チャンスは一度きり? 意味が広がる… 「ワンチャン」
「ワンチャン」 とは 「ワンチャンス」(one chance) のことで、もともとの意味としては麻雀で 「1回程度のわずかなチャンスだけど可能性はゼロではない」「チャンスが残されている以上、うまくいけば形勢逆転できるかも」「一発逆転」 あるいは 「最後の望みに懸ける」 といった、わりと切羽詰まった局面で使われる言葉でした。
麻雀で上がるためには特定の待ち牌を 自模る (自分で引く) か、誰かが河に捨てたものをロンする必要があります。 待ち牌の全てが死んでいる場合 (既に河に捨てられていたりドラの表示牌になるなどして場に出ないことが明白な状態) は上がり目が皆無となりノーチャンス、1枚残ってるならワンチャンスというわけで、そこから一縷の望みがある、最後に逆転できるかもしれないなどといった意味で使われるようになったのでしょう。
当然ながら使い方も 「ワンチャンある」(まだ最後のチャンスが残ってる) といった、勝利 に向けた ポジティブ な意味合いで使うケースが多かったでしょう。 似た言葉に 「ラスチャン」(ラストチャンス、最後のチャンス) もあります。 このあたりの言葉は野球をはじめスポーツの世界でも使われていたりしますし、だいぶ時代を下って格闘ゲームなどでもよく使われるので、発端はともかく一般にも広がった経緯については諸説ある感じでしょうか。
なお時代を下ると略され、単に 「ワン」 とだけ呼ぶこともあります。 例えば 「まだワンある!」「ワン!ワン!」 といった感じです。
麻雀用語から、若者が日常生活で使う言葉に
その後この 「ワンチャン」 は、麻雀など ゲーム やギャンブル、勝負事の世界から離れて、誰でもが日常会話で使うような一般の言葉として広がります。 それでも本来の意味である 「最後のチャンス」 といった意味は失いませんでしたが、2010年代前後になって ネット での使われ方を中心に徐々に変化。 単に 「可能性が少ない」「もしかしたら」「万が一」「仮に」 などの言い換え言葉としても広がっています。 例えば 「ワンチャン遅れるかも」「ワンチャン死ぬかも」 といったチャンスとは真逆の ネガティブ な意味で使うケースなどはその代表でしょう。
さらには 「ワンチャンしろ」(可能性は低いがものにしろ、チャンスを掴め) といった言い回しや、派生語として 「ツーチャン」(チャンスは2倍、あるいは2回ある)、「フルチャン」(チャンスはフル (目いっぱい) ある、100%成功確実だ) といった言葉も一部で使われるようになっています。
これらアレンジされた言い回しはそれ以前から存在したものもありますが、2010年代に広がった大きな理由として、一部の人気ユーチューバー (YouTuber) らがこの言葉を多用していた点は影響が大きかったかも知れません。 使うケースは本来の意味の他、多少 ニュアンス が異なる場合もあったものの、「ワンチャンワンチャン」(いけるいける、大丈夫大丈夫、程度の意味) と口癖のように配信時にしゃべる人などもあり、前述した 「もしかしたら」「万が一」 程度の意味の若者言葉として改めて広まったと見てよさそうです。
ちなみにユーチューバーの口癖や、それを 切り抜き動画 などでテロップに文字起こしした際の誤字などから、ワンチャンのように微妙に意味がすり替わった言葉は他にもあります。 代表的なのは 「永遠と」 でしょうか。 これは 「延々と」 としゃべっていたものが聞き間違いなどで 「永遠と」 に認識され、切り抜き動画などの文字テロップに誤って使われて広まったケースがあり、それが発端かどうかはともかく、「週末は永遠とゲームをしてた」 みたいな云い方がほぼ同じ時期に急速に広まっています。
一方でほとんど同じ頃に聴き間違いや誤記のしようがない 「一生」 も同じような意味で使われるようになっていますから (例えば 「昨日は朝から一生ゲームしてた」 みたいな)、その発端については諸説あります (聴き間違いや誤記に加え、単なる過剰表現の合わせ技、もっというと類似表現の微妙な意味スライドの面白さ・意外性を狙った表現 (例えば アニメ 「ちびまる子ちゃん」 の主題歌 「おどるポンポコリン」 の歌詞における 「常識」 と 「有名」 の言葉や意味の意図的なすり替えみたいな感じなんでしょうか)。 ともあれいずれも後には、単に 「長い時間」「ずっと」 を意味する言葉として使われるようになっています。
麻雀関係では様々な 「〇〇チャン」 が
同じ麻雀用語に 「カンチャン」 や 「ペンチャン」 という言葉もあります。 これは麻雀の数牌 (萬子・筒子・索子) の順子 (1・2・3のように数字が並ぶ) の一枚足りない状況で真ん中の牌を待っている状態 (1・3 があって2が来れば揃う) を指す言葉 (カンチャン待ち/ 嵌張待ち/ 嵌 (はめ込む) 張 (張る=聴牌 (あと1枚で和了 (上がれる) 待ち) や、端っこの牌 (片側) を待つ状態 (8・9があって7が欲しいなど) のペンチャン待ち/ 辺張待ち) を指す言葉でワンチャンとは関係がありません。 カンチャンやペンチャンではなく持ち牌のどちら側でも良い場合はリャンメン待ち (両面待ち) になります。
また麻雀を1回プレイすること (東家・西家・南家・北家の プレイヤー 4人それぞれが1回ずつ親をして (場) 1周、それを2回繰り返すこと、東場と南場) は 「半荘」(半チャン) と呼びます。 なぜ1ゲームが 「半」 なのかと云えば、本来は東場・南場に加え西場・北場の4周が1ゲームの単位 (一荘) だったからです (一荘戦/ 連荘 (連チャン/ 親が上がって親を続けること) がない場合、16回 (局) 勝負)。 これでは1ゲーム当たりにかかる時間があまりに長いということで (だいたい3時間以上はかかります)、日本では半分の長さ、すなわち半荘が1ゲームの単位として広がったのでした。
なおそれでも長いということで半荘をさらに半分にする半々荘とか四局、一場、一風があったり、プレイヤーを4人ではなく3人にするサンマもあります。 サンマの場合、単にプレイヤーが4人揃わなかった場合の代替として行うこともありますが、単純にプレイヤーと風の数が減ってプレイ時間が短くなるだけでなく、1人分の余った牌を3人で分け合うために手が作りやすくなって流局が減るなど (ルールによりますが)、ゲームがスピーディーに進行します。 大きな手が出やすくなってギャンブル性が向上するなど様々な特徴があり好んで行う人もいますが、逆にこんなものは麻雀ではないと嫌う人も結構多いです。