慣用句として定着した、最低最悪を示す罵倒表現 「これはひどい」
「これはひどい」 とは、できが悪かったりつまらないもの、不細工、醜いもの、稚拙で劣っていたり見るに耐えない状態、あるいはそうした作品そのものを罵る際に使う、罵倒表現の一種です。 「これは酷い」「これは非道い」 などとも表記します。
語源、由来としては、1996年4月19日にセガサターン用ソフトとして発売されたシミュレーション RPG (ゲーム)、「大冒険 セントエルモスの奇跡」(制作/ ソフトオフィス・FAB/ 販売/ パイ/ 6,800円) のゲーム開始後に現れる村人のセリフ、「これはひどい」 を 元ネタ とします。
このソフト 「大冒険 セントエルモスの奇跡」 は、あまりのデキの悪さに発売当時から クソゲー との評価がしきりでしたが、上記の冒頭に登場する村人が、ゲーム中で難破した船を見て話すセリフ、「これはひどい」 を 「ひどいのはゲームの内容だろ」 と購入者が思わず 突っ込み を入れ揶揄したことから広まりました。
かくして 「これはひどい」 は重要キーワードに…
元々ゲーム ファン と人種的にかぶることの多いオタク 界隈 では、これはいいものだ という賞賛表現 (アニメ 「機動戦士ガンダム」 に登場するマ・クベのセリフ、「ウラガン、あの壷をキシリア様に届けてくれよ。あれは、いいものだ」 に由来) がありましたから、これと対をなす言葉として パソコン通信 などでもあっさり定着。
現在は 「これはすごい」 などの賞賛表現の対義語として、インターネット の時代になっても、2ちゃんねる や 「はてな」「ニコニコ動画」 などでタグやキーワードとして 普通に 通じる言葉となっています。 このゲームに携わった制作者さんにとっては、自業自得とは云えちょっと気の毒な感じの慣用句ですが、今後も何だかんだと使われ続けてゆくんでしょうねぇ。
卵かけごはん (TKG) の大惨事で 「これはひどい」
一方、NHK教育テレビ (現 NHK Eテレ) に1992年4月から登場した人気キャラクター、ニャンちゅうが番組内で発した 「これはひどい」 も話題に。 これはお料理番組風のコーナーで、お姉さん 役のあい先生による卵かけごはん作りの際に発せられたセリフです。
お姉さんは 「私の得意料理を皆さんにお教えしたいと思います」 などといいつつ豆腐を切ったり納豆を混ぜたりと料理を続けるものの、「これでは料理と云えない」 と自らダメ出し。 その後、本気になったあい先生はコーナーを仕切り直し、生卵を手に 「卵 は料理の基本です」 と言い放ち、軽やかに片手割も披露。 ニャンちゅうが 「上手い」「先生さすがです」 などと褒めたたえると、ボールに割入れた卵をかき混ぜお茶碗のご飯にかけて 「卵かけごはん」 を作ります。
しかし茶碗が小さく卵の量も多すぎたため、注いだ卵の半分以上が溢れ出て放送事故 レベル の失敗に。 そもそも本気を出した卵料理が卵かけごはんでしかも失敗という惨状にニャンちゅうは、「あー、あー、これはひどい」「思いっきり失敗してますよ先生それ」 と思わず叫ぶこととなりました。 当該シーンのキャプチャー映像や画像は汎用性もあるため、面白動画や画像といったくくりでネットを中心に広く流布し、あわせて 「これはひどい」 との言い回しも広がることとなりました。
「ごらんの有様だよ!」 と呼ばれるケースも
なお 2008年12月19日に発売されたエロゲ (アダルト美少女ゲーム)、「魔法少女アイ 参」(colors/ 税込み価格/ 9,240円) が空前絶後のあまりにもすさまじい出来だったため、超弩級クオリティのゲームを、このゲームのパッケージ裏のキャッチフレーズより、ごらんの有様だよ!!! と呼ぶようになっているようです。