとの主張もあります。

 しかし少子高齢化や停滞する経済が続く中、いよいよ医療保険制度維持のための抜本的な対策が必要となり、1990年頃からは国を中心に積極的な広報活動なども行われるように。 また同じく医療費削減を目指す施策として院外処方 (病院で薬をもらうのではなく、処方箋を受け取って病院外の調剤薬局で薬を買う) も全国37の国立病院に対する医薬完全分業のモデル事業 (1997年) から強く推進されるようになり、患者の側でもジェネリック医薬品の 認知 や薬の価格に対する意識が高まるようになってきました。 これらに伴い、街のドラッグストアでも公的補助のない第一類や第二類医薬品の店頭販売において、ジェネリックを 「こちらの方がお安いですよ」 と積極的に販売するようになっています。

 一般の間でもジェネリックの名前が広がると、前述したように 「代用品」 や 「パチ物」 の言い換えとして使われるようになります。 偏見が薄れて信頼され、誰でもよく目にするようになってきたからこそ、高齢者に比べて 病気 や薬と接点が少ない若者の間で気軽な言葉、あるいは ネガ比喩 として広まったとも云えるのかも知れません。 それ以前はジェネリックの存在自体が一般の人たちの間では希薄でしたから。

 なお似たような言葉として認識されがちな 「パチ物」 は、関西で盗むことを意味する 「パチる」 もしくは 「嘘っぱち」 のパチが語源とされ、安いけれど盗品や偽物などの裏がある、ろくでもない品物との意味の言葉です。 二流品や下位互換、バッタ品 (正規流通以外の仕入れ先から仕入れた投げ売りされる安価な商品、あるいは偽物) やイミテーション (模造品) などもそうですが、ネットスラングや俗語とはいえジェネリックがこれらの言葉と同等の扱いをされるのは、社会的意義を考えるとさすがに気の毒な感じがします。 まぁ時代を経て言葉が浸透するにつれ、単に 「お得」「お手軽」 といった意味での使われ方もあるのかもしれませんが。

 繰り返しになりますが、ジェネリック医薬品は新薬と比べて品質が劣る代用品でもパチでも二流でも下位でもないので、まるでそうだといわんばかりの誤解や偏見を与えたり広めるような ネガティブ で安易な使い方は、しない方が良いかもしれません。 医療関係者が患者の誤解を解くコストを増大させる結果にもなりかねず、誰も得をしません。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2016年7月10日)
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