同人用語の基礎知識

自炊/ 炊く

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自分で吸う → 自吸い → で 「自炊」

 「自炊」(じすい) とは、購入など正規の手段で手に入れたデータ、もしくは違法コピーではない オリジナルDVDCD−ROM からデータを 「吸い出す」 ことです。 転じてこうした行為を 「炊く」 などと表現する場合もあります。 通常は吸い出すだけではなく、そのデータを不法に流通させること、あるいはそれを前提に吸い出す意味で使われます。

自炊は何かと面倒なもの
自炊は何かと面倒なもの

 他人の作った違法コピーデータの再コピーや交換、配布ではなく、自分でオリジナルから吸い出すことから、誤変換当て字 の略語で、「自分で吸う」→「自吸い」→「自炊」 と名づけ、呼ぶようになりました。 作成したデータは、自炊データとなります。

 元々は、ゲーム のROMカセットやCD−ROMディスクなどの電子媒体からのデータ吸出しを主に指していた言葉で、対象となっていたのはパソコン用のアプリケーションソフトウェアや映像・音楽、ゲームなどの商用ソフトウェアなどでした。

 しかし後には 商業出版 された雑誌や書籍のスキャナー利用による吸出し (本をバラして丸ごとスキャンで吸い出す)や、さらには 同人誌 などの吸出しも現れ、それらも同じように 「自炊」 と呼ばれます。 2000年代中期以降は、むしろ 「書籍を 電子化 する」 という使い方の方がポピュラーでしょう。

私的な複製と、権利者に無断で行う違法コピーと配布

 これらの吸い出し、コピーなどは、私的な範囲なら必ずしも違法とまでは云えませんし、例えば音楽CDから音源を取ってポータブルオーディオで聴いたり、図書館で書籍類のコピーを取るなどは、ごく 普通に 行われていることでしょう。 単なるバックアップも含め、これらも広義の自炊と呼ばれる場合がありますが、一般的には権利者に無断で不正に流通させることを目的とした場合のみ、そう呼ばれています。

 こうして自炊されたデータは、CD や DVD に焼かれて配布されたり、1990年代末からは ネット の違法コピーサイトや ファイル共有ソフト などを通じて広めることが恒常化。 もちろん完全に 著作権 の侵害行為、違法な犯罪行為ですが、ネットで全て完結するようになり実行に罪悪感があまり湧かなくなっていたり、ネットの通信速度やネット利用者の増大により、その影響はますます広がる傾向にあります。

 このような違法コピーを非合法に流通させる行為を、英語 「Warez」 の誤変換当て字で 割れず、割れ などと呼びますが、その最初の配布行為、二次流通 のための最初のデータ作成となります。 もちろん定期的に警察による取り締まりが行われていて、2010年1月1日からは、自炊したデータを権利者に無断で配布した人だけでなく、そうしたデータを違法に ダウンロード した人も、罪に問われることになっています (改正著作権法によるダウンロード違法化)。

書籍の 「自炊」 の代行業者なども登場、「自炊代行」 はありなし?

 2000年代末になり、客 (本の持ち主) の代わりに自炊 (スキャン) を代行する 「自炊代行業」 も登場。 大きな話題と社会問題にもなっています。 ただしこれらの業者の中には、「書籍をバラして自炊を行った後、その原本を必ず破棄している」 と主張する業者などもあり、利用者やそれを取り巻く人達 (書籍ファン、出版社など) の判断は賛否で割れている状況です。

 原本を破棄している以上、「複製品を作る違法コピー」 ではなく、単なる 「データの移し替え」 だとも云えますし、書籍の電子化の要望は本を楽しむ人達の間で高まっているのに、出版社側の対応は遅々として進まず、その要望に全く対応できていないという現実もあります。 自炊代行業者の料金が安価 (1冊あたり100円程度から) なこともあり、利用者も増大。 「手持ちの書籍を、かさばる紙の本のまま所有し続けるのは無理なので、何とかして欲しい」 との切実な声も聞かれます。

 しかし、いったん電子化されたデータが客の手によって不正にコピーされ、私的複製の範囲を超えてばら撒かれる可能性は否定できません。 この見地に立てば、「自炊代行業者は、違法コピー、海賊版配布の犯罪行為を幇助している」 とも云えます。

 2011年9月5日には、出版7社と作家や漫画家122人が連名で、自炊代行業者100社に対し、作家側からの許諾なしに代行するのは著作権侵害の疑いがあるとして、質問書を送付。 多くの自炊代行業者が今後のサービス提供を取りやめると回答する中、一部の業者は反発。 書籍電子化が時代の流れであるとの前提で、争う構えを見せています。

 過去の貸本屋や漫画喫茶 (書籍レンタル)、古本屋 (書籍リサイクル) などと出版社・作家との争いもそうですが、本好きな 読者 と作家、出版社とが、共存できる道を模索することはできないのでしょうか。 筆者 個人としては、出版社側がもう少しちゃんと時代を見てくれたらとは思うのですが。

紙の本は大好きですが…明るい展望が見いだせない状況

 今後世界規模で情報のやり取りがされるようになり、出版業界も外に出てゆかねばジリ貧となり、立ち行かなくなるでしょう。 そしてその際に紙の本は、残念ながら世界で売れることはないでしょう。 また中国やインド、東南アジアなどが経済発展を続けたとしたら、アメリカや日本に近い豊かさになって国民が本を読み出すようになるでしょう。 もしそれが紙の本だとしたら、世界中の樹木が消えてなくなるのです。

 1990年代、オフィスのOA化により紙はなくなると云われましたが、実際の使用量は逆に増えています。 しかしエコや資源管理の考え方が広まって以降の世界では、もはやそのようなことは起こらなくなるでしょう。 20年30年のスパンで将来を考えた時、こうした起こりうる当たり前の未来に対する想像力や、次の世代へのロードマップ制作の意思表示すらないのは、文化に携わる職業人として、致命的だと思います。

「早炊き」「追い炊き」 など、関連用語も

 「自炊」 が転じた言葉もあります。 例えば 「早炊き」 とは、フラゲ などで発売前に手に入れたCDやDVD、雑誌などから 映画や アニメマンガ などのデータを吸い取り流す意味になります。 また 「追い炊き」 は、データの一部のみがネットに流れている時に、残りのデータを吸いだして流す行為となり、「炊き直し」 は、一度炊いたものの画質や音質、品質が低かった場合などに、自炊行為をやり直して品質の向上を図る時に使う言葉です。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2001年12月10日)
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