横文字になると、ちょっと気軽でおしゃれな感じも…? 「ハグ」
「ハグ」 とは、腕や腕を含めた上半身全体で人や動物などを抱きしめることです。 英語の「Hug」に由来し、その和訳である抱擁や、単に抱きしめるとか抱きしめとも呼びます。 単なる 普通 の英語なので日本でもそのままの意味で広く使われますが、コミュニケーションに関する言葉としては比較的新しく、キス などに比べるとこれほど一般化したのはかなり後になってからでしょう。 それ以前は抱擁や抱きしめの他、ホールドみたいに呼んだりもしていました。 子供っぽい 「きゅ」「ぎゅう」 という云い方もあります。 抱いてを 「ぎゅっとして」 みたいに相手に伝えるなどですね。 ハグとは意味や ニュアンス がかなり違いますが、しがみつくとか縋りつくみたいな言い方もあります。
日本において抱擁を示すカタカナ語として広く使われるホールドですが、英語表現的には Hold は優しく抱くことを指します。 他に寄り添うようにずっと肩を抱いているようなゆったりしたものをカドル (Cuddle)、改まった言い方でエンプレイス (Embrace)、強く抱きしめる、場合によっては締め上げるスクイーズ (Squeeze) などがあります。 とはいえ強く抱いてでホールドを使うこともあります (例えば Hold me tight みたいに)。 Hold me は、ラブソングの曲名や歌詞として欧米はもちろん日本でもおなじみ・定番 の フレーズ でもあります。
抱く際の力加減だけでなく、お互いの身体の向き合い方でも呼び名が変わります。 正面から向き合うものは一般的なハグ、後ろから抱きしめるタイプはバッグハグ、横に並んで片腕で肩や腰を抱えるようなものはサイドハグ、正面を向いたハグの中でもとくに密着度の高いものはフロントハグと呼びます。 正面を向き合ってハグすると顔と顔が重なりますが、キスをしないハグの場合はおでこのみを接するか、それぞれ右か左かに頭を傾けて互い違いになるように抱き合います。 腕は相手の肩や首、胴の部分を囲むようにして回します。 肩から上の部位を抱く場合、片手を曲げて相手の後頭部などを優しく手の平で包むといった形も多いでしょう。 より性的な場合は腰から下に腕を回して下半身を密着させ、手で相手のお尻を触るといったスタイルもあります。
どの体位というか スタイル が好ましいかは人それぞれですが、訪米では恋人同士のハグと云えば真っ先にバックハグを思い浮かべる人が多いかもしれません。 ビジネス や政治的な場では正面を向いたハグが用いられます。 相手が家族や恋人ではない異性の場合は、男性の身体が女性の胸に触れて性的な意味が出ないよう、頭や肩あたりを近づけるだけに留めることが多いでしょう。 日本ではそもそも友人や同僚の、まして異性とハグすること自体がほとんどありません。
いずれもスキンシップのひとつとして親愛の情を示したり、挨拶や感謝、歓迎、連帯、励ましや慰めの手段として 日常 の生活で行われます。 欧米などではキスも日本とは比べ物にならないほどカジュアルな行為ですが、ハグもそれ以上に日常のコミュニケーションや挨拶としてとても良く用いられます。 友人や恋人、家族や親しい親戚との挨拶や別れの際の日常的なスキンシップはもちろん、会社の同僚とか公の場で握手よりは重いがキスよりは軽いボディランゲージとしてしばしば交わされます。 言葉を超えて親密さや友好関係、強い絆を相手だけでなく第三者にも示す手段としても利用されます。 日本人も相手が欧米人であれば、相手のスタイルに合わせて行うことがあります。
日本におけるハグ
日本においては家族や恋人の間で交わされることが中心で、友人や職場の同僚とのハグも同性かつ同期でよほど気心の知れた相手か 幼馴染 といった特別な間柄でなければまず見られない行動ではあります。 とくに異性間でのそれは、たとえ恋人同士であっても第三者の目がある公共の場では 「はしたない」「みっともない」 と避けられる傾向が現代にあっても比較的多いでしょう。 公共の場で人目をはばからずキスやハグをするカップルは バカップル と呼ばれてしばしば批判や侮蔑の対象です。
とはいえ、いわゆる異性との身体接触の段階を示す ABC においては、手をつなぐとかハグなどはキス未満のものとして触れられていません。 キスをすればハグはおおむね自動的についてくるものでもあるし、一般に 「抱く」「抱かれた」 は、しばしばセックスを直接的に示すものでもあり、その部分ではBやCに吸収されているという部分もあるのかもしれません。
日本において例外的なのは欧米での生活経験が長い人や、あるいはスポーツ、とりわけ 学校 の運動会系の部活といった場でしょうか。 元々スポーツの多くが競技中に身体接触をしがちですし、自己表現の手段として身体を使うことにも慣れているからか、あるいは 合宿 やら 遠征 やらで仲間と家族同然に寝食を共にする機会が多いからか、日本人の中ではコミュニケーション的なハグに対する忌避感がさほど大きくない気がします。 他の ジャンル ではあまりない、師弟や先輩後輩の間柄でもよく交わされますし。 いつも一緒にいる仲間だけでなく 勝利 を巡って戦った ライバル との試合終了後のハグも珍しくなく、スポーツマンシップや友情の証としておおむね美しい姿・美談としてアマチュアからプロスポーツの場でも認識されます。
慎みや恥じらいを重んじる日本においても若者を中心にハグが徐々にカジュアルなものに変化しますが、入れ替わるように欧米的なセクハラ (セクシャルハラスメント) やコンプラ (コンプライアンス)・ポリコレ (ポリティカル・コレクトネス) な価値観も広がり、異性はもちろん同性であっても不要な身体的接触は避けるべしとの常識が広がり、やっぱりあまり一般化はしていません。 それどころかこの日本においても比較的よく行われていた握手でさえも、最近では避ける傾向が強くなっています。 ハグに寛容な人でも異性とか同性でも 年の差 が大きかったり上司・部下との間で行われることは稀ですので、今後もハグが欧米のように広がることはなさそうです。
なお酒の席で酔っぱらって誰彼構わず抱きつく人は抱きつき魔などと呼びます。 こちらも若い世代を中心にお酒を飲む場や飲酒そのものが避けられがちとなり、同様にキスをしまくるキス魔同様、あまり言葉としても聞かなくなりました。 これらは単なる酒好きの脱線やご乱行といった部分もかなりありつつも、一部には前述した運動部系や不良・ヤンキー系との人的ネットワークとも関係が多少なりともあって、ナンパ とか チャラ・ウェイ系・パリピといった 陽キャ 中心の、また少し毛色の違う要素も含んだ場でありがちかも知れません。
基本的にこのあたりの人たちは異性に対する欲望をあけすけにしがちですし、そのためにアルコールや場のムード、ノリ を利用あるいは強要するのにほとんど何らの躊躇もないので、多くの一般人の感覚ともまた隔絶したものでもあります。 相手を泥酔させたり泥酔したフリをしてハグする、性行為するなどは、コミュニケーションでも愛情表現でも何でもなくただの性犯罪です。
何だかんだいっても、人間って人間の前に動物だよねみたいな
ハグの効用は様々ありますが、精神的な癒やしやストレス緩和にはとくに高い効果があるとされます。 親しい相手に包まれると体温や鼓動を感じて安心できますし、そもそも家族とか恋人とか親しい人はそれなりに相性の良い存在で、相手の温もりや匂いなども含めて守られている感覚がしたり、逆に守ってやらねばという勇気も奮い立つ存在なのでしょう。 恋人相手で男性なら逞しい筋肉を、女性なら豊かな胸が、さらに至近距離で見る相手の顔や吐息だって性的な興奮も惹起します。 またマッサージなどに代表されるように、身体の圧迫にはしばしば快感を伴います。 加えて寄る辺ない広い空間にいるより狭くて包まれる方が心が落ち着くといった本能的な部分もあります。
悲しい時、不安な時にはとくに効果的で、心理学や医学の世界でも、ハグをすることで俗に幸せホルモンや 脳汁 と呼ばれるオキシトシンや精神を安定させるセロトニンが分泌され、ストレスを和らげる効果があるとされています。 そもそも人間以外でも、およそ哺乳類や感情を持つ動物は、ペットのわんこ・にゃんこを筆頭に信頼できる相手から触られたり撫でられたり包み込まれたり狭い場所にはさまることに喜びや快感を覚えるものです。 こうした生体反応以外でも、言葉ではなく態度で相手が示してくれるというのは、相手から自分が信頼されている、受け入れられている、愛され ているという確認や強い確信を時として与えてもくれます。
こうしたこともあり、近年ではある種の社会奉仕や運動としてフリーハグといった試みも行われるようになっています。 街角に立って心身に疲労や困難、ストレスを抱えている人のうち希望する相手にハグを提供したり、逆にハグを求めて社会的に弱い立場にある人が 「私たちの存在を認めてください」 といったアピールを行うなどです。 類似行為にはフリーキスとか、一部ではフリーおっぱいみたいな イベント なども行われるようになっています。 一般的には若い女性とか イケメン あたりにハグしてもらうと高い効果がありそうですが、脳内物質などはあまり出所を選ばないので、よほど相性が悪いか 生理的に無理 な相手でもない限り、行為それ自体にちゃんと身体も反応し効果が出るようです。
ちなみに おたく に近いところでとくに特徴的なハグに 「だいしゅきホールド」 があります。 もっぱら性行為の最中に女性が男性の身体にしがみつくように身体を密着させる姿勢で、女性の相手に対する 「大好き!」 という感情がほとばしるものとして、エロ の世界ではとくに珍重されています。 一方、必ずしもハグを伴わないこともありますが、挿入したまま男性が女性を強く上から圧迫するようなものは、ハグやホールドではなく 「種付けプレス」 と呼んだりします。 性器を限界まで奥に入れ確実な受精・妊娠に誘うプレスというわけです。





