消したつもりがネット中に大増殖… 「消したら増えます」
「消したら増える」(増えます) とは、誰かが ネット にある自分にとって不都合な情報を消そうとすると、逆に増えてしまう状況を指す言葉です。 何やら横文字風に 「ケシタラフエール」 と呼ぶこともあります。
例えばある企業に問題があったとして、それを告発する情報の 書き込み や ホームページ (サイト)・ブログ が公開されたとします。 その際、企業側がそれを力づくで消そうとすると注目する人が増え、騒ぎが大きくなることがあります。
削除の方法はいろいろあり、情報が書き込まれた 掲示板 に削除要請をする、サイトを公開した 管理人 に法的措置の通告・スラップ などの恫喝による圧力でサイトを閉鎖させるなどが代表的です。 他にも虚偽のデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) に基づく申請でサイトを非表示にさせるなどもありますが、いずれにせよ 「消された」 という事実が 燃料 となって騒動がより拡大したり、炎上 や 祭り が発生したり 加速 したりします。
その結果、いったんは消された情報やサイトのデータがサルベージされて大勢の ネット民 の間で 共有 され、さらには ミラーサイト や まとめサイト も次々と立ち上がって 拡散 され、消したはずの情報やデータがむしろネット上にあふれかえることになります。 これが揶揄を込めて 「消したら増える」 と呼ばれるようになったのでした。
なおこのフレーズの 元ネタ という訳ではないのでしょうが、ニキビなどで 「触ると増えます」 という言い回しがあって、パソ通 の掲示板でアレンジされて ネタ として使われていたケースがあります。 もしかしたら影響はあったかもしれません。
「ストライサンド効果」 と 「消したら増える」
同じような言葉に 「ストライサンド効果」 があります。 アメリカの著名な歌手・女優のバーブラ・ストライサンドさん (Barbra Streisand) が、ネット上にある自宅が映った写真の公開差し止めを求めて裁判を起こしたところメディアに注目され、かえって世間の耳目を集めて自宅の場所や様子が広く知れわたってしまった事件 (2003年) に由来します。 その後この事件をアメリカのネットメディアなどが揶揄を込めてこの言葉であらわし、定着することになりました。
情報を消す=事実だった、という認識で批判の声がより高まる
ネットでは火種になりそうな告発情報などは、アップ された瞬間に ダウンロード して保存するネット民が大勢います。 本家が残っているうちはわざわざミラーサイトなどを立てたりはしませんから、企業側などは自分たちに非がないと思うなら、告発に対する説明や釈明、あるいは抗議をすれば良いだけです。 事実の隠蔽や 「情報を消す=事実だった」 との 答え合わせ にも受け取られかねない情報やサイトの削除は悪手としか云いようがないでしょう。
またミラーサイトが立てられると同時に、それへの言及が増え、一方でミラーサイトにたどり着けない人が消された内容に憶測や尾ひれをぶら下げて書き込みをするなど同時進行で様々な動きが起こります。 とりわけ憶測や尾ひれは、元々の情報にはなかった作り話やデマが入る余地が生まれ、それは情報隠蔽を図った方に極端に不利な形、炎上が過熱する中である種の悪魔化の レベル で拡散・流布します。
弁護士名で法的措置をちらつかせた時点で告発者への支援として情報のバラまきや拡散を目的とした 多重投稿 が加速する場合もありますから、告発内容が事実であるなら、真摯な対応がもっとも被害が少ない賢明な対応だと云えるかもしれません。 もちろん悪意を持って流布される情報がデマやフェイクなら、毅然と事実関係を開示し断固とした対応を取ることで信頼の回復もできますし、そうすべきだと思いますが。