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表記ゆれ

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同じものは同じ文字列であらわす… 「表記ゆれ」

 「表記ゆれ」 とは、同じ意味、同じものを指す言葉がバラバラで統一されていない状態を指す言葉です。 例えば 「猫」 と 「ねこ」「ネコ」 などの漢字・ひらがな・カタカナによる表記ゆれとか、「ニューヨーク」 と 「New York」「NY」 と云った日本語と英語、略語の混在などが代表的です。

 この他、送り仮名 (書き込み と 書込み とか) や正式名称 (非省略語) と略語の混在 (自動車 と 車)、アルファベットの大文字小文字、文字の全角半角の混在、同じ意味の別表現 (パソコン と PC、午後2時 と 14時 など) も含まれます。 また 「ですます調」 と 「である調」 の混在、人名漢字の旧字と新字の混在などもあります。 「メイド」 と 「メイドさん」 のような敬称の有無も表記ゆれとするケースがあります。

 同じ文章中や コンテンツ の中で同じものをあらわす時に異なる云いまわしが混ざると 読者 も混乱しますし、とくに意図が無ければ統一するのが望ましい文章作成のルールというかマナーでしょう。 とくに 商業 の世界で文章を書く場合、誤字脱字と並んで表記の統一は最低限チェックすべき基礎の基礎として扱われる場合が多いものです。

 一方で文脈や構成・レイアウトによって使い分けるケースもあり、必ずしも表記ゆれとなるわけではありません。 例えば最初は敬称つきだったのに途中で敬称を 抜く と、書き手の感情の変化を行間に 匂わす こともできるでしょうし、見出しはデザインされた英語で本文はカタカナにするなどは表記ゆれとはなりません。 また 「メエド」 と 「メアド」 の摂り違いなど、文字の一部に誤りが生じ、そもそも言葉として間違っているなどの場合は、「表記ゆれ」 ではなく単なる 「誤字」 となります。

 書籍類や印刷物の原稿執筆や編集、校正・校閲 (もっぱら校閲) においては、誤字脱字のチェックと共にもっとも気を使われる部分が表記ゆれの追放による言葉・用語の統一でしょう。 いくら本文が素晴らしいものでも、表記ゆれがたくさんあってはその文章に対して、ひいては著者や編集者に対しての信頼性も損ないますし、意図が誤って伝わったり、とても読みにくい文章になってしまったりもします。

 なお固有名詞などでとても長い名前の場合、略称を用いることがありますが、一時的に併用する場合は表記ゆれとは呼びません。 例えば略称をメインとして使う場合、その言葉の初出時に正式名称と略称を並べて記載し、「以下略称の○○で表記」 などと断って表記することもあります。 この場合は表記ゆれではありませんが、ことわりなく正式名称と略称をごっちゃに使う場合は、やっぱり表記ゆれの扱いとなります。

ネット上の文章おける検索エンジンを意識した表記ゆれ

 一方、ネット で発表する文章、とくに Yahoo! や Google といった検索エンジンによる検索結果を意識した文章においては、こうした表記ゆれをあえて行う場合もあります。 「文字列の完全一致」 で検索された時に、「メード」 で検索する人に 「メイド」 表記では届かない、リーチしない可能性があるためです。 一時期は SEO (検索エンジン対策) の一つとして、関連する言葉やその表記ゆれ、さらには本文とは無関係な注目されるキーワードとその表記ゆれを詰め込むような文章が溢れていた時期もあります。

 その後検索エンジンの性能や機能が向上し、表記ゆれに対応した検索結果を返すようになると、意図的に表記ゆれを行うメリットはほぼなくなりました (逆に表記ゆれのある文章の信頼性を低く見積もって検索結果に反映するようなケースもあります)。 しかし言葉の定義に正確さが求められる解説系の文章などは様々なケースを想定する必要があり、注釈や断りの形で文章冒頭のみに表記ゆれを残す場合もあります (例えば 「メイドあるいはメード、本文ではこれ以降はメイドで統一」 など)。

ローカルルールや特別な意図を持った表記ゆれ

 個人で書く個人的な文章なら、別に表記ゆれをさほど意識しなくても良いかと思います。 もちろん統一されていた方が見栄えも良いので、可能な限り表記ゆれがないように心がけるのは大切ですが、云うほど読む方は気にしませんし、逆にあまり他人の表記ゆれをあれこれ気にする方が窮屈かも知れません。

 商業の場合、出版社、あるは出版物ごとに文章作成のガイドラインなどが設けられ、表記ゆれも避けるよう指示されるケースが多いので、プロとして仕事をするなら注意した方が良いでしょう。

 一方で、同じビジネスというか業務の文章作成でも、ローカルルールで表記ゆれをするのが前提となっているようなケースもあります。 例えばアルファベットやアラビア数字を書く場合に、1文字や1桁では全角、2文字や2桁以上は半角で書くみたいなルールというか暗黙の前提がある場は結構多い印象です。 筆者 も 「Aさんに DM した」「1月25日」 みたいな全角半角を混ぜた書き方をかなりしますが、どことは云いませんがそういう場で長いこと文章を書いていたのでそれがつい出てしまいます。 全角英数字の追放自体は文書ファイルの全角半角一括変換で簡単にできますが、一度変換してしまうと1文字とそれ以外を分けて元に戻すのはかなり大変なので、いまだに踏み出せてないです。

小説などの文字作品における、地の文とセリフの表記ゆれ

 小説や SSマンガ といった作品で作中人物のセリフとして使われる言葉については、統一する必要はありません。 セリフは小説などの地の文 (セリフ以外の文章) と違い、話者ごとに違う言葉を使う可能性や蓋然性がありますし、例えば 「集合」 や 「会議」 と 「ミーティング」「ミート」「meets」 とか、「スケジュール変更」 と 「リスケ」では、それだけでセリフを発した人物や キャラ の性格や出自、現在の社会的な立場などを何となく言外に表現することだってできるでしょう。

 意図的に表記ゆれを行うようなケースは他にもあります。 例えば 普通に 文章を書いていて、意図せずに漢字ばかりが集まる結果となって、やたらと字面が詰まって黒く見えるような場合があります。 逆にひらがなやカタカナが集まって、スカスカになってしまう場合もあるでしょう。 そうした場合に、あえてバランスを取るために漢字やひらがななどを混ぜる場合もあります。 あまり褒められた手法ではありませんし、外からは意図も分かりづらいですが、やってる人はわりと見かけます。

 また長く続く作品では、表記ゆれがないように気を付けていても作者自体の気分の変化や、異なる出版社のガイドラインや規定をわたり歩いて混ざってしまったり、途中で自分の表記が一般的ではないと気づいて修正する場合もあります。 後者は、その言葉に特別なこだわりがなければ検索エンジンなどで多数派の表現に合わせるといった選び方でいいと思いますが、誤った使い方が多数派だったりすると、どちらに合わせるか悩むことにもなるでしょう。

パクリの言い逃れを塞ぐ 「著作権トラップ」 としての表記ゆれ

 もう一つのネット世界特有の問題として、文章のパクリ・盗用の防止問題があります。 デジタル文書は コピペ で簡単にテキストを複製できてしまいますし、見た瞬間にある程度パクリがわかる イラスト などと違い、文章はある程度読み込まないとパクリなのか判然としないこともあります。 前後を入れ替えたり一部を改変するなどすると、「たまたま似たような文章になっただけだ」「同じ テーマ で書いている以上、内容がある程度似るのは仕方がない」 という状況になりがちで、パクリの物的証拠が残りづらいのですね。

 そこで、意図的に表記ゆれや誤字、半角スペースなどを文章に紛れ込ませ、パクリに対して 「偶然の一致ではありえない」 という オリジナル の痕跡を証拠として残して 著作権 を主張するような文章作成方法を行うことがあります。 これは一般に 著作権トラップ と呼びます。

 例えば同じ文章で、猫とねことネコが同じような並びで使われていたり、半角スペースが不必要な箇所にいくつも同じ数だけ入っていたら、「たまたまそうなった」 という言い逃れはしづらいでしょう。 このあたりは本来の表記ゆれの是非とはかけ離れたものですが、ネットが当たり前のものとなり、誰でもがネット上に文章を書くようになり、それによって経済的な利益を得ることもある時代特有の考え方なのかも知れません。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2008年7月4日)
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