同人用語の基礎知識

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本当にクソなのか、逆にちょっと面白いゲームなのか… 「クソゲー」

 「クソゲー」(クソゲ) とは、「クソ みたいな ゲーム」 という意味の言葉です。 ゲーム性が低く爽快感もなく面白くない、物語やグラフィックがお粗末、バグ や不都合やらが多い、UI (ユーザーインターフェース) が劣悪でプレイしづらい、難易度設定 がおかしくて理不尽なくらい難しい、あるいは逆に簡単すぎてやりがいがないなど、ゲームとしての完成度が低く出来の悪さを示す表現となります。

 さらにゲームを制作した会社やスタッフらの批判されても仕方がないような コメント による嫌悪感の表明としての使い方や、オンラインゲーム における 運営 のまずさ (告知 が不十分、メンテナンス が不規則など)、プロモーション における不誠実な誇大広告 (詐欺ゲー)、他ゲームからのパクリなど、作品の内容外の要素が評価に加わる場合もあります。

 一方、単に自分に向いていない (not for me) というだけの場合も 「自分にとってはクソゲー」 といった言い回しで使う場合もあります。 また内容が前述したようなひどいものでも、ところどころにキラリと光る部分がある、あるいは結果的に失敗したけれど制作陣が何をやろうとしているかは十分理解できるしそれが新しいことへの挑戦的・前向きなものだったりもすると、「愛すべきクソゲー」 といった、ある意味で ポジティブ な評価がされる場合もあります。

愛されるクソゲーといった評価軸も

 ゲームの評価には、エンタメ・創作物としての面 (面白くて魅力的かどうか) と、技術的・工業製品的な面 (ちゃんと動くかどうか)、それらをひっくるめた コスパ (値段に見合ったものか) があります。 これらは別々の要素ではなくゲームの コンセプトテーマ に沿って密接に関係していますが、制作者の力量や 開発 時間・予算といったコストの兼ね合いの中で、良い方向に相乗効果をもたらすこともあれば、ダメな方向に働くこともあります。

 ゲームの評価に使われる表現は様々なものがあります。 理不尽に難しいものは マゾゲープレイヤー のプレイ内容より運や偶然の要素がプレイ結果に強く反映してしまうゲームを 運ゲーお祈りゲー と呼ぶなどですが、クソゲーはこれらの言葉の中でももっとも古くから使われ、良きにつけ悪しきにつけ、時代時代を代表するようなクソゲーが様々に存在します。

 一般に対義語は 神ゲー良ゲー覇権 となります。 またクソゲーと似たような ニュアンス を持つ バカゲー もありますが、このあたりの言葉の使い分けは人によって異なり、異なるプレイヤーが同じようなクソ判定をしていたとしても、云い方は微妙に違うこともあります。

 なお映画やグルメ食などの言い回しに 「B級」「C級」 といった言い回しがあります。 おおむね低予算・低価格なジャンク (くず) 作品や食べ物の意味ですが、こちらも必ずしも貶すのではなく「変に気取らず、気軽に楽しめる」「こういうのでいいんだよ こういうので」 といった賞賛としての使い方もあります。 時には体に悪いと思っていてもジャンクな食べ物を無性に 摂取 したくなることもありますし、それはクソゲーにおいても同じでしょう。

 自分の好きな作品がクソ扱いされると 脊髄反射ついカッとなって 反論したくなることもありますが、誉め言葉としてあえてクソゲーを使う人もいるので (さすがに ゴミゲー あたりだとそうでもありませんが)、ネットレス をする時は、ひと呼吸置いてから 書き込む 方が良いかもしれません。 またそうした誤解を受けないために 「クソゲー (褒めてる)」 といった、ある意味で無粋な註釈をつけることもあります。

言葉としての 「クソゲーム」 誕生から 「クソゲー」 へ

 クソゲーという言葉そのものの語源としては 「クソみたいなゲーム」 の意から 「クソゲーム」 となり、その後ゲームが広く一般化し日常でも話題として口にされるようになるにつれ 「ゲーム」 が 「ゲー」 と略されるようになってそのまま 「クソゲー」 に変化したものと考えられます。

 何かを揶揄・罵倒する際に、名詞や代名詞に 「クソ」 を接頭して悪態をつく言葉は昔から様々なものがありますが (クソ野郎とか)、クソゲームという言い方自体はファミコン (1983年7月) が登場しサードパーティーから有象無象のゲームが大量に発売された頃に広まっています。 一方、それ以前にアーケードゲームやパソコンゲーム (ビデオゲーム) の世界でも同じ云い回しが使われていて、完全な 元ネタ というか発案者は不明となっています。

 語源についてはネットでも色々な説があります。 代表的なのは、雑誌のインタビューや企画記事などを通じた高橋名人説とかみうらじゅんさん説などですが、いずれもファミコン登場以降の話であり、現在広く使われるようになった直接の発端の一つではあるかも知れませんが、造語や発案をしたと云うには時期的に無理があるでしょう。 名詞にクソを接頭して腐す表現はありふれたものですし、それを雑誌などで印刷物として最初に紹介したというのも、時系列的にちょっとありえないからです。

 個人的にはファミコン登場前のアーケードゲームやパソコンゲームに対する野良の 攻略・考察本 (どこぞの大学のコンピュータやゲームの研究会が制作した 同人作品 だったり、その 同人誌 を元にしてゲームメーカー無許可で書店売りされた書籍、街道沿いの大型書店によく並んでいた)、さらに今でいう ラノベ 的な SF系の読み物あたりにも同じ表現があったような気がします。 有象無象のクソゲームが大量発生した 「アタリショック」(1982年) を経たアメリカのゲームスラングあたりも影響を与えてそうな気もしますし、このあたりは未確認です。

 ちなみに今となっては何の根拠も示せませんが、大ヒットした 「スペースインベーダー」(1978年) や 「ギャラクシアン」(1979年) の輸出用パクリゲーム (当時日本ではプログラムに 著作権 が認められておらず、グレーよりの合法だった) を製造していた東京多摩のとある電子機器メーカーの技術者が、1980年か1981年に同じような表現をしていて (筆者 はそこでアルバイトしてました)、自分たちもゲーム機を設置していた喫茶店やゲームセンターなどで 普通に 使っていたので、その後クソゲームという言葉がファミコンのそれへの言葉として雑誌で生まれたという説を 1990年代に パソ通 で知った時には強い違和感を覚えたことを思い出します。

 あるいはもっと広げると、要電源 のゲームやパソコンが登場する前に、それらと親和性の高い 電源不要 のボードゲーム、あるいは短波ラジオやアマチュア無線機、カメラ、望遠鏡、マイコンあたりでもその ジャンル の雑誌の読者投稿欄の イラスト や投稿文で同じような表現が使われていたので (周波数も読めないクソラジオみたいな)、このあたりの関係性はよくわからないし根拠も薄いですが連続性はあるような気もします。 いずれにせよ特定の造語者がいるわけではなく、日常的に使われていた表現なのでしょう。

 一方で、ゲーム用語としてクソゲーなる言葉を知らなかったお行儀のよい層にまで広げた経緯はわりとはっきりしていて、雑誌 「ファミコン通信」 にあった 「ゲーム用語の基礎知識 (改題予定アリ)」 あたりがその情報散布地でしょう。 この用語集では 「クソゲーム」 ではなく 「くそゲー」 として立項され、「一般に、目をおおいたくなるようなゲーム」「青少年諸君は使ってはいけないことば」 と紹介され (1986年)、以降は正式? なゲーム用語として広く全国のちびっこたちの間で 認知 されるようになっています。

 またパソ通時代を経て インターネット の時代となり、匿名系の 掲示板 (例えば伝説的存在ともなっている SEGA BBS とか)、中でも大きな影響を誇った 2ちゃんねる では 「クソゲーオブザイヤー」(KOTY/ Kuso-game Of The Year) が同名の スレッド を中心に集められるようになり、一気に気軽に使える言葉として定着。 大賞や次点といったランク付けがされるようにもなり、クソゲーの基準やガイドラインなども整備されるきっかけとなっています。

 なおその前後に個人運営によるいわゆる個人テキストサイト (フォントいじり系) のいくつかで、クソゲーが人気の ネタ・面白コンテンツとして広く 共有 されてもいます。 一部のサイトは当時としては膨大なアクセス数を誇り一世を風靡もしましたが、こちらはアーケードや家庭用・パソコン用含めた新旧の一般向けゲームの他、同人系や海外産のパクリゲーなども含む、より範囲が広い使われ方をしています。 クソゲーという言葉を使っているところが多かった印象ですが、内容的・文脈的にはバカゲーが近いかもしれません。

ファミコン・スーファミ時代のクソゲーとネトゲ・原則無料時代のクソゲー

 クソゲーの基準は人によって様々ですが、時代によって、あるいはゲームを取り巻く 環境 によっても基準が変わってきます。 基本的に時代を経るごとに消費者やプレイヤーの目が肥え、より基準はシビアになりがちですし、グラフィックや音楽の表現にハードウェア的な制限が大きかったファミコンやスーファミ、メガドライブ時代と、PlayStation 参入からのフルカラーで美麗な映像や音楽が使い放題な時代のゲームとでは、同じゲームとくくるのが不可能なくらい異なる基準で品質に対するクソかそうでないかの判断がされます。

 またネトゲやソシャゲなどの無料で遊べるゲームと、数千円の代金を支払う有料ゲームとでは期待値が異なりますし、むしろプレイ中の 課金 を前提とした原則無料ゲームが広がると、クソゲー判定の乱発が生じるような逆転現象も生じています。 とくにパソコンゲームに関しては、steam の低価格帯はクソゲーの宝庫と云って良いでしょう (いやほんとに、すごいのがいっぱいありますw)。

 またゲームの評価をどのタイミングで下すのが最適かというのも、非常に難しい問題です。 本来ならばクリアまで遊んでエンディングを見てその上で評価すべきですが、プレイするのがあまりに苦痛なほどの品質だった場合、最後までプレイするのが難しいこともあります。 またネトゲのようにエンディングが存在せず、いつまでも続くゲームもあります。

 ゲームを始めたばかりですぐにクソゲー認定をする人もいますし、それが正しい場合もありますが、リリース直後の安易なクソゲー認定はゲームの評価を不当に下げてプレイする人を遠ざけたり、ネトゲならサービス終了 (サ終) を早めることにもなります。 動画サービス におけるゲームの 実況 やレビューが人気となったり、SNS が普及して、そこでの評価がゲームの売上や人気を左右するようになると、必要以上にクソゲーを連発する人たちの声が無視できなくなっている部分もあります。

 もちろん遊んでみてクソだと思ったなら感想を述べるのは自由ですが、放火魔 のように火のない所に煙を立てて 炎上 を意図的に招くような物言いをことさらに行ったり、罵詈雑言や制作者の 人格攻撃対立煽り のような誹謗中傷は、見ていて辛いものもあります。 一部の動画 配信者 などはつい過激な表現で注目を集めようとしがちな面もありますが、世の中の人間や文化を大雑把に分けたら同じ カテゴリ に入りそうな人間が、同じカテゴリの作品や関係者を主観だけで一方的に足蹴にして小遣い稼ぎするのも、ちょっと心情的にどうなのよと筆者などは思ってしまします。

クソゲーにまつわる様々な関連用語

 クソゲーは何かと注目を集めやすいため、それに関連する様々な言葉があります。 個別のゲームにまつわる言葉以外で広く使われるものとしては、ゲームのスタッフロールを指して使う 「戦犯リスト」 があります。 本来はゲームをクリアしエンディングを迎えて感動の余韻を味わう場面ですが、それがクソゲーを作った憎々しい戦犯名のリスト扱いされるのも切ない話です。

 またバグだらけのゲームをプレイすることは、「有料デバッグ」「デバッグ要員」 などと呼びます。 ゲームのバグを見つけるデバッグ作業を、消費者としてお金を払ってやらされているといった意味になります。 同じ意味で使われる 「人柱」 もあります。

 一方、ゲーム用語ではなく映画にまつわる言葉で 「懲役」 もあります。 つまらない映画を見た際に、それが2時間の映画だったら 「懲役2時間」 と呼ぶなどですが、これをゲームに当てはめて使う場合もあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2012年11月8日)
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