使い勝手の良さから広がった 「課金」
「課金」(かきん) とは、何らかの商品やサービスなどを販売・提供する際に、提供側 (例えば企業) が受領側 (取引先や顧客、消費者) に料金を課すること、徴収することです。 その後は言葉が広がる中で、受領側が代金そのものを指したり、お金を支払うことなども含めた広範囲に使われる言葉となっています。
意味自体は一般の言葉でいう 「料金」「代金」、あるいは 「支払い」「入金」 と同じ意味ですが、元々は会計や民法といった法律の世界などで使われるような言葉で、あまり 一般人 の日常会話で使われるような言葉ではありませんでした。 似たような言葉に課税 (税金を課す) とか課徴 (取り立てる) などがありますが、これらと同じように行政など相手に義務を課す側が使う堅苦しい専門用語みたいな感じでしたね。 筆者 も言葉自体は知っていましたが、日常で 書き込み や会話で気軽に使うようになったのは、パソコン通信 の世界からでした。
なお対義語は 無課金、課金額がささやかな場合は微課金、大金をつぎ込んでいる場合は重課金・鬼課金・廃課金などと呼ばれます。 また課金している人たちを課金勢、そうでない人は無課金勢と呼ぶこともあります。
パソコン通信などを通じて、一般用語としても普及
この言葉が頻繁に使われるようになったのは1990年代前後、主に ネット (パソコン通信) の利用料金や オンライン で遊ぶ ゲーム (ネトゲ) におけるプレイ料金での用例の普及でしょう。
とくにパソコン通信の利用料金を課金と呼んでいた影響は大きく、パソ通の初期の利用者に おたく な人が少なくなかったこともあり、一般用語でありながら おたく用語 のような、独特な ニュアンス を1990年代中頃あたりまでは持っていた記憶があります。
例えば オフ会 で集まった時に、居酒屋の料金を割り勘で集めることを課金と呼んだり、ゲームでプレイのための月額料金を課金と呼んだり、アイテム を買うことを 「課金した」 と呼ぶなどです。 これは 同人誌 の販売を、一般ではあまり使わない 頒布 とわざわざ呼ぶのと同じような感じでしょうか。 元々の意味や使い方と関係があったりなかったりしつつ、その世界では慣例的にみんなそう呼ぶよね、みたいな。
1995年頃から インターネット が広がり、同時に携帯電話なども普及すると、「ネットを通じてサービスを受けたりものを買うこと」 を課金と呼ぶような使い方がより一層広がっています。 ただしサービスはともかくものの購入の場合、あくまでサービスと同等に感じられるゲーム内アイテムなどの無体物の販売 (実際はサービス期間中における使用権や貸与権の販売に近い) のみに使われ、ECサイトで有体物の品物を購入する場合にはあまり使わないでしょう (この場合は ポチった みたいな云い方が多い感じです)。
「固定」「従量」 といった様々な課金の形と、課金の俗語化
サービスの内容や提供方法によって同じ課金でも様々なパターンがあります。 毎月決まった金額で固定しているものを 「固定制課金」、使った分だけ料金が追加されるものを 「従量制課金」 と呼ぶなどです。 一方で利用者側が使う俗語化したものも、前述したものを含めたくさんあり、例えば 「廃課金」 と云えばネットやゲームに ハマって 廃人のように課金することを指しますし (単に大金をつぎ込むなら重課金とか鬼課金とか)、そうした プレイヤー を廃課金勢と呼ぶなどです。
またそこから転じて、「無課金」 が 「脆弱」「ありのままの姿」 といった意味で、課金要素のない話題で使われる場合もあります。 例えばファッションに無頓着でみすぼらしい姿をしている人を、無課金ファッションとかファッション無課金勢と呼ぶとか、逆に強そうな人や キャラ を ネタ として重課金キャラと呼ぶなどです。
なおそのものズバリである 推し への課金などは、さらに捻って お布施 や年貢などと呼ぶこともあります。