オカルト雑誌のペンフレンド募集欄に掲載された不思議な手紙
「前世の仲間探し」 とは、「私は転生した戦士、かつての仲間を探しています」 …といった、自分の前世を探り、その当時いたであろう仲間を募る事、およびそれを雑誌で呼びかける為の手紙・投稿 の事です。
1980年代、オカルト雑誌、「TZ」(Twilight Zone トワイライトゾーン ワールドフォトプレス社) の文通欄 (ペンフレンドを募る投稿欄) で、読者 に対しそうした内容の 投稿 をしないよう呼びかけた時にこう呼ばれ、定着しました。 「戦士症候群」 などとも呼ばれます。
「前世の仲間探し」 を投稿しないよう呼びかけられるくらいですから、編集部にはそうした手紙や投稿が殺到していた訳ですが、それがどのような内容のものであったのかは、当時を知らない人にとってはかなり謎かも知れません。 そのまま引用するのは差し控えるとして、だいたいこんな感じだったんですよ…ってな文章を、ちょっと作ってご紹介します。
ありがちだった 「前世の仲間探し」 投稿内容の再現
| |||
ちょっと大げさに書いているかも知れません
前後して直接影響を大きく与えた作品には、少女マンガ 「僕の地球を守って」(1987年〜/ 日渡早紀著/ 白泉社刊/ 全21巻/ 略して 「ぼくたま」) や、ヒロイックノベル 「グインサーガ」 シリーズ (1979年〜/ 栗本薫著) などがありました。
自殺ごっこ事件で社会問題にもなりました
こうした 「前世の仲間探し」 ブームは、当時新聞やテレビニュースを賑わせた女子中高生の自殺ごっこ事件や (この手の内容の書置きをした集団自殺未遂事件がいくつか起きていました)、さらにこうした事件を 「気持ちは理解出来る」 とした一部の女の子達の風潮で、社会問題化しました。 それが上記 「TZ」 誌での呼びかけにつながる訳ですが、前後に起こった様々な事件と共に、「アニメ やマンガばかり見ていると、現実と幻想の区別がつかない連中が生まれる」 と云うマスコミ得意の論調が作られる、一つの要因ともなりました。
また当時はTZ誌のほか、日本におけるオカルト雑誌のパイオニア、「ムー」(学習研究社/ 1979年〜) や 「ワンダーライフ」(小学館/ WL/ 1988年〜1992年)にもこの手の投稿があふれており、一種のニューエイジ運動 (後述します) やその考え方を髣髴とさせる 雰囲気 がありました。
ワイドショーを観ていた当時も、過去の出来事となった今も、筆者 は首をかしげるばかりの現象ではあるんですが、まぁ大半の人は冗談や ノリ だったんだと思います。 本気だった人は、ちょっと 覚醒 してからのその後が心配です
この辺の 解釈 は、やり過ぎると結局マスコミの論調と同じになる危険もあるので、なんとも困るところです…。
付録1/ ニューエイジとは
ニューエイジ (New Age) とは、キリスト教的な終末思想の中のひとつの 概念、思想です。 今ある世界は遠くない将来、いずれ滅びるが、その後にはやがて新しい世界、すなわちニューエイジがやってくるという考え方、およびそれを信奉する人々のこととなります。
運動として1970年代頃からアメリカ西海岸を中心に盛り上がり、科学や西欧的な合理主義と決別、もしくは一定の距離を置き、ヨガや瞑想、アロマテラピー、パワーストーンなど、神秘世界と現実との架け橋となる波動系の技術や道具を通じて 「人智を超えた大いなる意思」(それはしばしば自然現象や避けがたい運命という形で現れる) と意思疎通をし、来るべき世界の準備をしようとするものです。
こうした運動は一部で先鋭化してカルト教団を組織し集団自殺を行ったり、社会に大きなインパクトを与えるテロや、テロまでいかないものの、深刻な人権 トラブル などを引き起こす存在ともなっています。 なぜ集団自殺やテロなどを起こすのかというと、今の世界や時代が終わることによって新しい、より高次元の世界や時代に移行するのと同じように、個人も死によって新しい高次元の存在になれると考えられているからです (もっというと死そのものの存在も否定しています)。
またオカルトとして霊感商法など、様々な詐欺に利用される場合もあります。 さらに時代を下るとあからさまな宗教やオカルトの形を取らず、ちょっと科学的 (似非科学、疑似科学) な装いをまとい、客観的な根拠があるかのように振舞うものもあります (「水の記憶」 や 「ホメオパシー」「EM菌」 などのインチキ科学)。
日本でも1970年代からこうした動きが伝わり、80年代から90年代にかけて、いわゆる 「ノストラダムスの大予言」 が盛り上がりブームとなる中、一部の新興宗教などがニューエイジというよりは 「終末論」 として、積極的に教勢拡大に利用していました。 しかし終末論を全面に打ち出した宗教団体のテロ事件 (1995年3月20日、オウム真理教による地下鉄サリン事件など) や、そもそもノストラダムスの大予言で終末が予言されていたとする1999年7月を何事もなく過ぎたことから、以降は急速に存在感を喪失することになりました。
付録2/ ソウルメイトとは
2000年代にスピリチュアルという考え方が広まっています。 そうした中、「魂の仲間」(ソウルメイト/ Soul Mate) という、それ以前は心が通い合い魂がつながった無二の友人、恋人などを指す単なる形容表現だったものが、「生まれる前から出会うことが約束されていた相手」「前世からつながっていた仲間」 との意味でも、使われるようになっています。
前世の仲間探しから20年以上、間にカルト宗教によるテロ事件などを挟んで、また 「精神の時代」「魂の時代」 がやって来たということなのでしょうか。 1980年代前後のそれと違い、20世紀がもうすぐ終わるという、素人にも容易にイメージがつくノストラダムスの大予言を含む 「世紀末思想」「ニューエイジ」 が21世紀となって使えないので状況はまた違うのでしょうが、くれぐれも 「おかしな話」 には用心するようにしましょう。
「あなたはわたしの魂の仲間だ」「わたしがあなたの真の姿を覚醒させてあげます」 などと、知り合ってたいした付き合いもないのに口に出す人間を信じるのはやめましょう。 あなただけでなく、あなたの家族や友人など、みんなが 不幸 になります。