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フリーライド

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負うべき義務を負わず、利益や恩恵だけを受ける 「フリーライド」

 「フリーライド」 とは経済学の分野において、もっぱら社会的責務を果たさずに社会的恩恵だけを享受すること、すなわち 「ただ乗り行為」 を侮蔑的に指す言葉です。 そうした人は 「フリーライダー」 と呼びます。

 言葉通りシンプルな意味として 「不正な手段で交通機関を無賃利用する行為」 を指す言葉でもありますが、日本でわざわざこの言葉を使う場合は、税金などを負担する義務や能力がありながら払わずに公共財 (インフラや公共サービス) を利用して恩恵に浴していること、企業に籍を置いて給与所得を得ながら、それに見合った仕事をしていない人 (ぶら下がり社員) をあらわす言葉といってよいでしょう。

 個人のフリーライダーはとても分かりやすいでしょう。 納税をせず税金で作った道路や公園を使うのは誰が見てもフリーライダーです。 だだしこれは、支払う能力がある = 支払う義務があるにもかかわらず支払いをしないで使うから 「ただ乗り」 なのであって、様々な理由によって低収入や無収入で税金の支払いが免除されている人、生活保護の人などは、当然ながらフリーライダーには含まれません。

 フリーライド行為は経済学の世界では、「利益や恩恵を得るだけで社会や組織の一員としての義務を果たさない人が増えると、いずれ社会や組織は崩壊する」 といった文脈で、強く批判されたり忌むべき存在としてやり玉に挙げられたりします。 しかし一方で、違法ではないが限りなくモラルに反する極端な節税対策をしている企業だったり、格差を利用して弱い立場の人間や組織から搾取するような人や企業をも、フリーライダーという言葉で批判すべきとの声も大きくなってきました。

 とくに大企業や大資本家などが行うそれは、個々人の貧しさゆえのフリーライドに比べ 「ただ乗りによる被害額」「社会に与えるインパクト」 が大きすぎ、むしろこちらをより厳しく見るべきではないかとの問題提起も起こっています。 近年では環境問題などに無関心な企業なども、環境に対するフリーライドだとして批判的に見る声も増えています。

 一方、これらとは異なり、先進国として整備された社会インフラや商業ネットワークの利用に無自覚で、それらを便利に利用しながら支えている人たちを小ばかにするような思想 (例えばごく一部の露悪的なミニマリストなど) を 「精神的なフリーライドだ」 と揶揄するような使い方もあります (後述します)。

権力格差や地域格差を使った企業による 「フリーライド」

 組織や企業によるフリーライドとはどんなものでしょうか。 いわゆるブラック企業のケースで考えてみましょう。 例えばある企業が労働者を 奴隷 のように劣悪な待遇でこき使ってわずか数年で鬱病に追い込んでしまい、その社員は退社後もしばらく仕事に就けない状態に陥ったケースがあるとします。 この場合、未払いの残業代などがあればその金額分だけ、企業はその労働者に 「ただ乗りしている」 といって良いでしょう。

 またその労働者が鬱病などを発症し数年間就業できない状態に至らしめたのなら、あるいは最悪の事態を招いてしまったら、その間の 「本来得られていたであろう給与所得」 を労働者から奪い、ただ乗りしているといっても良いかもしれません。 ただし 「労働者を使いつぶすこと」 によって生じる問題はこれだけに留まらず、もっと大きな社会的損失があります。

 当たり前の話ですが、1人の人間が労働者として社会に出るまでには、膨大なコストがかかっています。 例えば金銭面だけで見ても、その人の親や近親者が子育てで支払ってきた費用だけではなく、国や自治体が育児や教育のために行っている様々な公財政支出が含まれます。 一人の人間を大学卒まで育て上げるには、養育費とは別に学費だけで約800万円から2,200万円 (国公立か私立かによって異なる) かかり、国や自治体の直接・間接の金銭的支援はそれをはるかに上回る額となります。

 それら数千万円というお金と、20年間以上もの歳月にわたる本人の勉学や近親者の扶養時間を投じてやっと育った労働者を、ブラック企業が目先のわずかな利益のために数年ですり潰してしまうのは、人権や倫理、あるいは感情的に極めて大きな問題であるのはもちろん、純粋な損得勘定、経済的理由で見てもあり得ないほどの費用対効果の悪さであり、被害者個人やその家族だけでなく、広く社会全体へ損失を与える悪質な犯罪的行為だと云えるでしょう。

 またこうした搾取・フリーライドの状況は、悪質なブラック企業と労働者との間だけに留まりません。 大企業が下請けに対して行う無理な値引き、都市部の企業が地方の学生を吸い上げることで起こる地方の衰退、利益の大半を日本国内で上げておきながら企業の本社所在地や経営者の居住地を税金の安い海外にして税逃れをすることなどなど、格差がある場所どこにでも容易に生じるものです。 これは人命や安全な社会を脅かす公害や事故などと同様の外部不経済 (市場取引以外の経済活動で第三者に損害を与えるもの) であり、長期間にわたって社会全体の総コストを顧みない 「その場限りの搾取」 を超えた 「罪深い根こそぎフリーライド」「ある種のテロ行為」 だと云えるかも知れません。

 生活保護を不正受給や受給者の増加だけをことさらに問題視して ナマポ 扱いして批判したり、氷河期世代が低賃金で不安定な非正規雇用で税金や社会保障費の支払いに困ったり生活に窮するのを自己責任だとして放置したり、パラサイトシングルニート は社会悪だなどと揶揄しながら、企業が労働者に強いる不当な労働や搾取に手をこまねいているのは、正義に叶わないばかりか、国を滅ぼす最悪の状況でしょう。 つましく生活する若者や弱者をことさらにフリーライダーだと問題視する前に、やるべきことがあるのでしょう。

社会インフラ利用に無自覚な 「精神的フリーライド」

 一方、金銭的にはフリーライドしていないものの、資本主義や社会インフラの便利さにどっぷりと漬かりながらそうしたものの利用に無自覚で、そのくせ便利な生活や文明に背を向けたふりをして自分たちの生活がまるでポスト資本主義を体現する新しいものであるかのように喧伝する 意識の高い ミニマリストを 「精神的フリーライド」 と呼ぶこともあります。

 ミニマリストとは資本主義的な物質的豊かさに囚われずに精神的な豊かさを目指し、無駄なものを捨て必要最小限のものだけで 「本質を大切にする」「ていねいな暮らし」 を実践する考え方や生活様式です。 しかし実際は現代日本や先進国の社会インフラがなければ本人を含め誰もまともに生活ができない事に気付けておらず、これら一部の先鋭化した人たちを矛盾した独善的存在だとしばしば揶揄するようになっています。

 もちろん思想や生活スタイルなどは個人の自由です。 しかしこれらの人たちがしばしばエコロジーや極端な反原発・自然エネルギー志向、人権や貧困問題への傾倒、似非科学やスピリチュアルな思想と親和性が高く、一般の人たちを意識が低い存在と見做す言動が少なくないことから、「そこまで云うなら電気も物流もない場所で生活してみろ」「最低限の持ち物でも何不自由なく生活できるのは、近所にいつでも開いているコンピニや各種店舗があるからで、結局それらの店舗を経済力を武器に自分の生活用品の仮置き場として使っているだけだ」「資本主義的過ぎるほど資本主義的な生き方」 との批判がされがちとなっています。

 ミニマリストを自称しミニマリズム的生活を提唱する人たちはおおむね経済的に豊かであり、社会インフラに文字通りのフリーライドをしているわけではありません。 しかし資本主義や物流、インフラが高度に発達した先進国に富裕層として住まうからこそミニマリズムを娯楽として自ら選択し享受できるのが分かっていない部分は、傍から見ていて可笑しみもあります。

 とりわけ おたく腐女子 は物欲の権化な場合もあるので、気取ってモデルルームのように何もない部屋に住んで イキって いるように見えるミニマリストはある意味で相性が最悪なのでしょう。 ネット などでは著名ミニマリストの 「庶民を小ばかにするような発言」 が出るたび、しばしば 炎上 なども生じています。

他者をぶん殴る棍棒としてあまりに便利すぎる 「フリーライド」

 一方で、何でもかんでもフリーライドだとレッテルを貼るような雑な議論は無意味で、むしろ分断を助長し有害だとの話もあります。 世の中には果たすべき義務ではないが、それがなくては社会が成り立たない行為や要素はたくさんあり、そこにフリーライドの考え方を広げて持ち込むと収拾がつかなくなる部分はあるでしょう。

 例えば結婚や出産、育児などで考えてみましょう。 結婚や出産や育児に対する公の各種優遇措置や手当、補助金は、それらをしない (できない) 人からも徴収された税金から支出されており、結婚・出産をするかしないかが個人の自由である以上、「自分で結婚や出産育児を選んだのに、それを選ばない、選べない納税者のお金を使うのはフリーライドではないか」「結婚や出産育児ができるくらい豊かなのに、それができない貧しい人からさらにお金を奪うのか」 との議論があります。

 しかし一方で、子供が生まれなければいずれその社会は社会を構成する人間が減って崩壊してしまいます。 子供がいなければ高齢者や弱者に対する補助はいずれできなくなってしまうのですから、自分は結婚や出産育児をしないくせに、それをした人たちの負担によって老後の社会保障や弱者としての救済を望む人間こそがフリーライドだと主張することだってできてしまうでしょう。 結婚や子供をもうけてこそ一人前といった価値観は根強く、むしろこちらの考え方の方が現在でも大きな力を持っているでしょう。

 どれほど恵まれている人でも不公平感が相対的なものである以上、他者に対して何らかの 「こっちはこんなに苦労しているのにずるい」 という感情から無関係ではいられません。 フリーライドは公平で持続可能な社会の実現という大義の元、感情的なあれこれに正当性を与え、個々人の立場の違いや個人最適と全体最適の矛盾を時に隠し時に先鋭化させ、逆の立場にある相手を批判しやすい構造を持った概念です。 ポリティカル・コレクトネス (ポリコレ) などもそうですが、社会をより平等で正しい姿にしようという言葉や概念が、結果的に不平等感を強め社会の分断を強化するために使われるのは、ずいぶんと皮肉な話です。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2015年10月2日)
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