ビームサーベルで切り裂かれての断末魔…これはいいものだ!
「これはいいものだ」 とは、マニアがある物品にベタ惚れして絶賛する、最高の賞賛表現の一つです。
語源としては、「おたくの基礎教養」 とも呼ばれる、アニメ 「機動戦士ガンダム」(初代/ ファーストガンダム/ 富野喜幸/ 日本サンライズ/ 名古屋テレビ/ 1979年4月7日〜1980年1月26日) に登場する敵役、「マ・クベ」 の第37話 「テキサスの攻防」(1979年12月15日放映) のセリフ、「ウラガン、あの壷をキシリア様に届けてくれよ。あれは、いいものだ」 に由来します。
「マ・クベ」 はジオン公国キシリア・ザビ配下の突撃機動軍の大佐、基地司令などですが、無類の骨董品マニアであり、様々な古美術品を愛好。 中でも北宋期 (960年〜1127年、五代十国の後) のものと思われる 「白磁の壺」 はお気に入りでいくつも所有していますが、それらが彼の云う 「これはいいものだ」 でした。
全43話中、数話 (全体で8話) にわたって権謀術数を弄して敵対する連邦軍のホワイトベースを苦しめるも、野心や腹黒さ、詰めの甘さから苦汁を飲み、登場最終話となる 37話では、試作品のモビルスーツ、「ギャン」(GYAN/ YMS-15) に搭乗してガンダムと対峙、しかしビームサーベルで機体を引き裂かれ戦死しました。 そのいまわの際に、副官のウラガンに発したのが、「ウラガン、あの壷をキシリア様に届けてくれよ。あれは、いいものだ」 でした。 ちなみにウラガンもその後所属する艦隊の全滅もろとも戦死しており、壺がキシリアに届くことはなかったようです。
オタ用語から、これはひどい…と対を成す賞賛・罵倒の一般表現として定着
特異な キャラクター であり、また声優 塩沢兼人さん (1954年1月28日〜2000年5月10日/ 若くして亡くなった際には、ガンダムやアニメ、同人、声優系 掲示板 に追悼 スレ がいくつも立ち悼む声が殺到した) の熱演もあり、このセリフは パソコン通信 時代にはオタク 界隈 で改変して使われる賞賛表現として定着。
その後、ひどい内容だった ゲーム への罵倒表現から一般化した これはひどい と共に、「あれはいいものだ」「これはいいものだ」 として使われるようになりました。 現在では 2ちゃんねる や 「はてな」「ニコニコ動画」 などでタグやキーワードとして 普通に 通じる言葉となっています。
なお 「マ・クベ」 の名セリフとしてはこのほか、本国に向けて自分が送った鉱物資源に対しての賞賛、「ジオンはあと10年は戦える」 などもあります。 これも様々に改変されて、よく使われるフレーズとなっています。
その他の賞賛表現いろいろ、「なんちゅうもんを」「凄い、凄すぎる」
ところで マンガ や アニメ が 元ネタ の絶賛表現としてはこの他に、なんちゅうもんを というのもあります。 こちらはマンガ 「美味しんぼ」(雁屋哲/ 花咲アキラ/ ビッグコミックス) の 「鮎のふるさと」 において、京都の富豪、京極さんが、雄山の出した四万十川の鮎のあまりの美味しさに、泣きながら食べた時に喋ったセリフ、「なんちゅうもんを食わせてくれたんや…なんちゅうもんを…」 を由来とします。 この後、「鮎」対決で雄山と争った山岡の鮎を、「これに比べると山岡さんの鮎は カス や」 と述べたことから、「絶賛」 と 「罵倒」 とのセットで使われる場合が多いようです。
またテレビ埼玉の お約束 ローカルCM、埼玉銘菓 「十万石まんじゅう」 のCM中のナレーションのセリフ、「うまい、うますぎる」 のアレンジで、「凄い、凄すぎる」 なんてのもあります。