ゲームなどでアニメがスムーズな動き…「ぬるぬる動く」
「ぬるぬる動く」「ぬるぬる」 とは、CG による アニメ や動画、中でも ゲーム のプレイ映像が、実写かのように滑らか、スムーズに動くことです。 通常は賞賛表現で、対義語は動きがぎこちない事を表す カクカクする、カクる です。
アニメなどの動きを表す形容詞としては 「カクカクする」 が先で、ゲームの動画にしろCGアニメにしろ、一昔前まではハードウェアの制限などから、ぎこちない動き、カクカクとした不自然な動きが当たり前でしたから、それを批判的に呼ぶ場合に使われていました。 その後ゲームのハードの進歩やCGの高品質化などにより、デモ画面以外の通常プレイ画面でも、実写と見まごうばかりのスムーズな動きが当たり前になり、賞賛表現として多用されるようになりました。
ただしテレビアニメなどのセルアニメの世界では、「動けば良いというものではない」 との、批判的な使い方がもっぱらとなっていました (後述します)。 また薄型テレビが普及し、映像にテレビ側でコンピュータ処理がされるようになると、映画などの再生時の過剰な動き補間機能 (映像をスムーズに表示する機能) についても、ほぼ同様の批判がされるようになっています。
ある意味、実写以上に滑らかな動き…しかし、動けばいいというものではない
ゲームなどにおけるCGの動きがスムーズになった理由として、動きの対象となるオブジェクト (人物や乗り物など) の描写がリアルになったり、モーションを行うソフトウェアやエンジンが進歩したことも大きいのですが、とりわけテレビやモニターといった表示機器類のフレームレート (一定時間あたり画面更新 (描写) が何度されるか) が、それまでの 30fps (1秒間に30回描写) 程度から、倍の 60fps となったのは大きいでしょう。
ある意味で 「実写よりもなめらか」 な動きとなったことで、「カクカク」 の対義語として相応しい言葉が必要になり、カクカク のように同じ言葉を重ねる表現としては、これ以外にはなかったという事なのでしょう。
ただしテレビアニメなどのセルアニメの場合は、滑らかによく動くより以前に 「メリハリのある動き」 が好みのポイントとして大きいものです。 なぜならアニメにおける動きとは、すなわち演技であり演出であるからで、多少荒っぽくてもスピード感があり重量感や躍動感がある動きの方が 「優れている」 とされる状況があります (ただ動けば良いという訳ではない)。
これは制作費用を抑えるために動画枚数を減らした事によるカクカク感を緩和させるためのある種の苦肉の対応でもあったのですが、演出方法として発展し、逆に 「現実にはありえない誇張された動き」 に爽快感が生まれ、キャラ やメカにダイナミックな動きをつけるアニメーターらは賞賛の対象となっていました。
セル枚数がただ多いだけの動き、あるいは1990年代から一部のアニメが積極的にCGを効果として使うなどして、そのスムーズなだけでメリハリがない動きを、「気色悪い」「ぬるぬるとして気味が悪い」 と批判する意味で 「ぬるぬる」 を使うことがポピュラーになっていました。 元々はアニメの世界で批判的な意味で使われていた言葉が、ファン層はかぶりながらも価値観が微妙に違うゲームやパソコンの世界で意味が逆転して賞賛表現になった…。 言葉というのはとても面白い変化をするものです。
なお似たようなケースで、テレビ類で見る映画における動き補間機能についても 「動きがスムーズすぎて気持ち悪い」「映画本来のスピード感が失われてしまう」 とされ批判される場合があります。 多くの劇場用映画のフレームレートは 24fps であり、これを一般的になった 60fps で表示するためには、映画映像には含まれていない 「コマ」 を動き補間機能によってコンピュータで生成し間を埋めなくてはなりません (その後倍速 (120fps) や4倍速 (240fps) なども登場)。 テレビメーカー各社は独自の技術やノウハウでこれを実現していますが、原則的には映像と映像のちょうど中間くらいの映像を新たに生成するだけとなり、必要以上にスムーズで、すなわちぬるぬるした動きになったりします。
そのためテレビによってはシネマモードといった映画専用の表示機能を持ち、映画通りの 24fps で表示するようになっている場合もあります。
なお 60fps という速度が一定の存在感を持ち多用されてきたのは、単に高フレームレート対応の技術的コストが下がったというだけではなく、映画 「2001年宇宙の旅」 や 「未知との遭遇」「ブレードランナー」 などの SFX (特殊撮影) や演出を手掛けたダグラス・トランブル氏が、よりリアルな映像表現を追求する中で研究・開発 した大型映像システム 「ショースキャン」(SHOWSCAN) の直接・間接の影響があります。 トランブル氏は人間が映像を見てリアリティを感じるもっとも大きな要因は、画面サイズでも 解像度 でも色数でもなくスピードであると述べています。
パソコンの動作表現では、「サクサク」 なども
なおパソコン用ゲームなどでは、高解像度表示のためにパソコンの高い スペック が必要な場合もあり、パソコンのグラフィック性能の高さを指す言葉として使われる場合もあります。 例えば 「俺のPCはゲーム○○もぬるぬる動く」 といった感じです。
また自作のアニメ (動画共有サイト における、手書きアニメ) が滑らかに動く場合も、「ぬるぬる」 と表現する場合があります。 パソコンの動作が速い、処理が軽い表現では、一般的に サクサク、サクっと が良く使われますが、ゲーム関係では 「ぬるぬる」 なんですね。
一方、スマホ (スマートフォン) が普及しだすと、スマホの画面遷移 (スワイプして画面を左右上下に動かす) の動きがなめらかで軽快なさまを 「ヌルサク」(ヌルヌル・サクサク) と呼ぶようにもなっています。 画面が連続してすべるように切り替わる動作がヌルヌル・サクサクの要素を兼ね備えていることもあり、端末の高性能を誉める形容詞としてよく使われています。
ちなみにCG、アニメに関わらず、視点を目まぐるしく変える、対象となるキャラなどの被写体がスピーディーかつ自在に回転しまくることは、とくに ぐりぐり動く、グリグリ などと云う場合が多いようです。